エレンディラ 映画 感想

エレンディラ 映画感想   100点/90点

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105分 

1983年 フランス メキシコ 西ドイツ合作

ルイ グエッラ監督

 

ガルシア マルケス原作のエレンディラに相当な感銘を受け、どうしても見たいのでVHS借りてきての鑑賞。

 

あらすじ

ガルシア マルケスの中編小説を映画化。因業な祖母(パパス)に、奴隷のようにこき使われ、やがて旅の娼婦に仕立て上げられる少女エレンディラ。そんな彼女の生活も、天使を思わせる美青年ユリシスの登場で大きく変わろうとする……。

 

1983年といえば、E.T.スターウォーズジェダイの復讐、フラッシュダンスランボーなど  80年代には入り割と映像も綺麗な映画が多くなってきた時代

しかしエレンディラはいい意味で80年代を感じさせず、古い時代の土埃が舞う辺境の砂漠の雰囲気がよく出ていい感じだった。

もちろんVHSの画質の粗さも多大にある…

 

◉配役が何より最高、エレンディラの無垢な美しさと 恐ろしい祖母はイメージを崩さず とても良い。

 

正直あまり知らない俳優だから良かったと思う。

 

◉ガルシア マルケスが脚色しているので ストーリーの中にうまく他の短編のエッセンスを

組み込んである。

 

☆「愛の彼方の変わることなき死」の金の貞操帯の部分と

☆「大きな翼のある、ひどく年取った男」

の蜘蛛女の部分

 

☆「奇跡の行商人、善人のブラカマン」

ブラカマンが行商をしている場面

など他にも小ネタとして入ってる部分は幾つかあると思う。

エレンディラの短編集を読んでいたので楽しめた。

 

◉残念だった所

ウリセスが祖母にとどめをさすシーンがスローモーションでなんか 安っぽいホラー感

が過ぎて ちょっとガッカリ

それ以外はおおむね好感触

最後まで面白く観れた。

 

原作の良さを超えるのは難しいが

雰囲気を映像でうまく表現してあり

とても良かった。

VHSだと字幕がボケて見えない所が多いので

やはりDVD化を求む。

 

 

 

 

【百年の孤独】感想1 ガルシア マルケス

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文句なしの名作 自分のオールタイムベストの中には必ず入る 一作

 

◉ストーリー

ホセ アルカディオ ブエンディア とウルスラ

の夫妻が作り上げた町 マコンド 

その町とブエンディア一族の隆盛と 滅亡 の100年を 描いたストーリー。

 

◉序章

フランシスドレイクがリオアチャを襲撃した時 そこに住んでいたウルスラの曽祖父は山奥の集落に逃げる事にした。

そこにはドン ホセ アルカディオ ブエンディアという人物が住んでいた。

ウルスラの曽祖父とドンホセは一緒に組んで商売をし大きな財産を築く

時は過ぎ その玄孫にあたるウルスラとホセアルカディオ ブエンディア が結婚しようとする。 二人はいとこ同士。 しかしこの結婚は反対される 二人の叔父と叔母が近親婚をして生まれた子供が お尻に軟骨が大きく飛び出した(豚のしっぽ)子供だった。

それを聞いて恐れたウルスラは結婚はするが

性交渉を拒む その事を 村人にからかわれた 

ホセアルカディオは その村人を殺してしまう。 すると毎夜その死んだ村人がめのまえに現れ惑わされ 罪悪感も感じ 二人は その村を後にする。

そして自分達の見つけた土地にマコンドという名前をつけ そこで生活を始める。

 

その土地で3人の子供を作る 

 

ホセアルカディオ、アウレリャノ、アマランタ、の三兄妹  町を発展させてきたホセアルカディオ(父)は、ジプシーの錬金術師 メルキアデスに影響を受け いろんな研究を始め それに没頭し家から出なくなる。

そのうち発狂するようになり 村人20人に抑え込まれ栗の木の下にくくりつけられる事になる。

◉第二世代

★ホセアルカディオ

ジプシーとともに 一度町を出て行き 時を得てからまた町に戻ってくる タトゥーだらけで酒飲みの自堕落な男になっていた レベーカと結婚する そして自宅で謎の死を遂げる(レベーカが撃ち殺したのかも?)

