アンドロイドは電気羊の夢を見るか? フィリップ K ディック 感想

1
リックデッカードと妻イーランは朝目覚めてから情調オルガンという感情を思いのままに操る機械のダイヤルの設定について口論している。

リックは朝食をとり屋上のドーム牧場へ行き飼っている電気羊の様子を見に行く。
ここに飼われている動物はどれが本物でニセモノかはわからないが、おたくの羊は本物ですかなど礼儀に反する質問は誰もしない。
街は放射性下降物で灰色になり太陽を陰らせている。
リックは毎月の身体検査で適格者と認められている。それでも灰の影響でいつ特殊者になってもおかしくない。政府からのダイレクトメールには、「移住か退化か選択は君の手にある」という文句があるが俺は移住出来ない。仕事が仕事だからな。
住人のビル バーバーが声をかけてきた。「うちの馬、妊娠したんだよ」「その馬を売る気はないか?」とリックは聞いた。なんの動物だっていい、ニセモノなんて飼っていると人間がダメになっていくような気がする、と言っても本物は数が少なく現状維持しか方法はない。
バーバーはとても貴重だから売れないと言った。リックは自分の羊の背中についている制御パネルを開け内部を見せた、前は本物の羊だったが死んでから模造動物を造っている店でつくってもらった、でも何処かが違う、いつも目を光らせていないと屋上で故障でもしたら大変だ。
時間を思い出しリックはその場を後にした、バーバーは今のことは誰にも言わないと約束した。「どうだっていいさ」とリック
「しかし連中に見下されるぞ、動物を飼わない人間は不道徳で同情心がないと思われる」「俺は生きた動物を飼いたいが俺の市の公務員の給料じゃ買えない」もし仕事でまた運が向いてくれれば、ひと月に4人のアンドロイドを仕留めた時のように。「猫なら安いから買えるよ」とバーバーがすすめた「部屋で飼うペットは欲しくないんだ、大きな動物だ牛か馬だよ」アンドロイド5人分の給料で買えるとリックは思った。1人につき千ドルずつ、給料と別に賞金がでる。
だがそれには、どこかの惑星から主人のアンドロイドが地球に逃げて来なくてはだめだ、しかも世界各地の警察にはバウンティーハンターがいてアンディー(アンドロイド)が何を好んでかこの北カリフォルニアに5人とも隠れ場所を求めその上、この地区のバウンティーハンターの主任であるデイヴ ホールデンが死ぬか引退しない限り無理なのだ。

コオロギかネズミなら買えるとバーバーはからかった。 リックは「おたくの馬だっていつ死ぬか分からない」と言った。「気を悪くしたんなら謝るよ」とバーバー。
無言でリックはホバーカーのドアを引き開けた、隣人にはもう何も言うことは無い、リックの頭の中にあるのは仕事のことこれからの1日の事だけだった。

2
最終世界大戦が、かつてあったが今ではなぜ戦争が起こったか、どっちが勝ったか(もし勝利者があるとするならばだが)そんな事覚えている人間は1人もいない。

第1番にフクロウが死んでいった。道路のあちこちにフクロウが横たわっている姿はどこかユーモラスでもあった。
惑星植民計画も進んでいて、異星環境下でも作業できる人間型ロボット(有機的アンドロイド)は植民計画の補助エンジンとなった。国連法によって全ての移民はアンドロイド一体を無料貸与されることが定められ、1990年代までにはアンドロイドの種類が60年代アメリカ製自動車のように細分化を遂げていた。
地球への残留を困難にする事が国連の狙いだった、地球に居座るものは人間の健全な遺伝への脅威であるとされた。それでも移住を拒む人間はたくさんいた、それは関係者にとっても首をかしげたくなる事だった、理屈でいけば全ての適格者は今頃なら移住を終わっていてもいいはずだった。地球は彼らにとって変わり果てた姿であっても離れがたい故郷なのか、それとも死の灰がいつか晴れると思っているのか、何千何万の人間が地球に残留し、その大多数がお互いの存在を確かめ合い勇気を振るい起こそうとする様に市街地に集中していた、この連中は割に正気な連中らしい、そしてほとんど見捨てられた郊外地域には心許ない付加物という形で毛色の変わった人間がまだ残っている、今浴室で髭を剃っているジョン イジドアもその1人だった。

イジドアがこのビルに居つく様になったのは戦後初期の事、サンフランシスコの南にあるこの半島は最初の内、降灰に見舞われなかったため大勢の人が住み着いた、灰がやってきた時その一部は死に、他はこの地を去った、だがJ,Rイジドアは後に残った。
テレビでは地球から移住すればあなたの要求に合わせてデザインされた人型ロボットが無償で提供されますと政府の宣伝が流れている、今日は火星で最大の合衆国植民地(ニューアメリカ)の建設五周年の記念日だと繰り返し伝えている。火星へ移住した主婦へのインタビューをやっている。移住してからは自分達がマル特に分類される事がなくなって安心しているといっていた。
イジドアは移住しなくてもこっちはその心配が永久になくなったと思った。一年前から特殊者(スペシャル)の仲間入りをしており、もっと悪いことに精神機能のテストのせいで基準にも合格できずピンボケの部類に入れられてしまった、しかし彼は生き抜き仕事も見つけた。模造動物修理店のトラック運転の仕事を見つけた、店主のハンニバル スロートは彼を人間並みに扱ってくれた。

イジドアは仕事に出かけようとすると、彼が出てくるのを待ち受けている人がいると感じる。イジドアは急いで共感ボックスに行きその取っ手を掴んだ、いつものかすかな陰イオンの匂いが漂ってきて貪る様にそれを吸い込んだ、ブラウン管がテレビの紛い物の様に輝き始める。あの有名な景色が広がった、荒れ果てた登り坂干からびた骸骨の様な雑草、苦しげに山腹を登っていくガウンをまとった老人ウィルバー マーサーだった。
イジドアは自分の立っている居間が次第に薄れていくのを感じた。もう老人の登山の傍観者ではなく彼自身の足が見慣れた小石混じりの土を踏みしめていた。そして空を覆ういがらっぽい靄を嗅ぎ取っている、それは地球の空ではなく遠い見知らぬ世界の空だった、共感ボックスのおかげで瞬時に手に入る空だった。

いつもの通り不可解な方法で転移は完了した。ウィルバー マーサーとの肉体的な融合が再現された。同じ様に取っ手を握りしめている人達の身に起きているのと同じ様に。

不意に石ころが飛んできて腕に当たった、虐待者達は、執念深く追いかけてくる、頂上に着くまで。彼は頂上の事を思い出した、坂が突然平らになるとそれで山登りは終わり、別の苦しみが始まる、何かこれを繰り返した記憶はぼやけている。疲れ果て、神様なんでひとりぼっちでこんな風に立って、見えもしない奴にいじめられなきゃいけないんですか?その時彼の内部で融合に関わっている全員のざわめきがこの孤独の幻覚を打ち破った。

昔はこうじゃなかったのに、と彼は記憶を辿った。養父母のフランクとコーラのマーサー夫妻は救命ボートで漂流している彼を海岸沖で見つけた、素敵な少年時代だった動物が好きで時には死んだ動物を蘇らせることさえできた、地球だったのか植民惑星だったのかそれすら覚えていない、だが殺し屋の事だけはしっかり覚えているなぜならそいつらに特殊者より、もっと特殊なフリークとして逮捕されたからだ、そのために全てが一変してしまった。

その土地の法律は死者を蘇らせる時間逆光能力の使用を禁じていた。16歳の時彼はその事をきつく言われたが森の中でこっそり続けていて、知らないうちに老婆に密告されてしまった。殺し屋達は彼の脳に発生した特異な小節を破壊して彼を深い墓穴世界に突き落とした、そこにどれくらいいたのか覚えていない、脳の超感覚小節がやっと再生し周りの動物の死体達と共に上昇した、そしてみんなを見失い気がつくと1人で山を登っていた、だがみんなが自分の体の中にいる事を感じていた。イジドアは嫌々ながら取っ手を離すことにした、石ころを投げつけられた腕がひどく痛み出血している。腕についた血を拭き取ったその時、遠いテレビの音が聞こえた、もう1人ぼっちじゃないと彼は悟った、誰かが引っ越してきて空き部屋に入ったんだ、テレビの音が聞こえるほど近くに、ミルクや卵を持って挨拶に行こうと考える、冷蔵庫を開けると(コンプレッサーが効いていない)怪しげなマーガリンの塊を見つけ胸を弾ませ階下へ出発した、ピンボケだと悟られない様にしないと、と思いながら急いで廊下を歩いた。

