【ペドロ パラモ】ファン ルルフォ 感想その1

コマラにやってきたのは、ペドロパラモとかいうおれの親父がここに住んでいると聞いたからだ。おふくろがそれを教えてくれた。おふくろが死んだらきっと会いにいくと約束して、 そのしるしに両手を握りしめた。おふくろは息をひきとろうとしていた。
だから何でも約束してやりたい気持ちだった。「きっと会いに行っておくれよ」とおふくろはおれにすがるように言った。「父さんはこういう名前だよ。おまえに会えばきっと喜ぶよ」 するとおれは、 ああそうするよ、と言うよりほかはなかった。

だがその約束を果たす気は無かったがほんのついこの間、気が変わりペドロパラモという人間が期待となり会いに行くことに決めたコマラに来たのはその為なのだ。
八月の暑い中途中で会ったロバ追いにコマラの場所を聞き一緒に向かった、コマラには誰も来ないからお祭り騒ぎになるだろうとロバ追いは言った。何故コマラに来たか聞かれ親父に会いに来たと「親父さんの名前は?」「ペドロ パラモという名前しか知らないんだ」「なるほど」
しばらくしてロバ追いは言った、「俺もペドロ パラモの息子なんだ」
「ペドロ パラモはどんな人間だい?」「ありゃ憎しみそのものだ」と男は答えた。
ロバ追いは立ち止まって言った「ここから見える広大な土地は全てあの男のものだ俺たちはペドロ パラモの息子に違いないが産んでくれた母親連中はゴザの上っていう始末だ」
町に近づくと誰もいない聞いてみると本当に誰も住んでいないという、「じゃあペドロ パラモはどこにいるんだ?」「ペドロ パラモはとっくの昔に死んでいるのさ」
どの家もからの街を歩いているとショールをかぶった女を見かけた。幽霊かと思ったがちゃんと人間だった。「エドゥビヘスの奥さんの家はどこだい?」「あそこの橋のたもとの家だよ」

俺はコマラに残った。ロバ追いはそのまま行ってしまったがこう教えてくれた。「この先に俺の家がある、来るんなら歓迎するよ。ま 旦那がここに残るっていうならそれもいいだろうひょっとしたら誰か生きてる人間に会うかもしれないしな」「どこか泊まれる所はないかな?」「エドゥビヘスを探しな、まだ生きてたらの話だがね俺の紹介だって言えばいい」「それであんたの名前は?」「アブンディオ」姓の方は離れていて聞き取れなかった。

「エドゥビヘス ティアダだよ お入り」
俺が来るのを待っているようだった。「それであんたあの人の息子ってわけだね」「誰のだって?」「ドロリータスさ」「そうだが何で知っているんだい?」「あんたが来るってあの人が知らせてくれたのさ、それも今日来るってね」誰が知らせたんだって?俺のお袋だって?」「そうさ」「おふくろはとっくに死んじまったよ」「一人で寂しかっただろうよ、私達は大の仲良しだった私の事言ってなかったのかい?」「一度も」「私は何度も言ったわドロレスの子は私の子供になるはずだったんだって」
俺はこの女は気が狂ってるんじゃないかと思った。

便所の中でスサナの事を考えていた、母親がいつまでトイレに入ってるんだと注意する、おばあちゃんの所へ行ってトウモロコシ粒もぎの手伝いをしてこいと言われる。
手伝いに行くともう終わったからココア挽きをやってくれと言われたがココア挽きの機械が壊れていたから買いに行くことに、家から出る間際「ペドロ」と呼び止められるが彼には声は届かなかった、もうだいぶ遠くへ歩いていたのだ。

「そうなのさ私はもう少しであなたの母親になる所だったんだよ」「何も聞いてないよ、あんたの事を知ったのはアブンディオというロバ追いに教えてもらったからだ」「まだ私を覚えていたんだ客をうちに連れて来たらお金をあげていたんだ。でもいつの日か顔の近くで爆竹が爆発して耳が聞こえなくなりそれ以来あまり話もしなくなってしまったんだよ」「俺の言ってる男はちゃんと聞こえていたけどな」「じゃあ別人さアブンディオはもう死んでいるしね」「そうだろうな」
話に耳を傾けながら前の女を見た。顔は血の気がなく手はしなびていた、目は隠れて見えず首から聖母マリアのメダルがぶら下がり、罪人の避難所と書いた札がついていた。

