【別荘】第二部 ホセ ドノソ 感想

【別荘】 第二部 ホセ ドノソ 感想

第二部 帰還
第八章 騎馬行進
1
大人達のハイキングは期待を遥かに上回る夢のような体験だった、しかし日が暮れると皆子供達が心配で不安になったテレシオは召使いが歌を口ずさんでいるのがこの不安の原因と決めつけ庭師の助手と言うファンペレスという男を馬車から降ろす。金を与え彼をおいていった。
2
いつも小休止する礼拝堂の廃墟にたどり着き夕食をとる事にする。一家の領地のため人はいないはずが気配を感じるので、テレシオは様子を見に行くが数分経っても戻ってこない。馬車で礼拝堂の中に入っていくとテレシオの怒り狂った声が聞こえた。中にいたのはカシルダだった子供の人形を抱いていて自分の子供だという。
エルモへネスは人形を取り上げ井戸の中に捨てる。「私の息子をどうしたの?」と尋ねるカシルダ、今やカシルダの気が狂っていることは誰の目にも明らかだった。
ファビオがカシルダと自分はここで一年も飢えをしのいできたという。大人達は今朝出発したばかりなのにおかしなことを言うなと思う。ベレニセ(大人)は「侯爵夫人は5時に出発した」の遊びでは一時間を一年と計算することがよくあるという。大人達はこれもたわいのない遊びの一部だと笑い飛ばす。カシルダはこれ以上自分達に作り話を吹き込もうとしても無駄だと告げる、エルモへネスはなにも変わっていない、変わったのだとしたらそれは人食い人種の仕業
だという、カシルダは「人食い人種なんていない自分達の悪徳を正当化するためあんた達がでっちあげた話だ」と言ったエルモへネスとリディアがカシルダ達をとらえ押さえつけた。
ファビオは12時間前に金を盗んだことを話した、原住民と一緒に金を運んでいたがカシルダとファビオが疲れて寝ている間に金とイヒニオとマルビナが原住民とともにいなくなっていた。ファビオとカシルダを問い詰め人食い人種が攻撃の準備を始めていること、別荘の子供達も人肉を食べている事、無知な大衆が無計画な反乱を起こしている事を突き止めると2人を箱馬車に入れてカーテンを閉めた、その後の2人の消息を知るものはいない。
ファビオとカシルダが語った話が本当かどうか、エルモへネスは別荘にはすぐに戻らずに仲介者を立てようと考える。問題は原住民が銀山の仕事を放棄して武装を始めベントゥーラ一族の領地を再征服しようと試みる事。金の生産が終われば一族のこれまでの生活も全て終わりになってしまう。まず召使い達に別荘に向かわせ自分達は首都へ向かいマルビナとイヒニオに金の売却をさせない事と考える。
ファンペレスが提案する、ご主人達には手を汚させない自分達使用人が別荘へ戻り子供達を守り人喰い人種を一網打尽にするので武器を渡してくれという。お前の役割は?とエルモへネスが聞くとファンペレスはエルモへネスに何か耳打ちした。エルモへネスはペレスの言う通り全ての元凶はアドリアノだと思ったしかしなぜペレスがアドリアノに恨みがあるのか疑問に思った。ペレスはアドリアノに認めてもらいたく毎年召使いとして働きに来ていたが無視され一向に気づいてもらえないため人格を否定された気分になっていた。しかしアドリアノは塔に幽閉され手の届かない所に行ってしまった、あの男を排除しない限り自分が自分になる事はできないと考えていた。
ファンペレスは戦いを始めるにはたしょうのぎせいもやむなしと言う。何かあったとしても今の別荘を引き払いハイキングで行った楽園に新しく建てればいいと言うと一族の賛同を得た、そう言えば午後に誰かが同じ事を言っていた事を思い出す。
あそこに別荘を建てれば悪い噂は全て根も葉もないデマとして片付けられるだろう。
3
執事達の部隊は最高級の馬、武器、食料を持ち出発した。今や全ては執事達の手中にあった。エルモへネスは身分の低い庭師を引き連れ礼拝堂から現れた。テレンシオ オレガリオ アンセルモ シルベストレは先頭の馬車に乗り込むエルモへネスを助けていた庭師の男の顔に重要な意味があった事に気付いた。
第9章 襲撃
1