3
出勤の途中、デッカードはサンフランシスコの動物店を覗いてから行った、そこには西海岸唯一のダチョウがいた。司法本部に着いたのは15分の遅刻だった。
上司のハリイ ブライアント警視が声をかけて来た。「話がある、9時30分に私のオフィスに来てくれないか?」歩きながら話始める「デイヴ ホールデンが脊椎にレーザ銃創を受けてマウントザイオン病院に収容され少なくとも一ヶ月は入院だろう」「何があったんです?」主任バウンティーハンターのホールデンは昨日までピンピンしていた。ブライアントは9時30分に私のオフィスへともう一度念を押して立ち去って行った。

リックが自分のオフィスに入ると秘書のアン マースティンの声がした「ホールデンさんが撃たれたニュースを聞きましたか?」「きっとローゼン協会で製造している新型アンドロイドの仕業ですわ」今あの会社で使っているネクサス6型脳ユニットは二兆個の構成要素の工場を備え一千万通りの神経回路の選択が効くんですって」「今朝の映話の事はご存知ないでしょう?ミス ワイルドが教えてくれました交換台を9時に通ったとか」「着信かい?」リックは聞いた「いいえ発信です」ブライアントさんからソ連の世界警察機構へ向けてローゼン協会の東半球生産支部へ抗議書を提出する意思があるかどうかを先方に確かめられたそうです」「まだハリイはネクサス6型を市場から引っ込めさせるつもりなのか?」別に意外ではなかった、新型の性能が公開されてから脱走アンドロイドの取り締まりに関わる警察組織の大半はそれに抗議してきたのだ。「ソ連警察にもどうにも出来んさ」リックは言った。リックは机からネクサス6型の公開データを取り出した、ネクサス6型の脳活動の組み合わせは一千万通りに及ぶつまりどんな知能テストもそのアンディーを罠にかけられない、この数年知能テストでアンディーが化けの皮を剥がされた試しはない。ネクサス6型は知能にかけては特殊者の一部をはるかに凌いでいる、これまでも召使いが主人より有能なケースはあった、だがその後フォークトカンプフ感情移入度検査法の様な新しい能力テストが出現して判定基準を示してくれた。知的能力に優れたアンドロイドでも標準知能以下のピンボケを含めた全ての人間が何の苦もなくやっている体験を全く理解できないことが明らかになったのである。アンドロイドが感情移入度検査に引っかかるのか?感情移入はどうやら人間社会だけに存在するらしい、例えば蜘蛛のような独居性生物は餌食の身になって考え、相手の生きたい気持ちを思いやったりしては大変だ、感情移入という現象は草食動物かでなければ肉食を絶っても生きて行ける雑食動物に限られているのではないかとリックは考えている。人間型ロボットはどうやら本質的に独居性の捕食者らしい、リックはアンドロイドをそういう目で見る事にしていたその方が仕事がやりやすいアンディーを廃棄処理する-早く言えば殺す-事がマーサーの唱える生活規範に背かなくなるわけだ〈殺し屋〉のみを殺せ。初めて地球に共感ボックスが登場した年マーサーはそう教えた。マーサー教では絶対の悪がとぼとぼ登頂する老人のガウンに掴みかかってくる、しかしその邪悪な存在が何者かは明らかにされない。マーサー教はモヤモヤした悪の存在をどこにでも見いだす事ができる、リックデッカードからすれば、それは主人を殺して逃亡した人間型ロボットはまさに〈殺し屋〉の具現に思えるのだ。
出勤前に寄ったペットショップを思い出し電話をかける。「陳列に出ていたダチョウだが頭金はいくらだね?」「全額の三分の一です」高すぎるので電話を切った、とんでもない大金だが現にそんな大金を持った人間もいるんだリックは前に代用羊を買った模造動物店に電話した。
デッカードだ 電気ダチョウはいくらする?」「800ドルはかからんでしょう、急ぎですか?」「後で電話しよう」リックは電話を遮った、腕時計が9時30分なのに気がついたのである。
ブライアント警視の元へ向かった。
枯葉憂鬱な気分だった、論理的にはデイヴが突然第一線から退いたという事で少なくとも密かな喜びはあってもいいはずなのに、デイヴと同じことが自分に起こるという不安のせいだろうか?奴をレーザーで切るぐらい利口なアンディーなら俺もやられかねない、だがその不安が原因ではなさそうだった。「やはり新型脳のデーターを持ってきたな」ブライアント警視が言った。リックは答えた「口コミで聞きましてね、相手の相手のアンディーは何人でデイヴはどこまでやったんです?」「全部で8人だ」「デイヴが最初の2人を片付けた」「で残りの6人がこの北カリフォルニアに?」「現在までの情報ではデイヴもそう考えている。デスクに入っていたメモもある、デイヴの知っている事は全部そこに書いてあるそうだ」ブライアントはまだそれをリックによこす気は無いらしい。
リックは自分の売り込みにかかった。
「今すぐにでもデイヴの代理を引き受けられますが」ブライアントは言った「デイヴは容疑者の判定にフォークトカンプフ改良検査法を使っていた、知っているはずだがこのテストは新型脳ユニットに有効とは限らん、それはどんなテストにも言える事だ、三年前にカンプフが改良を加えたフォークト検査法しか我々には手はない」「君がこの6人の追跡にかかる前にシアトルに飛んでローゼン協会の連中と話し合って試験台として新しいネクサス6型ユニットを備えたアンドロイドを提供させてほしい」「そしてフォークトカンプフ検査にかけるんですか?」「ローゼン協会へは私から交渉しておく」「テストされるアンドロイドの中にも人間を混ぜるかどうかも連中と相談する、ただし君にはその結果を伏せておく、それは生産業者と私の判断だ君がつくまでには決定は済んでいるだろう」「君が主任バウンティーハンターとして行動するのはこれが最初だ、デイヴは腕利きだった年季が入っていたからな」「私もです」リックはムッとして言った。「どのアンディーを君に任せるかどうかはいつもデイヴが判断していた、だが君が担当する6人はデイヴが自分で処理しようと考えていた難物揃いだ、しかもその1人はすでに一度彼を出し抜いている」「マックス ポロコフ。フォークトカンプフ検査法にかけられたのは最初の3人、つまりデイヴが廃棄処理した2人とこのポロコフだけだ、デイヴがそのテストを行っている時ポロコフにレーザー銃で撃たれた」「向こうでフォークトカンプフ検査を行いもし人間の誰かがパスしないような事態が起きたら—」「そんな事はあり得ないです」とリック。
レニングラード精神科医のグループは精神病患者に見られる感情移入能力の減退とアンドロイドのそれを正確に見分けることが出来ないと心配している。フォークトカンプフ検査に合格出来ない人間もごく少数存在すると考えられている、君が彼らをテストした場合、人間型ロボットという判定を下すだろう、その誤りに気付いた時はすでに彼らは殺されている。しかしそのような人間は全て施設に収容されている、彼らは一般社会で生活出来ない、ただし最近発病してまだ気づかれて無い場合がないとは言えない」
デイヴが頭を痛めていたのは新しいネクサス6型の出現だ、今までの6型は標準的なテストで識別可能だったが、今回は自分で確かめなければならない、今回のシアトルでの仕事はその仕事だ
リックは立ち上がった「デイヴ ホールデンのメモを貸してくれませんか?」「君がシアトルで検査を済ませるまでお預けにしよう」

シアトルのローゼン協会のビルの屋上に、警察車を着陸させたリックは若い女性の出迎えを受ける。
「私レイチェル ローゼン あなたがデッカードさんね」「警察は我が社が公益に奉仕しているとは考えていないようだわ」人間型ロボットも他の機械も同じだ一歩間違えば公益から脅威へ早変わりする。「アンドロイドを無生物と考えて平気なのね、だから廃棄処理とやらもできるんだわ」リックは絶句した。突然目の前に沢山の動物が目に入ったからだ、驚きと言うより憧れが先に立った、そこから見えるアライグマなど初めて見た。擦り切れたシドニー社の価格表を取り出した。市場には全くでないのだ天文学的な数字だった。
「フクロウを見ない?」フクロウがいるわけがない、シドニー社のリストには絶滅種と明記されている、リストに間違いがあった試しはない。「模造だ」「いいえ」「しかしシドニー社のリストが」「うちはシドニー社からも動物店からも購入しない、購入先は全部個人で買値も公表しない」「このフクロウを売るとしたらいくらだね」「売らないわ、それにつがわせるもう一羽のフクロウを探している」

「そろそろ受検者のテストを始めよう」「叔父があなたの上司から映話を引き取ったから多分もう準備が」「家族でやってるのか?こんな大企業が同族経営?」レイチェルはポケットに乱暴に手を突っ込むと、すたすたと歩き出した、振り返りもしない。「何か俺に恨みでもあるのかね」「あなたという下級警官は今ユニークな立場に置かれているわけよ、この意味がおわかり?」「最近の製品の何パーセントがネクサス6型なんだ?」「全部」「フォークトカンプフ検査法が彼らに有効だって事に俺は自信がある」「もし有効でなかったら市場から全て回収しなくちゃならない、無能な警察が逃亡したわずかな数のネクサス6型を発見できないおかげで」

