【エレンディラ】 ガルシアマルケス 感想 その1

エレンディラ】  ガルシアマルケス 100点/100点

 

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コロンビアのノーベル文学賞作家

ガルシアマルケスが大人の残酷な童話として

書いたと言われる 6つの短編と中編が1つ

百年の孤独と族長の秋の間に書かれている

短編集。

 

【気に入った 前半の2作品感想】

 

◉大きな翼のあるひどく年取った男

    ある朝 ぬかるみに倒れているひどく年取

     った男を見つけるが その男にはボロボロ 

      の翼が生えていた。

    その男を檻のなかに保護しておくが 噂を

    聞きつけた 村人たちが 大勢押しかけ

     大騒ぎに しかし村に蜘蛛女なる 自分の

    不幸な生い立ちを語る 本当に蜘蛛と

    人間が合わさった者が現れると物珍しさに

     行列を作って見物人の行列に

     

   村人たちは羽の生えた老人には見向きもし 

    なくなる。

   忘れ去られた老人は やがて 自然と羽も 

   綺麗に生え変わり 空に飛んで去っていく

     という話。

 

とても短い話だが 惹きつけられる物がある

まず朝起きてから“家にあがってきてしまう 蟹”

を殺さないといけないという 日常生活に びっくりさせられる。

そして 泥まみれの 羽の生えた老人を見つけるという入りで すでに物語に引き込まれる。

羽の生えた老人は 実際に天使であり 人間たちの求める物であり 自分達の生活に何か幸福をもたらしてくれるはずの物の象徴であろう。

しかし 実際には 天使であっても 老人はみすぼらしく 汚く 檻の中で うずくまっているだけで これといって身のなるような奇跡を起こしてくれるわけでもない 。

そんな最中 新しい目を引く物(蜘蛛女)が

現れれば 簡単にみんな忘れてしまう

そんな 人間の浅はかさを描いた ブラックユーモアの様に 思った。

期待した天使は何も起こさない、しかし

それは実際に天使だったのだ。

 

◉失われた時の海

 

☆ストーリー

海からバラの匂いがするが誰も信じない

そのうち村人全員がバラの匂いが わかる様になる。 村は、その珍しい 海からのバラの匂いによって 遠方からも人が押し寄せ 毎日お祭り騒ぎが始まる。そんな中 大金持ちのアメリカ人 ハーバートがやってくる。

ハーバートは金の必要な人に 特技をやらせ

上手くいけば 金を渡した。

数日後 ハーバートは急に眠りだし 何日も起きない。 やがて 村もバラの匂いは消え 閑散とし いつもの 寂れた街に戻ってしまう。

そして ハーバートが目をさます 腹が減ったので海の底に おいしい ウミガメがいるから取りに行こうと主人公と海に潜る。

海に潜ると 白い家の立ち並んだ村が見える テラスには 花が咲き乱れている 今日の朝に水没した村らしい。そして村の老人の亡くなった妻が通り過ぎる その後ろには 世界中の花が帯状に続いており 世界中を回ってきたんだろうと ハーバートが言う。

そして海の中にバラが咲いているのを見つける。近くまで行くが ハーバートに止められ

ウミガメを捕まえて帰る。

ハーバートに海の中の事は誰にも話すなとくぎを刺される。

ハーバートは唐突に村を出て行くという。

「広い世界にはいろいろやる事がある」

「君たちも現実をしっかり見据えないといけない。」

「現実とはつまりあの香りは二度と戻ってこないという事だ。」

といって去っていく。

その夜 主人公は妻に 海の中に沈む村と バラの事を話す。 すると妻にバカな事を言わないでちょうだいと一喝される。

 

◉感想

まず海に入ってからの描写が感動的に美しく頭の中に広がった。 死体に続く世界中の花々なんてとても幻想的で美しい。

本文中の会話の中で 「海の中を知っているのは 死人だけなんですよ」や 「バラの匂いは死の前兆」 など 死に関するワードがいくつか出てくる。 

そうすると海の中をよく知っている ハーバートってなんだろう?と思うし 海の中の事を妻に話した時に妻に怒られる理由もよくわかる。 

ストーリーとしては、大きな翼のあるひどく年取った男と似た様に

何もない村に外部から何かが来て騒動が起こり

そしてそれが通り過ぎて行き 元に戻るというところは似ていると思った。

こちらのほうが 少し長く 描写も細かいので

とても面白く感じた。何回読んでも何か読み取れる物がある様に思う。

 

大きくとらえると 自分の身の回りで起こった 浮き沈みもすぎてしまえば あっけなく

ちっぽけなものだと

もっと大きくものを見て現実を見きわめ前に進まなければならない あの香りは二度と戻ってこないのだからと思った。