ベントゥーラ一族が、結婚したばかりのアドリアノ ゴマラを始めて別荘に招待した時石段の横にいつも立ち続けている男を不思議におもい家族にたずねた「コローの風景画のようにあそこに赤い点があると緑の庭が引き立つから」だという、人間を飾り物のひとつに変えるこの一族を軽蔑したものか称賛したものかアドリアノにはわからなかった。
この事を理解できないアドリアノは一族から危険人物とみられていた。
ファンペレスは馬車の中でエルモへネスが井戸に捨てた子供は人形ではなく本当の子供だったと言った。1年たっているが1日と嘘をつきそうする事で使用人に払う給料も少なくできるからだという。一年たてば子供達も堕落しており収拾のつかない無法地帯と化しているだろう人喰い人種もデマではなく実際に存在する危険な存在である、今まで日の目を見なかった使用人だが今こそ武器をとって戦う時だと言い士気を上げた。
執事達は別荘の前の集落に近づき彼らを観察した。子供は皆原住民と同じ格好をしていた。子供はいまは原住民の言う事を聞くしかないと思っていた。ファンペレスは全ての子供達を区別して名前を覚えており性格まで全て分析していた。ファン ボスコは危険人物、原住民は普通に言葉を話せるが普段はわからないふりをしている。フベナルの持つ食料庫の鍵についてメラニアとファン ボスコは鍵を取り合って喧嘩していた。ウェンセンスラオは沈黙を貫き、マウロはアドリアノに熱を上げおかしくなっていた。
子供達が喧嘩をしている最中、ファンペレスは銃を発砲した、その瞬間隠れていた執事達は集落に突進した、驚くほど簡単に原住民を拘束した。子供達はメラニアとフベナルを覗いて使用人達の腕に飛び込みキスの嵐を浴びせた。メラニアとフベナルは救世主となった使用人達はこの後どんな要求をしたくるのか不安になっていた。
使用人達はここから急いで別荘の奪還に向かうと説明した。するとメラニアは使用人が先頭の車両に乗るのは許されない自分達を先頭に乗せろと言った。彼らを先頭に乗せ銃を持たせ別荘に向かった。
2
別荘は今や全く違う様相を呈していた。
原住民と子供達が農作業をしていたが執事達の一団に気付きみな武器をとっていた。アドリアノが彼らに叩き込んだのは、遅かれ早かれ一族の大人達がやってくるので体を張って戦わなければならない事を教え込んでいた。使用人達は別荘に踏み込んだ原住民達を次々となぎ倒しながら前進した、マウロとウェンセンスラオも原住民側で戦っていた。原住民の部隊は貧弱で敵ではなかった、ウェンセンスラオもとらえられた、父が危険人物とあげるファンペレスの事は知っていた。ファンペレスは弟のアガピートにどこかに閉じ込め見はれと命令した。ファンペレスは30名の兵士を従えアドリアノの塔に向かった。実際に現れたアドリアノは人間的なものへの信頼と平和を求める心に貫かれたものが持つ凄まじい神秘が浮き上がっていた。しかし部下達の銃弾で一瞬で蜂の巣になった。マウロと原住民達にも止めを刺した。
3
アドリアノ ゴマラの死は一瞬にして別荘全体に広まり銃声もほとんど聞こえなくなった。
ウェンセンスラオはどこかに逃げ出しており姿をくらませた。執事はメラニアの部屋をノックし何点か確認したい事があると言う。
第10章 執事
1
上の階に閉じこもった集団は下へ降りていく事をせず、いつもの高慢な態度に磨きをかけていた。この一団を構成していたのはメラニアとフベナルだった。使用人達に騒動の後始末をさっさと終わらせ快適に過ごす空間を確保しろと命令した。
柵を元どおりに戻すが銃弾も底をつきそうな今槍を全て戻すと身を守るぶきがなくなるとファンペレスは考え、こっそり槍を何本か隠しておいた。部下達に屋敷をくまなく捜索させたが危険の兆候は一切見つからなかった。外を見ると2人組が逃げていくように見えたが妄想なのか現実なのかわからなかった。
いつまでたってもウェンセンスラオとアガピートの居どころがつかめず原住民が2人の逃亡を助けているとみられファンペレスに痛めつけられた。ベントゥーラ一族が新しい使用人を連れてそろそろ帰ってくると噂された。1年分の給料を1日分でごまかしているのだから一戦交えないわけにはいかなかった。