「エルドン ローゼンです」男は言った。
デッカード君、我が社は地球で生産をしていない、映話一本で一揃いのサンプルを取り寄せる訳にはいかないのだよ、私としてはベストを尽くしたが」「すぐにはじめましょう」リックは言った。この連中は俺を恐れていると気づいた、この俺がネクサス6型を生産中止に持っていけるかもしれない、これから一時間の行動がローゼン協会の運命を左右することさえある。ローゼン家の2人はリックを洒落た小部屋へ招き入れた。テーブルの上にシドニー社カタログ2月版が目にとまった、まだ発行していないものだ、ローゼン協会はシドニー社と特別な関係にあるらしい。「価格情報を事前に入手する事は禁じられている没収します」カバンに2月版を落とし込んだ。
リックはテーブルにフォークトカンプフ検査器具を組み立てた。「受検者を連れてきてください」「私をテストして」レイチェルは言った。「なぜ?」「我々の選んだ最初の受検者は彼女なんだ」ローゼンは言った。

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フォークトカンプフ検査を終えてリックは言った。「君はアンドロイドだ、テストの判定でそう出た」「レイチェルはアンドロイドじゃないよ」「信じられないな」「じゃあ骨髄分析をさせてほしい、苦痛な検査だが有機的に判断できる」「問題は骨髄分析の合法性じゃない」君達の検査が失敗したことが重大だ、レイチェルがアンドロイド並みの点数しか取れなかった事は説明がつく、レイチェルは宇宙船の中で産まれ14年間そこで育ったからだ」「警察の検査に引っかかれば、私は殺されるかもしれない、それは分かっていた、フォークトカンプフ検査を受けたのもこれが初めてではない」「もし人間を誤ってアンドロイド判定した場合はどうなるんだね」「ただ一つはっきりしているのは後のテストを中止する事」「元はといえばおたくの経営方法の副産物ですよ、ここまで精巧な人間型ロボットを作れと強制した訳ではない」
「ネクサス6型を開発した時にも危険は充分認識していた、だがフォークトカンプフ検査はアンドロイドが発表される以前の時点で既に無効だった。警察は感情移入能力未発達は人間をこれまでにも誤殺している可能性もある、道義的責任をうんぬんされるのはむしろ君達の方だ」リックは思った、こっちのテストは失敗した。引っかかったこっちが間抜けだ今さら悔やんでも遅い。
エルドンは天井を指差しそこにカメラがあった、この失態はフィルムにおさめられていたのだ。彼らは取り引きをしてきた。欲しがっていたフクロウをリックの物にできる代わりに帰って上司にフォークトカンプフ検査はまだ有効だと伝える事。「少し時間をくれ」とリックは言った。
「俺は見事に罠にはまった、君たちは俺の失敗を記録にとって、俺の仕事がフォークト カンプフ検査に頼りっきりなのもよく分かっている、おまけにあの忌々しいフクロウまで持っている」「あれはあなたのフクロウよ」とレイチェル。あれ—かとリックは思った。フクロウの事をいつもあれ—と言っている、普通なら彼女と言うはずだ「ちょっと待った」「もう一度検査をさせてくれ」一問だけ質問してリックは悟った。「テストは済んだよ」「この検査法はまだ有効だ、君の識別に成功した」エルドンに彼は尋ねた。「彼女は知っているんですか?」「いや、彼女へのプログラムは完璧だからね、でもテストのやり直しを求められたとき想像はついただろう?」レイチェルに向かって言った、青ざめた顔でレイチェルは頷いた。
エルドンはレイチェルに言った「怖がらなくていい、お前は逃亡アンドロイドとは違う、移民勧誘用のローゼン協会の私有財産だからね」
リックは言った「彼の言う通りだ、君を処理する気はないよミスローゼン、お邪魔しました」「あのフクロウは本物?」2人に尋ねた。模造だよフクロウは一羽もいない」
レイチェルか、ネクサス6型の1人に初めてお目にかかった、向こうはもう一歩で我々の検査法を土台から揺るがすところまで追い込んだ、そしてこれからこのアンドロイドを6人も相手にしなくてはならないんだとリックは考えた。是が非でも懸賞金を稼いでみせる最後の1パーセントまで、ただし最後まで命があったとしてだが。
6
ジョン イジドアは新しい住人に挨拶に行こうと冷蔵庫にあった古いマーガリンを持って階下に向かった、どうやらテレビをつけているらしくいつものバスターフレンドリーの番組が聞こえてくる、ドアをノックするとテレビの音声は消え、扉の奥で誰かが怯えているのがわかる。挨拶に来たとドアの外で呼びかけると小さくドアが開き若い女性がそこにいた。マーガリンを見せたがそれの使い方すら知らないようだった「バスターの番組面白いよね」と言うと全く知らない様子だった。イジドアは家具を集めて部屋に持って来てあげようとか、エンパシーボックスの素晴らしさなどを彼女にまくし立てると彼女は彼が特殊者であることに気づいたようだった、その空気に気づいたイジドアは「もう帰る」と言った。彼女は帰ろうとするイジドアを止め、良さそうな家具をここへ運ぶのを手伝ってほしいと頼んだ。イジドアは彼女に名前を聞くと「レイチェル ローゼンよ」と彼女は言った。イジドアは名前からして「あの有名なローゼン協会の?」と聞くと、そんな会社しらないわ、と彼女は言った。「私の名前はプリス ストラットン結婚してからはこっちの名前を使っているの、ミス ストラットンと呼んでちょうだい」と言った。ドアは閉まりイジドアは薄暗い廊下に一人の残された。
7
イジドアは自分の部屋に帰って考えた、今生きている中で一番の重要人物のバスター フレンドリーを知らないなんて変わった娘だと思った、自分の名前の事であやふやだったのも不思議だった、助けてやらなくちゃならない身の上かもしれないが自分に出来るだろうかと思った。