★アマランタ

自分の意中の男を手に入れそうになりながら自分から何もない事にしてしまい、その相手は自殺する。そのあともいい人がいながら自分から遠ざける。そして引きこもり、のちに死んでしまう。

★アウレリャノ

村のものを引き連れ、自由党の大佐として 共和党と戦争を起こす。

37回の反乱を起こしその都度 敗北した。

戦争は終わりに近づき大佐は捕らえられ 死刑執行のため マコンドに戻ってくる。

死刑の当日ホセアルカディオに救われる

そこからまた新しい戦争に向かう。

しかし戦争に意味を見出せなくなり和平の調停を結ぶ事に そしてピストル自殺を図るが 

生き延びてしまう。その後は引きこもり 金細工の魚を延々と作り続け 最後は老衰で

父親の栗の木の下で 死亡。

★アルカディオ (ホセアルカディオ息子)

アウレリャノに戦争の際にマコンドを任せたと言われ 自分勝手に村を統率し不正を働き自分の家を建てるなどの横暴をはたらく。

ウルスラにもみはなされ自由党の敗北時に

死刑にされ死亡。

サンタ ソフィア デ ラ ピエダとの間に子供を作りそれが 第3世代になる

◉第3世代

★ホセ アルカディオ セグンド

闘鶏などに打ち込み自由に暮らす そのうち

労働組合を作り バナナ会社にたいして デモをして回っていた 大規模なストが始まり

バナナ会社はダメになっていく。

駅前の大きなデモ 目の前には軍隊がいる。

この場を去れとの命令に背いたデモ隊に向けて14箇所の機関銃が火を吹く 三千人の死者を出す 大事件に。死体を乗せた二百両の列車がうみに向けて走っていく 生き延びたホセアルカディオセグンド 誰にこの話をしても誰も信じない。バナナ会社もなくなり

虐殺も全てない事になっている。

身を隠すために 家にこもり メルキアデスの書の解明に没頭し その知識を最後のアウレリャノ バビロニア に教え込む。

★アウレリャノセグンド

フェルナンダと結婚するが 不倫相手の ペトラの家に入り浸る。ペトラと関係をもつと家畜が増え 商売が繁盛しお金に困ることがない そのため お金を使いまくり パーティーざんまいの生活。 デモの後 バナナ会社がなくなったあと四年一ヶ月と2日雨が降り続く 家畜も育たなくなり生活に困窮し マコンド自体もどんどん衰退していく。 そしてアルカディオが死んだ時 アウレリャノも喉の痛みで同時期に死ぬ。

 

★小町娘 レメディオス

絶世の美女だが白痴 彼女にアプローチする男はもれなく死に至る

ある日突然  畳もうとしたシーツと共に空に飛ばされてしまい その後はわからない。

 

四年の雨は止むが 10年の干ばつが始まる

マコンドは廃墟になり 衰退していく。

 

第四世代

 

★ホセアルカディオ 

法王の修行のため 若い頃ローマに行く。フェルナンダの死後にマコンドに戻る ウルスラが遠い昔に隠した金の入った袋をたまたま見つけお金には困らなくなったが それを同じく知っていた子供達に殺され 金も奪われてしまう。

★メメ (レナータ レメディオス

フェルナンダに厳しく育てられるが バビロニアという若い男に夢中になってしまい隠れて 密会していた それを知ったフェルナンダに殺されるように仕向けられ バビロニアは死んでしまう。その罰で メメは修道院に送られ そこで アウレリャノ バビロニアを出産。