ウェンセンスラオが別荘に不穏な噂を流しているとファンペレスは読んでいた。これを突き止め2人を捕まえたいと思っていた、そうすればウェンセンスラオの伝説に対して下級使用人の自分が黒い伝説として恐怖の的になれると思った。
2
執事はベントゥーラ一族がハイキングに出発してからこの別荘には時間の経過は存在しないのだと言う。これ以降時の経過について話す事は反逆罪とされ、屋敷の窓を全て閉め光も影もなく昼と夜の区別もなくしご主人様達が帰るまで歴史を止めろと命令した。
そしてテーブルには常に食事を用意しておき子供達に時間という概念をもてないようにしようと考えた。しかし料理長はそんな事より料理が底をつきそうな今いざという時のために人肉料理のレシピを人喰い人種に聞いておきたいと告げると執事は猛烈に怒りツボを投げまくって怒った。
3
全て閉め切った暗闇の中で子供達を生活させ四六時中監視した。子供達も原住民の話を持ち出すのは危険と判断しその話題には一切触れずやがて記憶から消し去った。
侯爵夫人(メラニア)は5度目の再婚を望んでいてコスメ(15)♂に目をつけた。コスメを呼んで料理をご馳走しその話を持ちかけるとコスメは自由が欲しいからと断るすると自分につれなくした仕返しにこの料理は人肉でそれを食べさせたとコスメに告げる。上の階に住んでいないものはこれまでも毎日人肉を食べさせていたと言ったコスメは嘔吐し図書館に逃げるとアラベラが中に入れてくれた。「侯爵夫人は5時に出発した」に参加してないものはみんな人肉を食べさせられていたとアラベラに伝えた、震え上がったアラベラは他の子供達にも伝えた。それ以降子供達は絶えず吐き気に悩まされ痩せ細り精神を病んでいった。数日後コスメは姿を消した。
その夜4人の男がアラベラの手足を縛り何処かへ連れ去った少なくともそれがアラベラがいなくなった事のいとこ達の憶測だった。
この後変わり果てた姿で集落の小屋の丸太に縛られた状態で目を覚ました。拷問され他人の力を借りなければ歩けなくなっていた視覚も完全に失い二度と本も読めない事に気付いた。
この事実をまえにアラベラの怨念はむっくりと起き上がり激しい憎悪に包まれた彼女は自分がこのまま生き続けられると確信した。
第11章 荒野
1
使用人達の住んでいた暗闇の地下は寝とまりのためだけに作られたのではなくこの別荘の地下には主人達にも想像しえない時間と空間の限界をはるかに凌駕する歴史と広がりがあった。
先祖がこの地に屋敷を建てたのは塩山の上に居を立て当時通貨の代わりになった塩の流通を一手に握ろうとしたためである。その後通貨は金に代わり塩山の価値が無くなると地下のトンネルや洞窟の事は次第に忘れられ年数が経ちその後のもの達はなぜこんなところに別荘が建っているのかも知らないようになった。
地下は使用人のすみかとして利用されるようになるがその陰鬱な場所に住むことを皆が拒んだ、指揮官達は働きぶりによって地上で生活できることを約束し小部屋の奥につながる地下通路を全て塞いだ。トンネルを塞ぐのに問題になったのは、打ち捨てられた隠花植物園を残すか塞いでしまうかだった。料理人は食べることも可能なこの植物園を塞ぐ事に反対した。隠花植物は人肉の味の様に偽装することができそれを子供達に人肉だと吹き込んで食べさせ吐き気を催させ子供達の罰に使えるからだった。
アガピートとウェンセンスラオは地下の暗闇で生活していた。傷を負ったアガピートは動く事が出来ない。アマデオが毎日パンを差し入れてくれていた。地下の封鎖は今日始まる。
コスメは顔の半分と片目を硫酸で焼かれていた、ウェンセンスラオはアガピートの看病を続けていた、親達が帰って来れば使用人達に仕返ししてやる事ができるだろう。上に向かうとまさに通路を塞いでいる最中だった。