イジドアは部屋を出るとおんぼろのホバーカーを駐車してある屋上へ向かった。一時間後、イジドアは仕事をしていた。具合の悪い電気猫を預かって動物病院に向かっていた、猫がくるしんでいるのを見るのが耐えられなくなって猫を充電しながら行こうと思ったが、ショートしてしまい猫は動かなくなった、イジドアは電気猫でも苦しんでいると自分も辛くなるが、店主や修理工は全く気にならないらしい、原因はきっと自分が特殊者であるからだろうと思った。ラジオをつけるとバスターフレンドリーショーをやっていた、テレビのショーと同じで毎日24時間ぶっ通しで続いている。バスターフレンドリーはどうやってテレビとラジオの時間をひねり出しているのかイジドアは不思議だった、一度も同じネタを言わず、疲れている様子も一切見たことがない。イジドアには気にくわないことが一つあった、マーサー教を冗談のネタに使うことだ。国連も警察もマーサー教による共感の必要性を認めているというのに、いつもイジドアは怒りを覚えたが、誰も気にしてないらしい。バスターとマーサーは自分達の精神面を支配する為に競争しているのだろうと考えた。店主のハンニバル スロートに聞いてみようと思った。
イジドアはハンニバル スロートのオフィスに壊れた電気猫を持っていくと下の作業場のミルトに渡せといわれる。イジドアは聞いた「バスターフレンドリーとマーサー教は僕たちの精神面を支配する為に競争しているんじゃないですか?」「そうだとしたらバスターの方が旗色がいいな」「そんなことはない、マーサーは何度でも生き返り永遠なんです」「バスターもマーサーと同じく不死だ別に差はない」「どうして不死なんです」「それはわからん」
スロートは猫を検分しながらイジドアをくそみそに罵り始めた。「この猫は模造じゃないいつかはこんな事が起こるだろうと思っていた、しかし猫は死んじまった」ミルト ボログローヴがオフィスにやって来て言った「近頃のニセモノは病気回路が付いているから本物に似すぎてわからなくなった、しかし生きた動物はそのうち死ぬもんだ自分達がそれに慣れてないだけだからイジドアを責めないでやってくれ」と言った。スロートは猫の持ち主に映話しろと言った、イジドアは映話恐怖症なので嫌だと言ったがスロートはかけないとクビだと言い、イジドアは映話をかけた、イジドアは映話をかけると急に饒舌になり、スロートにリストの価格で小切手を送れと言われたのに、勝手に代替えの猫を送りますと伝え持ち主を怒らせてしまう。途中でミルトが変わり、小切手を送るか模造品を送るがどちらかしかないがどうするか?と尋ねると依頼主は、持ち主の主人に悟られたくないから、模造猫を頼むと言う。ミルトは模造は近隣の住民をだませても飼い主にはすぐわかると伝えるがそれでも試して見ると言い話は成立した。修理をする為にホイールアンドカーペンター社に映話することをスロートはイジドアに任せた。
イジドアは有頂天だった。
8
リックは司法本部の屋上に高速車を着陸させ、ハリイ ブライアントのオフィスに向かった。
「用件は片付けました」「デイヴの容態はどうですか?最初のアンディーに取り掛かる前に会っておきたいのですが」「その前にポロコフを片付けろ、奴は指名手配になった事をもう知っている特殊者を装い清掃公社にゴミ収集員としている、本バカのマル特を装っておりデイヴもそれに引っかかった、ところでフォークト カンプフ検査の事だが自身はあるんだな?」「あります」リックは言い切った。「これからポロコフを処理して今夜か明日デイヴに会う事にします」「世界警察機構のソ連の刑事が1人ここに来る、名前はサンドール カダリイ、新しいネクサス6型を重大視して派遣された、捜査に同行させる許可は与えてある」「懸賞金はどうなるんですか?」「分ける必要もないだろう」カダリイを待つかと言われるとリックは今すぐ追いたいので1人で行くと言い、屋上のホバーカーに乗り込んだ。
リックは清掃公社のビルに立ち寄った、人事のミスター アッカースにポロコフの所在を聞くと、今日は無届けで欠勤していると言う、警察車でポロコフのアパートへ飛んだ、リックは俺をシアトルなんかにやらずにすぐにポロコフを追わせれば捕まえられたのに、もう捕まらないかもしれないと思った。
ボロボロのアパートへ侵入していった、ポロコフはフォークト カンプフ検査がもう済んでいるのでいきなり廃棄処理にかかれるのだ。無指向性ペンフィールド波発生機を取り出して筋硬直のキーを押した。人間もアンディーもこれでカチカチに凍りついただろうとリックはスイッチを切った、こっちは何の危険もないその部屋へ入って奴をレーザーすればいい奴がいるとしての話で、まあそんなことはあり得ない。
ポロコフは居なかった。高飛びしたのかもしれないし諦めて、次のルーバ ラフトに取り掛かる事にした。ホバーカーに戻りハリイ ブライアントに映話した、カダリイが警察署に到着していて、リックのもとに向かうので待っていてくれといわれる。ミス ラフトの資料を読む、オペラ歌手でドイツ生まれと自称。車内の映話がなりローゼン協会からだった、映話にはレイチェルローゼンの顔が現れた、ネクサス6型を捕まえる為に同行して協力したい、と言ってきたがリックは簡単に断り警察署にもシアトルからの映話は、今後繋がないでくれと言った。カダリイがタクシーで到着。どんな型の銃でも知っているリックでも見たことのない銃を持っていたので聞いてみると、特殊な銃だと説明を始めた。怪しんだリックはこいつはポロコフだと見破り、車の床の非常ボタンを押した。ポロコフはリックに襲いかかってきた、リックは在来式の拳銃でアンドロイドの頭蓋骨を撃ち抜いた。映話で、司法本部にブライアント警視にポロコフを仕留めたと伝言を頼む。妻のイーランに映話したが、妻の抑鬱が今日は激しく、リックの言葉がまったく聞こえていなかった。
ホバーカーに乗り込みルーバ ラフトを始末しにオペラ場に向かった。ポロコフの件で考えを改めレイチェルに協力してもらおうと考える。どちらにしろもう一人かたずけてからにしようと考える。