★アマランタ ウルスラ

若い頃 勉強のため ブリュセルに、フェルナンダの死後 夫のガストンと共に マコンドに戻ってくる。しかしアウレリャノ バビロニアの猛烈なアプローチにより 関係を持ち 二人はこれ以上にない 深い愛欲に溺れる。

アウレリャノとの間に子供ができ 出産と共に出血が止まらず 死亡。

★アウレリャノ(バビロニア

メメがフェルナンダに反対されていたバビロニアとの間に作った子供 そのため 出生を偽り、川から拾ってきた子供として 育てられる。アウレリャノはホセ アルカディオ セグンドが研究するメルキアデスの書物に関する知識を受け継ぎ ほとんどメルキアデスの部屋から出ない生活を送って育つそのため膨大な知識がつき 少しずつ メルキアデスの羊皮紙の解明に近づく。

アマランタが帰ってきた頃少しずつ 外の生活と関わりを持つようになり アマランタに抑えきれない思いを抱くようになる そして

子供を作る。

子供が生まれたが アマランタの死のショックで そのまま外出してしまう。しばらくして 子供を置いてきた事に気付き急いで帰る

すると死んだ子供が蟻の大群によって運ばれていた。その時 

“驚きのあまり体がすくんだというのではなかった。その素晴らしい一瞬に、メルキアデスの遺した最後の鍵が明らかになり、人間たちの時間と空間にぴたりとはめ込まれた羊皮紙の題辞が眼前に浮かんだからだった。

 

〈この一族の最初の者は樹につながれ、最後の者は蟻のむさぼるところとなる〉

 

 

そしてアウレリャノは羊皮紙には自分の運命が記されているのを知り 読み進める。

全てが書いてあり 

“フランシス・ドレイクがリオアチャを襲撃したのは、結局いりくんだ血筋の迷路のなかでふたりがたがいを探りあて、家系を絶やす運命をになう怪物を産むためだったと悟った"。

 

 

読み進める最中 家は崩れてゆき 最後の行に達するまでもなくこの部屋から出れない事を悟ったそして 百年の孤独を運命付けられた家系は二度と地上に現れず人間の記憶から消えていく事を知る。

 

忘れないように あらすじ的に追ったが

長くなりすぎたので 細かい感想は 次に

 

 

 

【無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語】ガルシア マルケス 感想

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【無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語 】    ガルシア マルケス  感想

 

◉コロンビアのノーベル文学賞作家 ガルシア マルケスの中編小説

☆ ストーリー

厳しい祖母と屋敷に住む純粋無垢なエレンディラ。祖母の厳しいしつけと家事で、エレンディラはいつもクタクタ。立ったまま寝る事が普通にできるくらい疲れている。そんな中疲れ果て燭台を倒してしまい、住んでいた屋敷は燃え尽き何も無くなってしまう。

これに腹を立てた祖母は、エレンディラにこの罪を償わせる事にする。エレンディラに体を売らせて百万ペソ以上の損害を取り返すと息巻く。祖母には逆らわないエレンディラは、言われるがままにテントの中で、体を毎日の様に売り続ける テントには行列ができるまでになってしまう。途中ウリセスという若い純朴な少年と出会う、 恋仲になるがエレンディラはテントに人が集まらなくなれば、また土地を移動して歩くので、そのうちウリセスとは会えなくなる。

程なくして未成年に体を売らせているとは何事か、と修道僧に目をつけられる。エレンディラは修道僧に連れ去られ祖母と離れ、修道院にかくまわれる。体を売り続ける毎日から離れたそこでの生活にエレンディラは「わたし、しあわせだわ」 と自然と口にするようになる。

しかし祖母がいろいろと手を尽くしエレンディラに会いに行くと、結局また祖母と一緒に暮らす事を自ら選ぶ。

また体を売る過酷な日々に逆戻り。

いつかの少年ウリセスは、エレンディラをあきらめきれず、居場所を探し当てる。

エレンディラはウリセスに、祖母を殺す勇気があるかとサラッと言い放つ、私は家族だから無理だけどと付け加えて。

ウリセスは「君のためならなんでもやるよ」と 行動に移す。まずはケーキに毒を混ぜる、しかし祖母には全く効かない。エレンディラは「あんたは満足に人も殺せないのね」とウリセスに冷たく言い放つ。