昔、アドリアノ ゴマラは原住民の為に犠牲を払う覚悟があるのなら自分の息子を捧げろと言われる。息子の首にナイフを刺そうとしたが原住民が一斉に唸り声をあげてそれをやめさせたそれ以来ウェンセンスラオとアドリアノの絆は完全に絶たれていた。
今や通路は塞がれたがそこは昔、父や妹達ときた洞窟であり、集落に抜ける道があると考える。途中に差し入れのパンがあり 集落で待っていると書いてあった。
2
ファンペレスはウェンセンスラオと同じく 主人達が帰ってくると予想し、それが一番厄介な事と考えていた。しかし今は亡きアドリアノ ゴマラに全てを押し付け、彼が年の功を盾に子供達とマルランダを支配下に置きすべてを混沌とさせたと言えばそれで済むだろうと考えた。
だが屋敷内の動揺を感じていた子供達は使用人達が何を恐れていたのかよくわかっていた。
原住民達は子供達に綿毛の襲来による窒息を避ける方法を伝授していた。子供達は、1年前綿毛の被害を経験しておりその恐怖をよくわかっていた。ウェンセンスラオ、アガピート、アラベラ、アマデオは合流し集落へ向かった。
アマデオとアラベラがいなくなった事に気付いた使用人達が捜索を始めた。
執事にばれてはまずい使用人達は隠れている4人のそばを荒々しく駆け抜けた。4人はグラミネアの間を這うように進み見つからずに開けたところまでたどり着いた、だが何処へ向かっていいのか全く見当もつかず、自分達が生きていくのに必要な力すら残っていなかった。
3
朝起きると近くに塩水が湧いていた、ウェンセンスラオ、アガピート アラベラは体を洗い水を飲んで生き返った。アマデオがいないのでアガピートは辺りを捜索した、すると血だらけのアマデオが見つかった、心臓はまだ動いていた。アマデオはこの先食料は見つからないだろうから自分を食べてくれと言って息を引き取った。

3人はアマデオを順番に食べた。

(作者)この小説の草稿ではこの後3人は荒野に姿を消して二度と物語には戻ってこない予定だった。しかしウェンセンスラオの存在感によってこれは不可能だと決めた。

3人は遠くにプラチナ色の雲が見えた段々近づいてくるとそれはベントゥーラ家の一団だった、3人は「お母さん、お母さん」と近づいて叫んだ。
第十二章 外国人達
1
(作者)ある朝私は、小説【別荘】の決定稿を抱えてエージェントに向かっていた、すると顔見知りの紳士に声をかけられる。シルベストレ ベントゥーラだった。エルモへネスの所にこれから行く途中だという。久しぶりなんだから祝杯をあげようとバーに誘われる、2人の関係は創造する側と、される側という仕事上の付き合いである。
今持っている原稿は彼等一族の物語だと告げるとシルベストレは、マルランダを鉱山も含めて買いたいと言う外国人がいるので一週間後エルモへネスとマルランダに行くという、売ってはいけないと作者は言う。
自分の小説を読んで聞かせ、感想を聞くと「さっぱりわからなかった」と言われた。
マルランダはそんなに大きく無いしそんなに大量の使用人を雇ったことも無い、屋敷だってありきたりの建物で俺たちはそんな罪人でも無いし悪人でも無いし愚か者でも無いとシルベストレは言った。
作者は君達に認められるために書いているのでは無いし自分の文学理念を曲げてまで書こうと思っていないと言った。
シルベストレはエルモへネスの事務所に向かった、エルモへネスは妻のリディアもシルベストレも誰も信用していない。偽装と隠蔽と詐欺で
この難局を乗り切ろうとしていた。
2
原住民は使用人達に見張られ金の採掘の仕事をしていた。荒野の片隅に追いやられた別荘は、崩れて威厳を失った贅沢品のようになっていた。
ファンペレスは古き良き時代はまだ終わっていないとでも言うようにバルコニーを囲む手すりをいつまでも磨き続けていた。ファンペレスは地平線の遠くに主人達の一団を見つけた、敗北という名の自由を感じた、ベントゥーラ一族は新しい使用人達と外国人を乗せていた。
シルベストレは外国人を庭に案内すると「人里離れた場所にしては悪くないが残念ながら少し狭い」と言われる。シルベストレは我が国で最も広い庭園だと憤慨する。外国人の女が「あなた達の領地がこんなに狭いとわかっていればこんな廃墟同然の家にわざわざ長旅をしてこなかった」と言った。