オペラ場に入るとルーバ・ラフトが歌っていた、第一幕の終わりに検査してすぐに始末しようとかんがえた。ミス・ラフトの楽屋に入り声を掛けた、検査をしたいと言うと「わたしをアンドロイドと疑っているのですね」とラフト「わたしはアンドロイドではありません」と言う。「アンドロイドは他のアンドロイドのことなど気にしない、その事について検査したい」
とリック「ではあなたもアンドロイドなのですか?」「アンドロイドを殺すのが仕事なんでしょう?」「警察の仕事を始める前に検査しているので、問題ない」ルーバ ラフトの検査を開始する。ルーバ ラフトは質問に性的な表現が混じった時リックに銃を突きつけた、変質者だと思い警察に電話した。リックは俺を殺さずに警察に電話するとは、自分を人間と思っているのだろうと思った。警察が来てリックは身分証を見せ上司の名前を言ったが、警察はそんな名前は聞いたこともないと言う。そこでリックは今何がおきているのか察しがつき始めた。この警察官もアンドロイドだなと思った、映話を借りて自分で警察署にかけてみた、ブライアントに繋ぎ、パトロール警官が来たが警視の名前も俺のことも知らないらしいと言った「その男を出してくれ」とブライアント。映話に警官を連れて来ると何も写っていなかった、相手にそれを指摘されて、リックは初めて気がついた、もう一度かけ直すと誰も出なかった、警官がかけ直すと警察に繋がった。警視とリックの身分を照会され本部までの同行を求められる。ホバーカーに乗り警察署に向かうと違う方向に向かっている「おい、司法本部は北だぜ」「あれは古い方さ倒壊寸前で空きビルだ」リックは協力したアンドロイドにはめられていると思った。「そろそろお前がアンドロイドだと白状しろよ」「俺は毎朝、ロンバート通りの司法本部に出勤してるんだそこが空きビルなのか確認させてほしい」「ひょっとするとお前がアンドロイドなんじゃないか?例の移植された偽の記憶って奴じゃないのか?」リックは敗北を感じ、次に来るものを待ち受けるしかなかった。警察車は着陸の準備に入った。
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ミッション通りの司法本部は、美しい近代的な建物だった、リックは一度も見たことのないものだった。脳波パターンを取られ身分照会をされた、しかし向こうも我々もなぜお互いの存在を知らないんだろう、これが本当の警察機関だとしたら接点が今までになかったことが信じられない。警視がやって来た「これには何が入っているんだ」「フォークト カンプフ検査の器具です」「ジョージ グリースンとフィル レッシュを知っているか?」リックには聞き覚えのない名前だった。「北カリフォルニア地区のバウンティーハンターだ、君はアンドロイドかね?過去に何回か逃亡アンドロイドが容疑者追跡中のバウンティーハンターだと偽ったことがある」「わたしはアンドロイドではない、家内に映話してもいいですか?」警視は50セントをリックに渡した、リックは自宅に電話すると見たこともない女が現れた。リックは映話を切り元の場所へ戻った。警視はガーランドと名乗った、警視の部屋へ案内された。「フォークト カンプフ検査について聞きたい」「新しいネクサス6型を識別できる唯一の方法です、知らないんですか?」「何種類かの検査法を知っているがそいつは初めてだ」「君のカバンに入っている処理命令リスト、ポロコフ ミス ラフト その次が私の名前になっている」ガーランドはバウンティーハンターを1人読んだ「フィル レッシュがやって来る彼のリストもチェックしてみよう」「俺の名前が載っているとでも」「私に関する情報だが、職業が保険外交員になっているがそれ以外は年齢住所、特徴 、どれも正確だ」
オフィスのドアが開き、フィル レッシュが入って来た。レッシュはポロコフもルーバ ラフトも検査はしていないのか?と尋ねた。2人ともテストのチャンスはなかったとリック、「検査法は何を使っている」「フォークト カンプフ検査法」「その方法は知らないな」「俺も初めて会った時からポロコフは検査してみたいと思っていたんだ、アンドロイドにとってでかい警察組織はいい隠れ家になるから」ガーランドは激怒した「この私もテストしたかったか?」「このデッカードなる男が持ち歩いているリストはアンドロイドのそれではなく人間のリストだ、もしミス ラフトが通報しなかったら彼女を殺し私の元に辿り着いただろう」インターホンが鳴り女の声が告げた「ポロコフ氏の検査結果が出ました」人間型ロボットである事が判明しました」ガーランドは椅子にがっくりと腰を下ろした。レッシュがフォークト カンプフについてリックに尋ねる「感情移入反応で調べる」「脊椎上部神経節で調べる俺たちの方の検査の方が簡単だ」とレッシュ。リックは言った「「俺をテストしてくれ今すぐでもいい、無論こっちもテストさせてもらうよ、その気があるなら」「あるともよ」レッシュは言った。「何年も前から俺は提案してるんだ、警察の上層部まで全員に検査を受けるように」ガーランドは言った「君が提案したのは事実だ、そして私はそれに反対してきた」「しかしこうなるとあんたらもテストを受けてもらうしかないポロコフの結果がこうなった以上は」
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レッシュは検査の道具を取りに部屋を出て行った。するとガーランドはレーザー銃を取り出しリックに狙いをつけた「今日は厄日だクラムズ巡査が君を連れてきた時、嫌な予感がした私が割り込んだのはそのためだ」徐々にガーランドは銃を下ろした「我々3人のテストはどう出るかな」とリック「レッシュはどうにもならん間抜けだ」「自分の正体を知らない?」「疑念さえ持っていない、またそうでなければバウンティーハンターの仕事は出来んだろう、アンドロイド向きの仕事ではない」「そのリストの手配者たちはみんな私の知っている連中だ、同じ宇宙船に乗ってここへやってきたからだ、レッシュだけは一週間後に残って記憶の移植を受けてからやって来た」「真実を知ったら彼はどうするだろう」「想像がつかない」「全員殺して自殺するかもしれない、自分を人間と思っている場合は」「するとこんなことをするのは大きな賭けというわけだ」「どのみち最初から賭けだった脱走までして地球へやって来ても我々は動物並みにさえも扱われない。我々をひとまとめにしたよりもミミズやワラジ虫の方が大事がられる」「もし検査に引っかかるのが私だけなら状況は好転するさ、私がどこで計算しそこなったか知っているか?ポロコフの一件を知らなかったことだ、彼は我々より先に地球に来ていたに違いない鑑識の報告に賭けたのは私の間違いだった」「ポロコフにはやられるところだった」我々と同じ脳タイプだとは思えない、我々の知らない方法で構造を変更されたんだ」「さっき映話した時なんで自宅に繋がらなかったんだ?」「ここの映話は全て袋小路になっている。建物内のオフィスに繋がるだけだ、我々はサンフランシスコから切り離された一つの輪だ、こっちは外の連中を知っているが向こうは我々の事を知らない」レッシュが戻って来たがガーランドはレッシュに銃口を向けた、レッシュは間髪入れず転がりながらガーランドの頭を撃ち抜いた。
レッシュは、俺のいない間に何を話していたんだと言った。ガーランドがアンドロイドである事、それとレッシュも、といいかけたがそれはやめた。とりあえずこの建物を無事に出る事を考える。レッシュはリックに手錠をかけ、出口に向かうことにした。エレベーターに乗っている時、レッシュはリックに、あんたの署で働かせてくれないかと聞いた。リックはレッシュに本当の事を話すことが彼のためだとおもいながらも、なんとかなると思うと答えた。
レッシュは自分がアンドロイドに囲まれて働いていながら全く気づかなかった自分を疑い始めた。もしかしたら自分に擬似記憶の移植が行われているのではと、しかしそれは人間には無効だと実証されている。
屋上につき、2人でホバーカーに乗りオペラ劇場へ向かった。「ルーバ ラフトの処理が終わったら俺を検査にかけてくれないか?」「その話は後だ」とリック「結果がどう出るか知っているんだな、ガーランドに何か聞いているんだろう?」「ルーバ ラフトは手強い、今はそっちに集中しよう」レッシュは自分の飼っているリスが、可愛くてしょうがないと話をした。「偽の記憶体系では説明がつかないんだ」とレッシュは言った。
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ルーバ ラフトを発見し、静かに後ろから取り押さえた「なぜ釈放されたの?」「俺を逮捕に来た警官と上司はアンドロイドだったよ、知っているだろう、同じ宇宙船できた事を聞いた」フィル レッシュが「ミッション通りの警察署は、そのグループの連絡機関で人間のバウンティーハンターを雇うほど自信過剰だったのさ」と言った「それはあなたの事?」とラフト「あなたも私達と同じアンドロイドなのよ」沈黙の後レッシュは言った「まあその件は折を見て決着をつけるさ」「この女を車まで連れて行こう」
向かう途中、売店を通ると、ルーバはムンクの思春期のレプリカを買ってくれと頼む。全集にしか入っておらず25ドルするというが、リックはすぐ買ってラフトに手渡した。レッシュは「うちの署じゃそんな経費は落とせない」と驚いたがリックは「個人として買うんだ」と言った。「あなたは優しい」とルーバ「アンドロイドなら絶対にこんなことをしないわ」とフィル レッシュに敵意をあらわにして睨みつけた。「もう我慢できん」とレッシュはレーザー銃をルーバに突きつけた「検査をしてからだ」とリック「こいつはもう認めてるんだ待つことはない」「気に障ったから殺すというのは—その銃をよこせ」レッシュは銃を渡さなかったリックは「わかったじゃあそれを処理しろ」と言うとレッシュは銃を発射した、ルーバが避けたためみぞおちに命中し彼女は悲鳴をあげたうずくまったまま絶叫を続けた、リックは自分の銃でとどめを刺した、リックは今しがた買い与えた画集をレーザー銃で燃やした。
「これから車に戻り君を検査にかける」「本当に俺をアンドロイドだと思っているのか?」「ガーランドが言ったのか?」「そうだ」リックはもうこの仕事から足を洗いたいと言った、レッシュはしかし誰かがやらなくてはならないとレッシュ「ルーバだって素晴らしい歌手で活用出来たんだ、こんな事は正気じゃない」「だが奴らは脱走するために何人かの人を殺している、ガーランドもポロコフも上手くいけばあんたを殺していたんだ、凶悪な不法侵入者に変わりはない」とレッシュ「よし俺を検査にかけてくれ」「結果を隠さずに教えてくれ」テストが終わった後リックはしばらく無言だった、レッシュは人間だった。おそらくガーランドが仲間割れをさせる為の嘘だったようだ、リックはむしろ自分がルーバ ラフトに感情移入している事を異常に思いレッシュに頼み自分をテストしてもらった