次は家の中のピアノに爆弾を仕込む、しかし大爆発は起こらず祖母はピンピン。

ついにウリセスは肉包丁を持ち、祖母を切り殺す。その時、祖母から吹き出したのは緑色の血だった。

 

祖母の着ていた、 金の延べ棒のチョッキを手にして、エレンディラは走り出す。ウリセスが必死に呼びかけるが、まったく聞こえていない。

返事もせず 延々と走り去っていく。

 

◉感想

 

少女の成長譚であろう。

一見、残酷な祖母に束縛されているようにも見えるが、エレンディラ自身も祖母から離れようとしない。そこには親ばなれしたいのにできない、少女の姿が透けて見える。

そして少女は成長し自分の力でその殻を打ち破り、未来へ進んでいく。

その後の消息はわからないが、彼女の不運の証となるものは何ひとつ残っていない。

 

◉最初から最後までとにかく面白い。

この中編の物語りでエレンディラというヒロインがとにかく輝いている。

 

 

⭕️ラストが最高なのでメモ

 

彼女は、風に逆らいながら鹿よりも速く駆けていた。この世の者のいかなる声にも彼女を引きとめる力はなかった。彼女は後ろを振り向かずに、熱気の立ちのぼる塩湖や滑石の火口、眠っているような水上の集落などを駆け抜けていった。やがて自然の知恵に満ちあふれた海は尽きて、砂漠が始まった。それでも金の延べ棒のチョッキを抱いた彼女は、荒れくるう風や永遠に変わらない落日の彼方をめざして走りつづけた。その後の消息は杳としてわからない。彼女の不運の証しとなるものもなにひとつ残っていない。

 

 

 

エレンディラの過酷な人生からのこの走り出すラストの描写で  大きなカタルシスを得る

心に残り続ける とても素晴らしい作品だった。

 

 

 

【エレンディラ】 ガルシア マルケス 感想 その2

【エレンディラ】 ガルシアマルケス その2


引き続き 面白かった後半2編の感想


◉奇跡の行商人、善人のブラカマン


☆ストーリー

奇跡を起こせると嘘をつき 物を売り歩く

インチキ行商人のブラカマン

ブラカマンに興味を持った貧しい子供が

親元からブラカマンに買われて行く。

ブラカマンは商売もうまくいかず 子供は

さんざん酷い扱いを受ける。最初は慕っていた子供もいつからか反発心を抱く様になる。

檻の中に閉じ込められた子供は様々な嫌がらせを受け身も心もボロボロに。食事の代わりに死んだウサギを与えて去っていくブラカマン、怒りに任せそのウサギを壁にぶつける子供、するとそのウサギが生き返る!突然病気や傷を治せる能力に目覚める。

そこから子供はその能力で料金を取り病気の人を治して行き 大金持ちになる。

ある日ブラカマンを見かける 死んでも生き返る奇跡を見せるとまたインチキ商売をしているが 失敗してブラカマンは本当に死んでしまう。

子供はブラカマンを救えるはずだが わざと助けない。

海の見える丘の上に皇帝のそれを思わせる

立派な墓を建てブラカマンを埋める

そして墓の中で生き返らせる。そして死ねばまた生き返らせる

「僕が生きている限り永遠に。」

で終わる。

ブラカマンは明らかに悪党だが 子供の方も

ラストはなかなかに残酷で、何が善で何が悪なのかは誰にもわからないというのが 話の大枠であろうか?

それとも単なる復習劇なのか?