目の前にある集落には人喰い人種がいるのだろうと外国人そうならば根絶するとベントゥーラ家に告げる。
外国人は鉱山が我々が考えるほど豊かなものであればそれを買い取り人喰い人種と綿毛は全て排除すると告げた。
テラスの下でウェンセンスラオが「お母さん」とバルビナを呼んでいた。それに気づいたファンペレスはすぐに駆け下りた。
3
ファンペレスと使用人達はウェンセンスラオを捕まえて巻き毛のかつらと女の服を無理やりに着せていた。ウェンセンスラオは抵抗した。
先頭にファンペレスそして召使いを従えその後ろにウェンセンスラオがついて歩いた。
親戚のいる部屋に近づいたウェンセンスラオは踊りながら真ん中に躍り出た。「公爵夫人は5時に出発した」の遊びにふけっていた子供達が仮装したままダンスホールになだれ込み踊り出しフベナルがチェンバロを演奏した。
ウェンセンスラオとコスメはバルビナの眼の前まで近づいた、バルビナはコスメの潰れた顔を見てバルビナは仮面を取れと言った。
屋敷は廃墟同然だし服もボロボロでみんな痩せこけてしまい一体どうしたのとバルビナが余計な事をしゃべりすぎてしまいそれについて他の者は外国人に釈明した。これは「公爵夫人は5時に出発した」の遊びに夢中になるあまり時々妄想が行き過ぎてしまうと説明した。エルモヘネスは狭窄機を持ってこさせアドリアノを幽閉していたあの塔に2人を連れて行った。
第十三章 訪問
1
男達の計画としては鉱山を見せて売買契約を結び綿毛の嵐が来る前に帰路につく。綿毛の嵐が外国人を襲うような事があれば彼らは契約書をその場で破り捨てるであろう。
エルモヘネスは外国人達にこの地域の歴史と地理を説明させようとアラベラをさがすがなかなか見つからない。執事がアラベラを連れて来たがボロボロの服に熱に震える体のまともにも立っていられないアラベラだった。外国人は心配してアラベラを支えた、執事は説明した心配ありません「公爵夫人は5時に出発した」の遊びをしていただけですと説明した。外国人の女はアラベラを連れて隣の部屋に姿を消しその一時間後にアラベラは息を引き取った。
ルドミラが外を見るとプラチナ色の雲がこちらに押し寄せてきた、それはマルビナの馬車の行列だった。彼女は最早少女ではなくとても贅沢な衣装を着ていた。マルビナは親達との話を軽く切り上げ外国人との話に集中した。
ベントゥーラ一族はその会話には入れなかった、マルビナはメラニアを見つけると懐かしいと言っていつも仲良しだったかのように抱き合った、他の子供達には目もくれずメラニアの手を取って離さなかった。
2
ファビオ、カシルダ、マルビナ、イヒニオで金を持って馬車で逃げた時に話を戻す。
ファビオとカシルダを置き去りにしてイヒニオとペドロ、クリソロゴ原住民7名で憔悴し痩せこけた姿で首都にたどり着いた。イヒニオは次第に病んでいった。彼に打撃を与えたのは行程を重ねるうちに鉄の女と化していったマルビナだった。首都に着くと彼女は原住民に報奨金を与え何処へでも消え失せるように命じた。
外国人のたむろするバーに行き金の取り引きを持ちかけた、外国人の用意した家に向かい入れられ奇抜な現代風な成り金として頭角を現し始めた。外国人達には片付けておかなければならない事があと一つあった、イヒニオの始末だった。ベントゥーラ一族の人間を殺すことはリスクがあるので、外国への旅を提案し彼を送り出した、マルビナはこれで自らの脱皮を心おきなく出来ることになった。出身、階級、名前、年齢までを跡形もなく消し去った。いつも横にいたのはペドロ クリソロゴだった。売春宿や賭博場を買いあさり外国人から受け取った代金以上の代金を手にして2人の原住民をマルランダへ派遣して別荘の様子を調べに行かせていた。