「あんたに話そうとしてた話だけど ドロレスはペドロ パラモに夜家に来るように誘われていた日
有名な占い師に今日は月が荒れているから男には指一本触れさせてはならないと言われ 代わりにわたしにペドロ パラモの所へ行ってくれと頼んだんだ もちろん断ったが ドロレスはどうしてもというので渋々引き受けた でも本当はわたしもペドロ パラモのことを好きだったから本当は嬉しくて行ったんだ でもその日彼は前の日のどんちゃん騒ぎで疲れて一晩中いびきをかいて寝ていたよ 結局は何もなかった」「その次の年にドロレスとの子供ができたんだけど もしその日にわたしがしていたらあなたはわたしの子供だったのかもしれなかったんだよ」「きっとあなたの母さんは恥ずかしくてこの話をしたくなかったのかもしれないね」

あの人は結婚してペドロ パラモに受けたひどい扱いを恨んでいた。飲み物が冷めていれば怒鳴りつけたり夜明け前から食事の用意をさせられたりした。ある日耐えられなくなり姉さんの所に帰りたいと言うと遠慮しないでさっさと出て行けと言われ出て行きそれ以来戻ることはなかった。
いろんな目にあったよと俺は言った、ヘルトゥディスおばさんの所に厄介になったが何で亭主の元に戻らないのかとおふくろによく言っていたよ。その女は俺の話に耳を傾けていると思ったがふと見るとふと見ると遠くを見ていた。やがて口を開き「もう休んだら」

「どうかしたのか?エドゥビヘス」女は眠りから目を覚ましたように首を振った。「メディアルナを走るミゲルパラモの馬だよ」「メディアルナには誰か住んでいるのかい」「誰も住んじゃいないよ」「というと?」「馬が主人を探して行ったり来たりいつも走り回っているだけさ」「馬の走る音なんか聞こえない」「事の起こりはミゲルパラモだった、恋人に会いにコントラの街に行ったきり死んで戻ってこなかった、その時の馬が今も走っている、今も聞こえるだろう?」「何も聞こえないよ」
「さっきミゲルパラモが帰らなかったって言ったけどあの晩馬が通り過ぎたと思ったら部屋のドアを叩く音がして見に行くとミゲルパラモのだった、どうしたのと聞くとあの子に会いに行くと霧や煙が立ち込めてコントラの街がなかった、コマラの連中に話すと頭がおかしいと言われるからあんたに言いに来たと言った」「頭がおかしいんじゃなくて死んじまったんだよミゲル、あの馬はいつかあんたを殺すって言われてただろう」「俺はただ親父が作った石塀を飛び越えただけさ、どこまで行っても煙っててきりがないんだ」「あんたのお父さんは苦しむだろうねかわいそうだよ。さ ミゲルもうお行き安らかに眠っておくれお別れに来てくれてありがとうよ」
夜明け前にメディアルナから召使が来てこう言った「ペドロ様からのお願いでミゲルの若旦那が亡くなったので来て欲しいそうだ」ミゲルをかつぎ込んでだいぶたってるのかい?」30分とたってないこの事がわかったのはミゲル様の馬が一人で帰って来てそわそわしていたからだ」
メディアルナの使いは帰っていった
「あんた死のうめき声聞いたことあるかい?」
「いいや」「その方がいいのさ」