まさに大人のための残酷な童話といったところ。


エレンディラは長くなりそうなので 

次に書く。






【エレンディラ】 ガルシアマルケス 感想 その1

エレンディラ】  ガルシアマルケス 100点/100点

 

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コロンビアのノーベル文学賞作家

ガルシアマルケスが大人の残酷な童話として

書いたと言われる 6つの短編と中編が1つ

百年の孤独と族長の秋の間に書かれている

短編集。

 

【気に入った 前半の2作品感想】

 

◉大きな翼のあるひどく年取った男

    ある朝 ぬかるみに倒れているひどく年取

     った男を見つけるが その男にはボロボロ 

      の翼が生えていた。

    その男を檻のなかに保護しておくが 噂を

    聞きつけた 村人たちが 大勢押しかけ

     大騒ぎに しかし村に蜘蛛女なる 自分の

    不幸な生い立ちを語る 本当に蜘蛛と

    人間が合わさった者が現れると物珍しさに

     行列を作って見物人の行列に

     

   村人たちは羽の生えた老人には見向きもし 

    なくなる。

   忘れ去られた老人は やがて 自然と羽も 

   綺麗に生え変わり 空に飛んで去っていく

     という話。

 

とても短い話だが 惹きつけられる物がある

まず朝起きてから“家にあがってきてしまう 蟹”

を殺さないといけないという 日常生活に びっくりさせられる。

そして 泥まみれの 羽の生えた老人を見つけるという入りで すでに物語に引き込まれる。

羽の生えた老人は 実際に天使であり 人間たちの求める物であり 自分達の生活に何か幸福をもたらしてくれるはずの物の象徴であろう。

しかし 実際には 天使であっても 老人はみすぼらしく 汚く 檻の中で うずくまっているだけで これといって身のなるような奇跡を起こしてくれるわけでもない 。

そんな最中 新しい目を引く物(蜘蛛女)が

現れれば 簡単にみんな忘れてしまう

そんな 人間の浅はかさを描いた ブラックユーモアの様に 思った。

期待した天使は何も起こさない、しかし

それは実際に天使だったのだ。

 

◉失われた時の海

 

☆ストーリー

海からバラの匂いがするが誰も信じない

そのうち村人全員がバラの匂いが わかる様になる。 村は、その珍しい 海からのバラの匂いによって 遠方からも人が押し寄せ 毎日お祭り騒ぎが始まる。そんな中 大金持ちのアメリカ人 ハーバートがやってくる。

ハーバートは金の必要な人に 特技をやらせ

上手くいけば 金を渡した。

数日後 ハーバートは急に眠りだし 何日も起きない。 やがて 村もバラの匂いは消え 閑散とし いつもの 寂れた街に戻ってしまう。

そして ハーバートが目をさます 腹が減ったので海の底に おいしい ウミガメがいるから取りに行こうと主人公と海に潜る。

海に潜ると 白い家の立ち並んだ村が見える テラスには 花が咲き乱れている 今日の朝に水没した村らしい。そして村の老人の亡くなった妻が通り過ぎる その後ろには 世界中の花が帯状に続いており 世界中を回ってきたんだろうと ハーバートが言う。

そして海の中にバラが咲いているのを見つける。近くまで行くが ハーバートに止められ

ウミガメを捕まえて帰る。

ハーバートに海の中の事は誰にも話すなとくぎを刺される。

ハーバートは唐突に村を出て行くという。

「広い世界にはいろいろやる事がある」

「君たちも現実をしっかり見据えないといけない。」

「現実とはつまりあの香りは二度と戻ってこないという事だ。」

といって去っていく。

その夜 主人公は妻に 海の中に沈む村と バラの事を話す。 すると妻にバカな事を言わないでちょうだいと一喝される。

 