結果、自分はある特定のアンドロイドに対して感情移入ができる事がわかった。フィル レッシュには異常は無かったむしろ異常なのは俺の方だと思った。今まで何の同情もなくアンドロイドを処理できたが、ルーバにはそれができなかった「俺はどうしたらいいんだろう?」「セックスだよ」とレッシュ「原因は彼女に色気を感じたからだ、それがバウンティーハンターの最大の悩みだと俺たちは教えられたよ、植民地ではアンドロイドが妾として使われているのをあんたは知らないのか?」「それは法律違反だ」「違反でもそれをするのが人間さ」「デッカード、あんたはある女性型のアンドロイドに対して一緒に寝たいという感情を持った、それだけのことさ、あんたは物の順番を取り違えたに過ぎん、その逆をやってみろ、まず彼女と寝てそれから殺す」お前さんは優秀なバウンティハンターだとリックは思った、しかしこの俺は?生まれて初めてリックは迷いを感じ始めた。
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J.Rイジドアは、闇市で食料品を買い込み貴重な一本のシャブリワインを買い込み、プリス ストラットンの部屋へ向かった。彼女はとても喜んだがすぐに顔を曇らせた。「どうしたんです」「私には無駄なものだわ、いつかお話しします」「今日は帰ってくださらない?」「なぜだかわかった」とイジドア。「友達がいないからだ」「いたわ7人も、でも今はバウンティーハンターが動いているからみんないないかもしれない」「バウンティーハンターって?」「やはり大衆には知られていないのね、殺す相手のリストを持っていて、殺すたびに報酬をもらえるのよ」「警察を呼べないの?」「だめ」なぜこの娘が怯えた態度をとったのか理解した、しかしこれは妄想なんだ、この娘は灰で脳をやられておかしくなっているんだろう。ひょっとするとマル特かもしれないと思った。「僕がそいつらをやっつけてあげる、レーザー銃携帯許可書を手に入れてきて店も休暇を取れば良い」「あなたは優しい人ね、でもみんな死んでしまったなら生きていてもしょうがない、何で連絡もしてこないのよ」と、悪態をついた。「実はあたしたちは火星から来たのよ、火星はもっと寂しいわここよりもずっとひどい」「アンドロイドが慰めてくれるんだと思ったよ」「アンドロイドも寂しいのよ」「私たちが帰って来たのはあそこが誰も住むべきじゃない場所だからなのよ」
あまりにも暇すぎるので、まだ宇宙旅行のない時代に書かれた宇宙旅行の物語が面白くて読みふけった、話が油に乗って来たが、玄関のドアにノックが響いた。「プリスあなたそこにいるの?」「ロイとアームガードだよ、君の手紙を見たんだ」ドアを開けて女はプリスを確認すると「プリスしばらく」と抱き合って喜んだ
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3人は部屋の隅でひそひそと相談してから戻って来てイジドアに挨拶した。ロイ ベイティーがプリスに報告した、ポロコフとガーランド、アンダーズとギッチェル ルーバもやられた。残ってるのはこの3人だけだ、そして全て引き払ってこのアパートに逃げて来た。
イジドアはこの3人に共通する違和感を感じ取っていた、なにかはわからないが。
レイは言った。「プリスとイジドア、アームと俺が二組に分かれて住みお互いに連絡を取れる。隠しマイクと警報装置を作って付ける、そしてここでじっと見を潜める」イジドアはきっと彼らの方が、何か法律を破って地球に亡命して来たんだと思った。しかしそうだとしても人を故意に殺すなんてひどいと思った。4人は部屋に別れた後、ロイは警報装置を取り付けに来た、ブザーが鳴るとパニックのムードが放射される、ゲインを最大にしてあるので極度のパニック状態になる、自分達に影響はないのか?と尋ねると、自分達は大丈夫だと、イジドアも彼の脳波の分だけ保証させてあるから平気だ、と言った、イジドアは気づいた「あんたらはアンドロイドなんだな、なぜそいつらが殺しに来るのかこれでわかったよ」「あなたがいつ気づくのかと思っていたわ」とプリス「私たちどこか違う、そうなのね?」「多分ポロコフやガーランドがやられたのもそれだ、誤魔化せると自惚れていたんだ」イジドアは「あなたたちはインテリで、よくものを知っているから教えてほしい」と言った。プリスは「イジドアは私達が火星で何をしたかわかっていないんだわ」と言った。アームガードは「あたしたちを密告すればあなたは大金がもらえるのよ」と言った。「ごらんなさい、彼はその事を知っているのに密告しようとしないのよ」「もし彼がアンドロイドならすぐ密告した事だろう」3人はこれからの行動を投票で決めようといった、宇宙船でそうしたように。
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みんなでここに居座るか?イジドアを殺して隠れ場所を他へうつすか?アームとプリスはイジドアと残るというがロイは他に移ると言った。イジドアは皆さんのために協力しますよと言った。
リックは仕事がひと段落して、動物横丁へ向かい動物を物色していた。セールスマンに3千の大金を見せると山羊をすすめられた、ローンの契約書にサインし3千ドル(賞金の金額)を頭金として支払った、その額の大きさに身震いしたが自分の能力に対する自信を取り戻すためにもこうするしかなかった。家に帰ってイーランに山羊を見せた、イーランは喜びこれでイーランの抑鬱も治ると喜んだ。エレベーターで部屋に戻ろうとしたが何かが警告し下に降りるのはよそうと咄嗟に口にした、しかしエレベーターはもう着いてしまいイーランにさそわれるままエレベーターに乗った。
下に降りると、イーランに自分がアンドロイドに同情し始めてしまったことを話した。しごとも他の課に回してもらおうかと相談している、と話しをしていると映話が鳴った。ハリイブライアントだった。残ったアンドロイドのうち2人に尾行を付けてある、という事だったすぐに追いかけるようにと。気が乗らないリックは行かないと言ったが結局は仕事に向かう。「多分俺は奴らを処理出来ないだろう、酷く疲れている。しかし助けを借りる先がある、前に向こうから申し出て来て俺がはねつけたものが」
ローゼン協会に映話し、レイチェルを呼び出した。レイチェルはこんな夜更けに出ていけないと断るが、リックは「人間の男性とアンドロイドの女性の間に起こる関係についても確かめてみたい、君が今夜来てくれればアンドロイドの事は諦めて2人でもっと特別な事をしよう」と言うとレイチェルはサンフランシスコまで来てくれる事となった。
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ホテルの部屋で他のアンドロイドの資料に目を通していると、レイチェルが到着した、レイチェルに資料を見せた、プリス ストラットンの資料を見たレイチェルは「最後の1人はあなたもびっくりするわよ」と言った、彼女はソワソワしだし、何を考えているのかが分かった。「何が気になる?」「最後の1人はわたしと同じタイプなのよ髪型やドレスは違っているかもしれないけど彼女に会えばあなたにもわかるはずよ」「なぜそれが気になった?」「あなたが処理するときに私もついていくもの」リックはレイチェルにキスをしたが応じてくれなかった。「この事が分かっていれば此処へは来なかった、自分は型押しされた商品、私という個人が存在すると思っていたのはただの幻想、私はあるタイプの見本に過ぎないんだわ」「私が此処に来た本当の理由を知ってる?」「ネクサス6型がフォークト カンプフ検査のどこでボロを出すかを調べるためだ」「それだけじゃないわ、特異点を全て調べて修正を加えネクサス7型が完成し最終的に識別不能のタイプが完成するわ」
レイチェルは裸になりリックを誘った。「アンドロイドの所には行かないで」とレイチェル。レイチェルと寝てから2人で行くとリックは言った。彼女にキスをした「ありがとう」とレイチェル「あなたを心から愛しているわ」リックはベッドの灯りを消しながら思った、今晩のうちにこの娘とそっくりなネクサス6型を殺すことになるとはフィル レッシュの言った通りになっちまった、まず女と寝てそれから殺せ。
「俺には出来ない」リックはベッドから後ずさった「プリス ストラットンをこれから殺すと思うと出来ない」「私達は同じじゃないの、私と寝ればプリスは私が殺してあげる、だってここまで来て今更」「ありがとう」とリックは言った。後2人殺せばいいんだとリックは思った。彼はベッドに入った。
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その後2人はルームサービスを頼み思い切り贅沢をした。レイチェルはリックが付き合ったどの娘より人間らしくなっていた。シャワーを浴び服を着てすぐに屋上に向かった。「もし君がアンドロイドでなかったら俺は結婚しただろう」とリック。これで俺もおしまいだな、ベイティー夫妻の処理を済ませれば、もうその先はない今夜の様な事があった後では。「悲しそうな顔をするのはやめて」とレイチェル。「どのバウンティーハンターもそうだったわ、私と寝た後では、ただ1人を除いては、フィル レッシュ。 彼は頭がおかしいのよ」「そうだったのか」麻痺した気分だった。「でも私たちの旅は無駄にならないはずよ、向こうで素晴らしい精神的な男に会うことになるから」「ロイ ベイティーか」「メモから見てもロイ ベイティーなら処理できると思う、アームガードはどうかわからんがね」プリスは絶対無理だと彼は思った。「一体君は今までに何回こんな事をやらかしたんだ」「9回」「古臭いアイデアだよ」リックは車を下降させた「俺は今から君を殺す、それから3人を始末しに行く、もし君を殺せるならあいつらも殺せる」フィル レッシュがなぜあんな事を言ったのか、今なら理解できる、こんな目に合わされては俺だって無理はないこれが奴を捻じ曲げたんだ。
車を止めレイチェルに銃を向けたが、リックは殺さなかった。「俺にはフィル レッシュの真似は出来ん、君を殺すのはよした自分の車でサンフランシスコへ帰れ」「あなたは私を軽蔑したのね、私がやった事で」「あなたも他のバウンティーハンター達と同じ道を辿ったわ、彼らはいつの時もカンカンに怒って殺してやると息巻いたけれど、いざとなると殺せない。今のあなたと同じように」「これが意味することが分かる?つまり私が正しかったのよ、あなたはこれでアンドロイドが殺せない、ベイティー夫妻やストラットンも殺せないのよ、家に帰って休養をとったほうがいいわ」レイチェルはラジオを付けた。「消せよ」とリック「バスター フレンドリーの世紀の大発表を聞かないわけにはいかないわ」とレイチェル、リックはラジオを切るがレイチェルは手を伸ばしてまた付けた。リックの横でタバコを吸うレイチェル。タバコの火が蛍の尻の様にぼうっと輝いている、それがレイチェル ローゼンの成し遂げた成果の揺るぎない指標だった。リックに対する彼女の勝利の。
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イジドアの部屋に荷物を運んでいたプリスは、特にテレビが重要と言った。今夜まで長いこと待ちわびた発表がこれから始まるからと。
テレビを部屋に運んでと頼まれ、イジドアは人に頼られるという事に胸を躍らせていた。階段の途中で生きた蜘蛛を見つけ、それを小瓶に入れた。テレビではバスター フレンドリーの一大ニュースが始まっていた。プリスは蜘蛛を見せてと言うと、足が8本ある事に驚いた。アームガードが「4本で十分だとおもうわ」と言った。「試しに4本切ってみたら」爪切りをプリスに渡し、プリスは瓶から蜘蛛を取り出した。イジドアは異様な恐怖を感じやめてくれと哀願した「この虫が何か役に立つの?」と、脚を一本切り落とした。テレビではバスター フレンドリーがマーサーの映像は全て作り物で三文役者。セットは今は無き二流映画会社が作っていたセットである事が判明したと発表した。