レンテリア神父はくるりと向き直りミサを終いにした「神父様あの人を祝福してやって下さい」「ダメだ あの男は悪人だった」ペドロパラモが近づいて来てそばにひざまずいた。
「せがれを憎んでいるのは承知していますあなたの弟殺しや姪ごさんに乱暴し神父さんにも何度も無礼をし憎まれても仕方のないことかもしれないだけどいまは忘れてもらえませんか、せがれを見捨てないで下さい」彼は一握りの金貨を置いて立ち去った「教会へのお布施です」
神父は祭壇に金貨を備えミゲルを地獄に落としてくれと祈った、それからうずくまり泣き続け終いにこう言った「わかりました主よあなたの勝ちだ」
家に帰り姪ごのアナに今日はミゲルの葬式だったと言うと「今はもう地獄のどん底にいるわね」神父はついわたしは許しを与えてやったのだと言う所だったが言わなかったこれ以上彼女を傷つけることはできなかったから、彼女の腕をとってこう言った「たくさんの悪さをしたあいつを連れて行ってくれた神様に感謝しよう、今天国にいるかもしれないがそれは問題じゃない」
レンテリア神父は眠れなかった、妹のエドゥビヘスを救ってくれと泣きついてきたマリアティアダの顔が頭から離れなかったのだ
「妹はいつも親切だった持ってるものは全部人にやった子供まで産んでやった優しい子だったからそれをいいことに男たちはそれを利用したんだ」「だが自分で命を絶ってしまった、神のみこころに背いたのだ、グレゴリオミサでもやればあるいはな、しかし金がかかる、このままにしておこう神のみこころにすがるしかない」「はい神父さま」どうして許してやらないのか天国や地獄について自分は何を知っているというのだ」

目がさめるとあたりはしんとしていた、扉が左右に開いた「エドゥビヘスかい?」「ちがうわダミアナよ、うちに泊まりにきなよ寝るところがあるから」「ダミアナ シスネロス?メディアルナに住んでいた?赤ん坊の時めんどうを見てくれたダミアナっていう人のことをおふくろに聞いた事がある」「そう私だよ、生まれた時からあんたを知ってるよ」「一緒に行くようるさくて寝れやしない」「ずいぶん昔トリビオ アドルテがここで縛り首にされたからさ、しかしここの扉を開ける鍵なんて無いのによく入れたね」「エドゥビヘスが開けたんだ」「エドゥビヘス ティアダ?」「ああ」「かわいそうなエドゥビヘスまだこの世をさまよっているんだね」

フルゴル セダノはトリビオ アドルテに対して訴訟を起こした「所有地の無断使用のかどで告訴します」二人はエドゥビヘスの酒場にいた、エドゥビヘスに奥の部屋を貸してくれと頼んだ「なあフルゴルさんよあんたの主人の大バカ野郎にはヘドが出るぜ」今でも覚えているがそれがあいつが口にした最後の言葉だった。

ペドロパラモの家のドアを叩いた、あまりにも
待たされたので帰ろうとした時ペドロパラモが現れた「入れよ、フルゴル」二人が会うのは2回目だった1回目はペドロパラモが生まれたばかりの時だったから知っているのはフルゴルだけだった。だから初めて会うのと同じだった。ところがどうだろう対等みたいな口をきくではないか。「座れよフルゴル」「立ってる方がいいのさペドロ」「好きなようにしろだけど〈さん〉をつけるのを忘れるな」奴の親父でさえ俺にそんな口は聞かなかった。
「あの事はうまくいっているのか」「ダメですな何も残っていない家畜も最後の一頭まで打っちまいましたからね」借金がどれくらいあるのか書類を見せてやろうと出し始めた時ペドロパラモの声にさえぎられた「額なんてどうでもいい知りたいのは誰に借金があるかって事だ」
「払う金なんぞありゃしないそれが問題です、あんたの家族が使い果たしたから」
「明日から一つずつ片付けていこうプレシアドの所から始めるぞ借りが一番多いといっていたな」「今は妹のドロレスが持ち主になってるあのエメディオって牧場だからそのドロレスに金を返さなきゃならない」「お前俺の代わりに明日ドロレスに結婚を申し込むんだ俺が首ったけで愛してると伝えてついでにレンテリア神父に式の用意を頼んでくれ」「座らねえか」「座りましょうペドロさんあんたが好きになってきましたよ」