◉感想

まず海に入ってからの描写が感動的に美しく頭の中に広がった。 死体に続く世界中の花々なんてとても幻想的で美しい。

本文中の会話の中で 「海の中を知っているのは 死人だけなんですよ」や 「バラの匂いは死の前兆」 など 死に関するワードがいくつか出てくる。 

そうすると海の中をよく知っている ハーバートってなんだろう?と思うし 海の中の事を妻に話した時に妻に怒られる理由もよくわかる。 

ストーリーとしては、大きな翼のあるひどく年取った男と似た様に

何もない村に外部から何かが来て騒動が起こり

そしてそれが通り過ぎて行き 元に戻るというところは似ていると思った。

こちらのほうが 少し長く 描写も細かいので

とても面白く感じた。何回読んでも何か読み取れる物がある様に思う。

 

大きくとらえると 自分の身の回りで起こった 浮き沈みもすぎてしまえば あっけなく

ちっぽけなものだと

もっと大きくものを見て現実を見きわめ前に進まなければならない あの香りは二度と戻ってこないのだからと思った。

 

【バナナフィッシュ日和】 J.D サリンジャー

【バナナフィッシュ日和】   J.D サリンジャー

100点/100点




最初の話

バナナフィッシュにうってつけの日
バナナフィッシュ日和 そのほかいろいろ訳者によって いろんな題名がある。

ストーリーは
ネムーンに来ているシーモア グラースとその妻の1日を追った作品
妻は母親と部屋で電話 シーモアはビーチで出会った少女といろいろと会話して 部屋に帰って行く
そして
という流れ 

これだけの20ページの作品に心を動かされるのは
何故だろうか?
泣ける話とかではないが 時代を超えて評価され続ける物語の力を見せつけられた気がする。

ライ麦フラニーとズーイ、大工よ屋根の梁を、
を読んだけど、 これに一番惹きつけられた
サリンジャーの書きたい事ってなんだろう?とか
どんな人だろうと 気にせずにはいられなくなる

ライ麦など他のを読む前にこれを読んでおけばよかったと思った、他の作品にも表現されてるであろう、物語の中に漂う サリンジャーの個性を もっと感じれたと思う
 
戦争に行って神経衰弱で入院とか
ある時期から世の中とは交流を断ち家の周りに2メートルの壁があるとか
東洋思想への傾倒など
個人的にゾッとするのは
自分の娘にフィービーと名ずけようとした
これは キャッチャーインザライにおける主人公ホールデン
社会に馴染めなくて精神的に不安定な中
最後に救ってくれる存在として妹のフィービーが登場する…
おそらく自己を投影してる部分もあるであろうホールデン、その救世主として自分で作り出したキャラクターの名前を我が子につけるなんて

さすがに奥さんに反対されて 違う名前にしたらしいけど
 
サリンジャーの壊れっぷりをモーレツに感じます。

話をバナナフィッシュに戻す
この短編は何気ない1日を書いているようで
所々 違和感を感じる部分がある 

◉バスローブを着たままビーチで寝転んでいるシーモア
◉バナナフィッシュの話
◉自分の足をジロジロ見るなと急に怒り出すシ       ーモア
◉ビーチで会う少女が何回か発する
シーモアグラース(もっと鏡を見て)というセリフ

なんかいろいろありそうだし サリンジャーの抱えてる何かがにじみ出てる様な気がしてならない
 そしてグラース家のストーリーにはシーモアが大きな影響を与えてる事は間違いないと思うし
当然彼について詳しく書いていたり もしくは主人公にした作品があるのかとおもいきや
本人が直接登場するのはバナナフィッシュ日和だけで
他はエピソードなどが他の作品に間接的に書かれているだけ
バナナフィッシュ日和を読んで、なんでこんな結末になるんだろう?彼の人となりを詳しく知りたいと思う読者にとっては  肩透かし。 だけど
おそらくそこがいいんだと思う、謎めいて。 次男のバディがシーモア序章などで語ってくれるのだが  話があちこち行って 煙に巻かれたような感じを受ける。
そしてバナナフィッシュ日和の中に他に読み取れる何かがあるんじゃないかと思い また読んでみる
ことになる