プリスは蜘蛛の足を3本切り落とした。
テレビ局はマーサーを演じる俳優を見つけ、インタビューに行った。アルジャリーというこの人物は、一度もあったことのない謎の人物に雇われて15分のテレビシリーズに出演しただけだった。マーサーという人物は存在しなかった。では一体何のためにマーサー教は誕生したのか?「わかりきった話だ」とロイ ベイティー「問題はあの感情移入能力だわ」と、アームガード「人間には私達に出来ないことが出来る、それを証明する為だったんでしょう」とイジドアに詰め寄った。プリスは蜘蛛の足の4本目を切り落とした。「ついにやったぞ、マーサー教はイカサマだとバスターが堂々と宣言して人間の大半がそれを聞いた、感情移入の全体験がイカサマだったんだ」ロイは不思議そうに蜘蛛を眺めた。「歩こうとしないのよ」と、アームガード。ロイはマッチの火を蜘蛛に近ずけると、弱々しい足どりで逃げ始めた。イジドアは静かになっていった。「彼は気が動転してるのよ」と、プリス「エンパシーボックスを持ってたんですもの」とロイが言った「人間はみんな繋がっている、今になって疑問を持ち始めたんだろうがね」「幻滅を味わった人間が大勢いるでしょうね」プリスが言った「私達は何ヶ月も前からこれを待ちわびていたの、だってバスターは私達の仲間だもの」「バスターはアンドロイドなの」とアームガードが説明した「それを誰も知らなかった、人間の方ではね」プリスがまた一本蜘蛛の足を切り落とした。イジドアは蜘蛛を取り上げ流しへ持って行き水に溺れさせた。心の中で希望が薄れていった。「何もかも変わったのさ、ことマーサー教に関する限りは」ロイが言った「マーサー教はまだ終わりじゃないよ」イジドアは言った、イジドアは気分が悪くなった、椅子の足が曲がりバラバラになりカップがひび割れそれを元に戻そうとした。「彼、何をしているのかしら」手当たり次第物を壊してるわ、イジドアおよしなさい」「ぼくがやってるんじゃない」イジドアは床が崩れた窪みに、いくつかの動物の姿を見た。カラスの頭、サルのミイラ化した手、まだ生きているロバに近づくとカラスが舞い降りてロバの目玉をついばんでしまった。時の終末の直前で、此処から抜け出す方法が思い出せればいいのに、上を見ても何の手掛かりも無い、マーサーと声に出して呼んだ。僕は又、此処に落ちてしまった、そして今度は貴方もいない。足元を見るとさっきの蜘蛛がヨチヨチと歩いていた。時間が逆戻りを始めたぞと思った。マーサーの存在を感じ声に出して叫んだ「マーサー」「あの空は書き割りなんですか?」「そうだ」「それはあまりにも君が近すぎるからだ、アンドロイドの様に距離を置かなくては見えん」「連中が貴方をペテン師呼ばわりしたのもその為ですか?」「わしはまさにペテン師さ、あの調査に嘘は無い。連中は見事な調査をやってのけた、それなのに何故何ひとつ変わらんのか、連中にはおそらくそれが理解出来まい、何故ならそれはまだ君がここにおり、わしがまだいるからじゃ」「忘れないうちにこれを渡しておこう」マーサーは指を広げその中にはさっきの蜘蛛がいた、あしはすっかり生え揃っていた「ありがとう」イジドアは蜘蛛を受け取った、言葉を続けようとした時けたたましく警報ベルが鳴った。ロイ ベイティーが怒鳴った。「バウンティー ハンターがやって来たぞ、明かりを消せ、そいつを共感ボックスから引き離すんだ、玄関へ行かせろ、早く引き離せったら!」
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「よく聞いてJ,Rイジドア」アームガードが耳もとで囁いた。「ノックがしたら玄関へ行きなさい、あなたの身分証を見せて他には誰も住んでいないと言い、捜査令状を見せてくれと言いなさい」「相手を中に入れないように、バウンティー ハンターを中に入れたら私達に何をするかわかるでしょう」プリスが言った。イジドアは玄関に近づいたが人気は無い。「廊下へ出てみろ」ロイが言った、イジドアは廊下に出た、手にはまだ蜘蛛を握っていた、階段を下り戸外に出た、緑地に蜘蛛を逃がしてやった。これでいいイジドアは立ち上がった。フラッシュライトが雑草を照らした「何をしてたんだ?」ライトを持った男が聞いた「蜘蛛を放してやったんです」「何故君の部屋へ持っていかない?売れば100ドルにおまけがつく」「持って帰ったら又彼女に切り刻まれてしまいます。虫がどうするかを見るために」「アンドロイドのやりそうなこった」男はコートの内ポケットから何かを取り出すとイジドアの前に差し出した。バウンティー ハンターは、中肉中背の普通の男に見えた、丸顔で髭のないすべすべした容姿、役所の事務員の様だ。イジドアの予想したものからは程遠かった。「サンフランシスコ警察捜査官のリックデッカードだ」男は身分証を閉じてポケットにしまった。「奴らは上にいるんだね」「僕がみんなの世話をしてるんです、みんなはグループの生き残りなんです、残りは死にました」「一緒に上に行こう」デッカードはイジドアに銃を突きつけた、それから迷った様に又銃を収めた。「君はマル特だな」「だけど仕事はちゃんとあります、トラックの運転手」「すまないが俺を案内してどの部屋か教えてくれないか?そうすれば時間の手間が省ける」「みんなを殺せば、二度とマーサーの心と通いあえませんよ」「頼む、どの階かだけでも教えてくれ」「いやです」「州法と連邦法のもとに…」と言いかけてやめた、尋問を諦めた「じゃあ、おやすみ」デッカードは通路を辿ってビルの方へ歩き始めた。
ビルに着き、デッカードはフラッシュライトを切った。ホバーカーから持って来た同調装置のスイッチを入れた、この階には反応がない、次の階に微かな信号を嗅ぎ取り、上に向かった。暗がりに人が待ち受けていた「わしはアンドロイドじゃないよマーサーだ」「わしがこのビルにいるのはイジドア君のためじゃ、蜘蛛を持っていたあの特殊者だよ」「俺はもうマーサー教から外されたのか?」「イジドア君は彼の意見を言ったまでで、わしの意見ではない。君が成そうとしてることは、成さねばならん前にも話したはずじゃ」「わしは知らせに来た、彼らの1人は階下から君の背後を狙っている。それが3人のうち最大難物だから最初に処理しなくては」「早くデッカード君、階段にいるぞ」
リックはレーザー銃を構えた、見覚えがある奴が上ってきた「レイチェル」と叫んだ。
「シアトルへ帰れ、俺に干渉するな」そこまで来て、レイチェルとどこか違うことに気づいた「私たちの結びつきを忘れないで」すがるように手を差し伸べて来た。彼は撃った、アンドロイドの体は弾け飛んだ。3人のうちの最大難物、マーサーがそう言ったっけ。マーサーの姿を求めて辺りを見回したが何処にもいなかった。マーサーは俺を助けてくれた、彼の警告がなければやられていただろう。今のが強敵だったんだ、俺は不可能をやってのけたベイティー夫妻は、普通の手段で追い詰めていけるだろう。
廊下を進むと同調装置が反応した、相手の部屋は分かった。戸口をノックした、中で男が答えた「誰だ?」「イジドアだよ」「プリスのテレビでバスター フレンドリーを見たいんだよ」「だ、だ、だからドアを開けてよ、こ、ここは僕の部屋だよ」わざとどもってみせた、暫くするとドアが開いた。薄闇の中に人影が2つあった。「まずテストをしてもらうわよ」「もう遅い」とリック。やにわにドアを中から閉め何かの装置を作動させようとした。「よせ、どうあっても入るぞ」とリックは言うと、ロイ ベイティーにわざと先に撃たせた。「俺を先に撃った事でお前たちの法的権利は無くなった、黙っておれに検査をさせれば良かったんだ、もう手遅れさ」もう一度銃を撃ち狙いが外れると奥へと逃げて行った、電子装置も置き去りだった。「どうしてプリスはあなたを殺せなかったの?」「プリスなんていない、レイチェル ローゼンが入れ代わり立ち代わり出てくるだけだ」「悪いな、ミセスベイティー」言うなりリックは彼女を撃った。奥の部屋でロイ ベイティーが悲痛な叫びをあげた。「お前も彼女を愛していたんだな」リックは言った「俺はレイチェルを愛していた、あのマル特はもう1人のレイチェルを愛していた」彼はロイ ベイティーを撃った。食卓の上にどさっと被さり床へ倒れた。リックはそれに目もくれなかった最後の1人をやっつけたぞ、1日で6人世界記録ものだ、イーランと山羊の所へ帰れる、相当な金も入る生まれて初めて。
特殊者(スペシャル)のミスター イジドアが現れた。「見ない方がいい」リックは言った「もう階段で見ました、プリスを」特殊者は泣いていた。リックは映話を探し、ハリイ ブライアントのオフィスをダイヤルした。
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「よくやった、ゆっくり休養を取ってくれ、そっちへは死体収容のパトカーを出す」映話を切った「アンドロイド達は間抜けだ」特殊者に言った「ロイベイティーは俺と君の区別もつかなかった。この部屋は警察がかたずける、それまでは他の部屋へ移っていたらどうだ」「僕はこのビルを出ます、もっとたくさんの人がいる街の中に引っ越します」「俺の住んでるビルにも空きがあるよ」「あなたの側には住みたくありません」「どこか他所か他の部屋へ移るんだな 、この部屋だけはよせ」特殊者は途方にくれ、口ごもり、リックを残して、とぼとぼと部屋を出て行った。まったくなんて仕事だ、俺の行くところには古代の呪いが付きまとってくる、まあとにかく家に帰ろう、イーランといればそれを忘れられるかもしれない。
リックはビルの屋上でイーランに迎えられた。イーランは今までに見た事がないくらい取り乱していた「やっと仕事が済んだよ、ブライアントに頼んで配置換えをー」「あなたに話すことがあるの。山羊が死んだわ」どういう訳か驚かなかった、余計に気が滅入っただけだった。「90日以内で病気になった場合保証があったはずだ」「それが病気じゃないの、誰かがー」「誰かが檻から出して屋上の端まで引っ張って行ったのよ」「それで突き落としたのか?」「ええ」「君はその相手を見た?」「はっきりとその女を見たわ」「若い小柄な女、黒い髪と大きな黒い目をした痩せっぽちの女、あたし達に見られても隠れようともしない、どうだっていいみたいに」「彼女にはどうだっていいんだ、レイチェルは君に見つかるぐらいなんとも思ってやしない、わざと見て欲しかったんだろう、誰の仕業か俺に分かるようにな」リックは妻にキスをした。「それからずっとここで待っててくれたのか?」「もうあれから半時間もたったんだわ」イーランは彼にキスを返した「恐ろしいことね無益な殺生」「無益じゃないさ、あの女なりの理由があったんだろう」リックはホバーカーに向き直り運転席に座った。「私と一緒にいてくれないの?さっきとてもショックなニュースをやっていたの、マーサーはペテンだと暴露されたのよ、真実だと思う?」「何もかも真実さ、これまでに人間の考えた何もかもが真実なんだ」「あなた大丈夫?」「大丈夫だよ」

