【都会と犬ども】 マリオ・バルガス・リョサ 感想その2
【都会と犬ども】 マリオ・バルガス・リョサ
感想 その2
第一部は、士官学校での生活がどんな感じかと、そこでの人間関係が主に描かれる。
少年達の過剰なふざけ具合に少し疲れるが、第一部の最後に、奴隷の死という大きな出来事が起こる。これにより第2部からの話が大きく動き、今までバカ騒ぎしていた少年達の心に影を落とし、それぞれに思いを持ち、動きを見せる。ここからは読むのが止まらなくなり、ラストまでいっきに読み進んだ。
ジャガーの過去の話は、大分前から出ているのだが、〈僕〉という語り方だけで、名前が出てこない。それと、テレサの近所で、テレサの事がずっと好きだという事で、リカルドアラナ(奴隷)の話なのかと思って、読み進めていると、実はその過去の話はジャガーの過去で、ラストでジャガーはテレサと再会し結婚したというところでジャガーの事だとわかる。
面白かったのは、やはり2部からの人物描写で、アルベルトは、奴隷の無念の死を晴らすため密告を決意し、ジャガーは密告者という裏切り者からクラスメイトを守るため奴隷を殺し、ガンボア中尉は軍隊の規律を忠実に守りぬくため昇進の道を蹴ってまで、事件の真相を解明しようとする。それぞれに、自分の思いに主張があり、それに向かって強くまっすぐに行動する。しかし、それぞれに自分の望むかたちにはならなかったのだが、物語はそこで終わりではなく、自分の行く末に悲観する事なくそれぞれの道を歩んでいく。
◉あとがきから
リョサは、作家が小説を書くのは胸の奥に棲みついた悪魔達を追い払うためだと繰り返しのべていた。
実在する、レオンシオプラド士官学校を舞台にしてこの内容のため、当時、学校はこの小説を校庭に山と積み、燃やしたというが、2010年の追記によると今では士官学校のホームページには当時の制服姿のリョサの写真と「本校の元士官候補生、ノーベル文学賞受賞」という見出しが出ているという。