きっと 隠された何かがあるのかもしれないし
何もない のかもしれない

 心を揺さぶられ  サリンジャーの凄さを思い知ったとしか言いようがない

ナインストーリーズは他にも笑い男 テディなど 他もかなり面白かった。

そしてサリンジャーの作品は寡作にもかかわらず
いまだに毎年、数十万部売れているらしい

恐るべし サリンジャー

マンハッタン ウディアレン 映画感想

マンハッタン  ウディアレン  100点/100点

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 ◉ウディアレンは やっぱり 良い
 
トーリーは、40過ぎの放送作家の中年男が、17才女の子と付き合っているが、現実的ではないから俺には本気になっちゃだめだよとか言いつつ(やることはヤッてる)元カノにたまたま会って 復縁と思いきや 振られ  17才のところにまた戻る
大体はこんな感じ。
 
何が良かったって 4分間のオープニングが
最高にかっこ良い
ガーシュウィンのラプソディー イン ブルーをバックにして モノクロで映し出すマンハッタンの映像 さらに4分間、作家になりたくて本も書いている主人公(アレン)がマンハッタンについての短文をレコーダーに吹き込んでいて 細かいニュアンスに納得できず 何回もやり直している音声が、映像と音楽に合わせて流れる。 
本当に何回見ても感動するしウディアレンのセンスに平伏するしかない。
 
細かいストーリーに関しては 正直アニーホールの方が深みがあるけど、 映像表現の部分では完全こっちが好み。 とにかく見終わって時間たっても 頭に残ってるシーンが結構多い 
 
◉雨の中駆け込む自然史博物館での 
     二人の影を写す会話シーン。      
                   
 ◉リバービューテラスのベンチ
 
◉あと会話の時に横向きに、向かい合って話してるけど一人は壁に見切れて見えないとか、
タイプライターを打つ時に手元を写さないで
少し半身の背中しか写ってない等(記憶で書いてるから間違ってるかも)
とにかく見ながら感心したことが頭に残っている。
 
そこでいろいろ調べると出てくるのは、撮影監督ゴードンウィリス。 ゴッドファーザーやアレンの黄金期主要作をこの人がとっていた。
そんな時、たまたまとある映画評を見ていたら
映画は撮影監督でほぼ決まると書いていたのを見かけた   なるほど
ゴードンウィリスの凄さを思い知らされた
 
ウディアレンのいい意味で コミカルでシニカルな
都会の大人の恋愛話に ゴードンウィリスの力のある白黒のニューヨークマンハッタンの映像が うまく溶けあって  とても良い
何回見ても映像のかっこよさにしびれる
 
話としては 優柔不断なおっさん(アレン)が
あっちへこっちへフラフラ いろんな不満を言い放ち 最期もまあ劇的なハッピーエンドやバッドエンドってわけじゃないんだけど それがまたいい味わい。
 
 
 
恋愛映画は苦手だけどウディアレンの作品を面白く観れるのは、人生や人間関係についてそんな劇的なことってないよ。みたいなことを さらっと自虐的なユーモアに乗せて 見せてくれるから 見た後に何か深みを感じれるんだと思う、あと会話劇のうまさがとにかく秀逸。
 
 
◉まとめ
こんなメガネでハゲの小さいおっさんのどこがいいのかと思っていたけど そのセンスの良さを見せつけられた作品 スコセッシなどが撮る70年代ニューヨークももちろんいいけど ウディアレンはまた違うニューヨークを映してくれる、どの監督にもないオリジナルを作ってくれるとても好きな監督になった   つまらないのもあるけど マンハッタンは単純に映像がいいから字幕なしで、 垂れ流しで観てても満足できる 
最後にキネ旬のアレン特集でも締めに使ってた
アレンの名言を忘れないように
書いておこう
 
◉「夢見たことで叶わなかった事は何もない、でもこんなにも人生の落伍者の気分なのは
何故だろう?」 ウディアレン
 
おもしろい おっさんだ 尊敬します。