答えながら考えたーこれから俺は死にに行
このふたつの言葉はどっちも真実なんだぜ。彼は車のドアを閉め、イーランに手を振ると、夜の空へ飛び立った。
むかしならここで星が見えたろうに、と彼は思った。何十年もむかしなら。だが、いま見えるのは灰だけだ。もう何十年ものあいだ、すくなくとも地球上では、だれも星を見たものはない。たぶん、おれの行くところでは星が見えるかもしれない— 速度と高度を上げはじめたホバーカーの中で、彼はそう考えた。車はサンフランシスコをあとにし、北にある無人の荒野をめざしていた。どんな生き物も足を向けない場所、死期がせまったことを感じない かぎ り、
足を向けない場所へと。




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家ほどもある大きな岩が転がって来た末に、隣りあってにょきにょき立っている、なんという奇妙な土地を俺は死に場所に選んでしまったんだろう。今ならデイブ ホールデンは俺をなんと言うだろう、24時間で6人のネクサス6型を処理した男は空前絶後だろう、そうだデイブの奴に映話をかけよう。病院に映話をかけデイブ ホールデンの名を交換手に告げると、ホールデンはここしばらく映話に出られる容態にないと断られる、リックは映話を切った。デイブは完全にお釈迦だなと思った、俺もやられなかったのが不思議なくらいだ、こっちの動きが速かったからか、やはりハリイ ブライアントが正しかったんだ。車内が冷えて来たのでリックは外に出た。リックは山腹を登り続け、一歩ごとにのしかかる重みが増すのを感じた。暑い。さっきと打って変わった暑さ、それと空腹だった。俺は何か曖昧な方法でアンドロイドを殺したことでか?レイチェルに山羊を殺されたことでか?それは分からなかったが幻覚に似た帳が心を包み始めた。気がつくと断崖から落下するところだった。その瞬間最初の石ころが鼠蹊部に命中した。再び登坂を始める。「マーサー」彼は言った」動かない影を前方に見たのだ「ウィルバー マーサー!あんたなのか?」ちくしょう、と彼は思った。あれは俺の影じゃないか、ここにいちゃダメだこの山を降りよう、と彼は思った。
来た道を戻りホバーカーが行く手に見えた、ドアを開け中に体を押し込んだ。誰が石を投げたんだ。あそこで俺は1人だったのに、なんでこんな所に来たんだろう、来るんじゃなかった。疲れきって帰りの飛行も出来ない。もしデイブと話せたら俺もしゃんとしたはずだ、脱走アンドロイドはまた現れるだろう俺のキャリアは終わりじゃない、たぶんそれだったんだなと彼は思った。、きっとそれが心配だったんだ。
腕時計を見た。九時半。映話をとってハリイブライアントを呼び出した「警視は留守です、ホバーカーで出掛けましたが、呼んでも返事がありません、車を離れていると思います」「外出先は言わなかったのか?」「あなたが昨夜処理したアンドロイドの件です」「じゃあ俺の秘書を頼む」アン マースティンが映話に出た「ブライアント警視があなたを探していましたよ、それと奥様がとても心配していましたよ、それとデッカードさんどうなさったんですか、ひどい顔色ですわよ頬から血が出てますわ」たぶんさっきの投石だろう「まるでウィルバー マーサーそっくり」そうなんだ、俺がウィルバー マーサーなんだ、俺は永久に彼と融合しちまった、だからここで融合が消えるのを待ってるのさ、オレゴン州境の近くで。「今あなたに必要なのは休息です、お宅に帰ってお休み下さい、それと奥様にすぐに連絡なさって下さい、2人ともひどいやつれようですもの」「レイチェルは思い違いをしていた、俺は奴らを処理するのに何の悩みも持たなかった、あのマル特も間違っていた俺が二度とマーサーと融合出来なくなると言ったがね、ただ1人正しかったのはマーサーだ」「不思議なんだよ、俺は自分がマーサーになって石を投げつけられているというリアルな幻覚を見た、それは共感ボックスのそれじゃなかった共感ボックスを使った時にはマーサーと一緒にいるという感覚がある、違いは誰もいなかった事だ俺は1人だった」「でもマーサーはまやかしだと言ったという話ですわ」「マーサーはまやかしじゃない」現実がまやかしじゃないかぎり「俺はマーサーである事をやめられそうにないよ、始まったらもう後戻りは出来ないんだ」俺はまたあの山を登らねばならないのだろうか?マーサーのように…永遠の中に閉じ込められて。
22
リックは車の外に生き物を見た。あれは絶滅種だ、よれよれのシドニー社のカタログを急いで取り出した。"ヒキガエル"だった。ウィルバー マーサーに一番大切だった動物。容れ物を見つけてヒキガエルのそばへ行き捕まえて箱の中にいれた。箱を隣の座席に置きイーランに映話をしようとするが、やめて驚かせてやろうと、そのままサンフランシスコの自宅に向かった。
イーランは何もする気になれないほど疲れていた、ここにリックがいてくれたらと彼女は思った。玄関のドアにノックが響いた「ただいま」とリックが言った「よかったわ、お帰りなさい」「見せるものがある」昨夜ホバーカーで出掛けた後夫の身に何か起きたらしい、そして夫は箱と一緒に帰ってきた、その箱の中には夫の身に起きた全ての事がしまわれているのだろう。「俺はこれから眠るよ」「その箱には何が入っているの?」「ヒキガエルさ」「見せてくれる?」「うわっ」と彼女は言った。何となく気味が悪かった「ヒキガエルは絶滅したと思っていたわ」イーランはある事を発見していた、ヒキガエルの腹に制御パネルを見つけその蓋をパチンと開いた。
リックの顔に失望が広がった。「どうしてあんな荒地にあったんだ、誰かがあそこへ持って行ったのか、訳がわからん」「あなたに教えるべきじゃなかったんだわ」「いや、わかって嬉しいよ」「マーサーが、ピンボケにやった蜘蛛、あれもきっとそうだったんだ、だがそんな事はどうでもいい、電気動物にも生命はある。たとえわずかな命でも」「これで仕事はすんだ、そうだね?」まるで、彼女なら知っているはずだと言いたげにリックは返事を待った。「済んだわ」とイーランは答えた。「一旦始めたらストップが効かなくなった、最後のベイティー夫妻の事が終わり突然何もする事が無くなり、その後に何も残ってないと考えると俺はストップできなくなった」「あなたがここへ帰ってきてくれてとてもうれしいのよ」イーランはくちづけするとリックは明るい表情になった「君は俺が間違った事をしたと思うかい?」「いいえ」「マーサーは、それは間違った事だがとにかくやるしかないと俺に言った。全く妙な話さ、時には間違った事をすることがいい場合もある」「それは私達の受けた呪いよ」「マーサーがよく話すわ」「マーサーが16歳のときに彼を見つけた殺し屋たちよ、彼らはマーサーに時間を逆行させ、死んだものを蘇らせてはいけないと教えたわ。だからマーサーは生命と一緒に動きながら死へ近づく事だけなの、石を投げているのは彼らよ、まだマーサーを追いかけているんだわ、そして事実上私達みんなをね、お願いだからベッドで休んでくれる」リックはベッドに横になるとすぐに寝てしまった。イーランは〈電気動物飼育用品店〉に電話し、ヒキガエルに必要な餌などを頼んだ。主人が寝ているので配達にしてほしい、とお願いしその他に勧められた必要なものを注文した。「完全に動いてもらいたいから。うちの主人はそれに夢中なのよ」彼女は住所を教えて映話を切った。それからずっとよくなった気分で今度は自分の為に熱いブラックコーヒーを入れる事にした。

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