あの小僧どこであんな抜け目のない手を覚えやがったんだろう亡くなったルカスの親父は使い物にならんといっていたのに。

ドロレスを口説き落とすのはわけなかった、目が輝き顔がほころんだ。急すぎるから八日間待ってくれと言われたが強引に明後日に約束して帰った。

ダミアナ シスネロスは俺にいった「ここへ来る途中お葬式の参列者の中から姉のシクスティーナが出てきた姉はあたしが12の時に死んだ一番上の姉だった、だから新しいこだまを聞いても驚いちゃいけないよファン プレシアド」「俺が来るのはおふくろから聞いたのかい」「ちがうよ、そういえば母さんは元気かい」「死んだよあんたにもわかってると思ってたけど」「どうしてわかるのさ」「じゃあどうして俺を探し当てたんだ」「……」「ダミアナあんたは生きてるのかい教えてくれダミアナ」突然自分だけがひっそりとした通りにたたずんでいた「ダミアナ」と俺は叫んだ。

男が横切った「すまないが」と声をかけた「すまないが」と自分の声が帰ってきた。
俺は引き返そうと思ったその時誰かが俺の肩に手をかけた「ここで何をしているんだい」父親を探しているんだ」「ま 入れよ」中に入る天井が半分落ちた家に1組の人男女がいた。
「あんたがた死んでるんじゃないだろうね」
女は微笑み男はじっと俺を見た。二人とも素っ裸だった、「呻きながら戸に頭を打ち付けているのが聞こえたから外に出たらあんたがいたんだ」「今は寝たいだけなんだ、ここで寝させてくれないか」

夜明けが少しずつ俺の記憶を消していった、それまで耳にしていた声には音がなかったことに気づいた夢で聞く言葉のように。
目が覚めた時真昼の太陽が輝いていた。「旦那はどこに行ったんだい」「兄さんなんだ、野生の子牛を探しに行ったよ」「ドロレス プレシアドを知らないか」「ドニスが知っているかもしれない」ドニスが帰ってきた「もといた所に帰りたいんだ、明るいうちに出かけるよ」「明日まで待ちなどの道も荒れてる明日俺が道を教えてやるよ」

夜になり男と女が出て行くと歳をとった女が部屋に入ってきて皮の箱を引っ張り出し探った後忍び足で出て行った男と女が帰ってきてそのことを話すとそうやって人の気を引こうとしている呪い師だと言われた。

男は子牛を狩りに出て行った「きっともう帰ってこないかもしれないみんなそうやって帰ってこなくなった、食べと物があるから食べなあんたのために都合してきたのさ姉さんがシーツと引き換えに持ってきてくれたんだよあんたを驚かしたのは姉さんだったんだよ」

聞こえるかいと小さな声で聞いてみた、するとおふくろの声が帰ってきた「どこにいるんだい」「母さんの町で母さんの知ってる連中と一緒だよ」「見えないね」

「ドニスは戻らないよ 誰か代わりの人が来たら出て行く機会をうかがっていたからね」

真夜中に息苦しくて目が覚めた女の体はぬかるみのなかに溶けるように崩れていくのだった、そのうち空気がなくなり苦しくなってきた、空気が欲しくて外に出たが暑苦しさは依然として体にまといついて離れなかった、というのも空気がどこにも無かったからだ気だるい淀んだ闇しかなかった。

吐いたり吸ったりしているうちに空気がだんだん薄れていった、とうとうかすかになった息まで指の間から漏れて永久になくなってしまった。泡立つ雲のようなものが頭上で渦巻くのを見た、やがてその泡に包まれてもやもやした物の中に溶け込んでいった、最後に見たのはそれだった。

「そんならファン プレシアドさんよ、お前さんは息が詰まって死んじまったっていうのかね、このわしがお前さんを見つけたのさそばにドニスがいて二人で引っ張ってきて埋めてやったのさ」「そういうことになるなドロテア、溶けていく女の家から出ると広場からざわめきが聞こえるから行ってみるとあたしたちのために神に祈ってくれよという声が聞こえた、それを聞いた時魂が凍ったそしてあんたたちは俺を見つけたのさ」「自分の土地を離れなきゃよかったのさ、なんでここに来たんだ」「ペドロパラモを探しに来たのさ」「もう怖がらなくていいよ楽しいことを考えるようにした方がいいずっとこの土の中にいなくちゃならんのだからね」

誰かが戸を叩いた フルゴル セダノだった ミゲルが殺されたと報告を受けた ペドロパラモは唖然としたが、明日馬を殺せ、それから泣いている女たちに俺のせがれくらいで大騒ぎするなと言ってくれとフルゴルに伝えた。

レンテリア神父はミゲルの死はペドロが親分風を吹かせ始めた時から始まっていたと思っていたミゲルの母がお産の時に亡くなり引き取るようにペドロの元に連れて行ったのは神父だったのだ。

墓の中で独り言を言う女の声が聞こえるのでドロテアに聞くとスサナという女でペドロパラモの最期の女房でペドロはスサナの事がとても好きだったらしい。

ペドロはスサナを手に入れたくていつも手紙を書いていたがスサナの父にいつも断られていたしかし世の中が物騒になるに連れてスサナの父はついに娘を連れてペドロの元に来ることになったペドロはこれを三十年も待っていて泣いて喜んだ。
スサナの父はペドロの家から鉱山まで働きに行きたいと行ったので鉱山に行っている時に始末する命令をフルゴルに伝えるスサナの父は殺され、スサナの元に幽霊として現れた。

どもりと呼ばれた男がメデイアルナにペドロパラモに会いたいとやって来た。
フルゴルが殺された、ペドロの土地をもらいに来たという革命家達に殺された

フルゴルの事はそんなに気にはならなかったいずれにしても棺桶に片足を突っ込んでいるのと変わりは無かったからだ、それよりスサナの事が気になった部屋に閉じこもり寝たきりで眠っているのか起きているのかすら分からなかった彼女がこの家に来てからずっとこうだった彼女を苦しめているのが何なのか知りたかった。

日が陰る頃革命家の男達が現れた、ペドロパラモは夕食を振る舞った後ろにはティルクアテが隠れて様子を伺っていた、金と三百人の人手を渡して協力しようとペドロは言うと約束を破ったらただじゃおかないと言い革命家達は喜んで帰って行った。
ティルクアテに金と人を預け奴らに合流しろと命令した「後はどうすればいいかお前にはわかってるだろう?」

墓の中のファン プレシアドは女の声を聞いた。
女はある日男の帰りが遅かった晩誰かが足を温めてくれていると思ったら朝足に新聞紙が巻かれていた。起きると人が来て男が死んだと知らせた。女の入っている棺が壊れる音が聞こえた。

ティルクアテはビヤ派の人間と渡り合ってやられたとの噂が、詳しい事は分からなかった。

ダマシオが戻って来るとビヤ派と揉めたが今は組んでいると言うしかし金がなくなったのでペドロパラモに借りに来たもう貸す金はないからコントラの街を襲えと言って返すと男達が一人残らずいなくなっているのに気がついた、後に残ったのは彼だけだった。

スサナは暗いのが怖いために三年間部屋の明かりを点けっぱなしにしていたが、明かりが消えていて死んだんじゃないかと町で噂になった。

レンテリア神父はスサナが死を迎え入れる準備が出来るようにスサナの元へ来ていた、自分のいう祈りをくり返させた。周りには臨終を見届ける者達がいた。

「わしはスサナの死ぬのを見たんだよ」
「今なんて行った?ドロテア」
「スサナが死ぬのを見たって言ったんだ」

明け方になって教会の大鐘がなった、三日間なり続きみんなの耳がおかしくなった。「スサナが死んだんだとさ」鐘に誘われて方々から人が集まり祭日と変わらない賑わいだった。

ティルクアテは相変わらずいろんな連中と手を組んで争いをしていた。

ロバ追いのアブンディオ マルティネスは妻が死にお金が必要なので酒場で酒をあおりふらふらの状態でペドロパラモの元へ向かった。死んだ女房を埋めたいから恵んでくれと言い ペドロパラモを刺し殺した。ペドロパラモは「これが俺の死だ」と呟いた「とにかく新たな夜が来なければいいと思った」

肩を叩かれたので、体を起こして、身構えた。
「あたしですよ、旦那さん」とダミアナが言った。「昼ごはんを持って来ましょうか?」
ペドロパラモは答えた。
「あっちへ行くさ。いま 行くよ」
ダミアナ・シスネロスの腕につかまって歩こうとしたが、 二、三歩進んだところで倒れた。心の中で何かを哀願するようだったが、ひと言もその口からは洩れてこなかった。乾いた音をたてて地面にぶつかると、石ころの山のように崩れていった。