ベントゥーラ家の大人達が出発して少したった頃アドリアノ ゴマラは南側のテラスに何本もの槍に貫かれた自分の顔の落書きに気づく、マウロの仕業に違いないと考えた、そしてベントゥーラ一族逃亡の知らせを受けて山から下りてきた。原住民集団を受け入れないとアドリアノが主張したためマウロはそれに反対し姿をくらませた。ウェンセンスラオは父は自分の招いたことですっかり頭が混乱しているように見えた、上の階のメラニア達に食料庫の鍵を渡せと言いに行くが拒否される。翌日上の者達を幽閉し食料庫に向かい鍵を破壊し中の食料を必要な者で分けた、食料庫は開けっ放しの為原住民や子供達が殺到し食料を食い漁った。
これに気づいたアドリアノは入り口に兵士を置き配給制を取ったが食料は減り続けた。コロンバはこうなった以上食料管理に長けた自分に管理を任せてくれとアドリアノに直訴し再び台所は機能を始めた。
上の階の者の幽閉を解いたことにマウロは怒り、別荘へ踏み込み部屋に居座った。その間大半の従兄弟達はいつも通り原住民と一緒に過ごした。ある時商品満載の馬車に乗って帰ってきた原住民達に話を聞くとマルビナの名前が出てきた、アドリアノはウェンセンスラオとフランシスコ デ アシスと三人でマルビナと連絡を取り世界市場を相手に商売しようと考える。
先ほどの原住民に手紙を託しマルビナのもとに送る、しばらく時が経つとアドリアノの注文した品を乗せ原住民達が帰ってきた、そしてまた金を積み首都へ向かった。自分達の知らない事に不穏な空気を感じ取った上の階の者はマルビナとアドリアノとの取引を絶つためにメラニアとアグラエーに悲劇的一日のヒロインを演じろと命令する。メラニアとアグラエーがウェンセンスラオを引きつけている間、馬を野に逃がし馬車を見つからない所に隠し取引を続けられないようにしてその後行商人2人を捕まえて幽閉した。これでマルビナへの伝言を持って旅立ったと思わせることが出来た。行商人2人が首都へ向かっていると思われていた間マルランダでは再び取り引きが始まると金の生産を増大させた。アドリアノはせわしなく動き回り果樹園の整備など取り行った。例外は上の階の者達だけで次第に忘れ去られていった。父の命令に心から従うことが出来なくなっていたウェンセンスラオはする事もなく事の成り行きを見守っていた。行商人が戻ってくる時間が長引くにつれ、父は足元から崩れていき信頼感も薄れていった。結局ベントゥーラ一族が巨大な力を入れ見せつけ戻ってきた時、アドリアノの計画には何の解決方法もなかった。ある時マウロが縛られた2人の行商人を見つけアドリアノに報告した。結局は自分達で首都に行かないといけないとマウロは提案した、しかしお尋ね者である自分は行くことは出来ないとアドリアノはいった。マウロは上の階の者達をみすぼらしい部屋へ幽閉し朝から晩まで強制労働させた。別荘に次々と助けを求めてくる原住民達にも対応できなくなっていき食料も底をつきアドリアノには、なす術もなかった。マルビナはその後使者を送らなかった、望むのはベントゥーラ一族の帰還であり帰ったら一族の権力を他人の手に委ねプライドをずたずたにする計画があった。
3
ベントゥーラ一族と外国人は湖岸へのピクニックに妻達を下ろし男達は鉱山へ向かい帰りに妻達を拾って帰る計画の旅に出発した。執事の横に座っていたのはファンペレスではなく見知らぬ御者だった。その頃ファンペレスはアガピートに押さえつけられていた。数分経つまで何者かに裏切られたと気付かなかった主人達は服はずたずたにされ馬車から叩き落とされた。彼らの権威は完全に失墜した。
しばらくして敷地に戻った者達の前に埃の仮面を付けたような一団が近づいて来た。彼らは敵ではなく自分達と同じくらい憔悴しきっていた。それはマルランダの子供達だった、子供達は大人達に手を差し伸べ助け起こした。
第十四章 綿毛
1
綿毛の襲来に湖まで逃げようとしたが馬車もなく馬もなく逃げられない、全てはマルビナと外国人と執事が計画的に仕組んだ罠だった、しかしティオ アドリアノの馬車が残っていて全員その中に避難した。ウェンセンスラオは湖は存在しないしぼやぼやしてると綿毛の突風で命を落とす事になると言った。ファンペレスは助かる方法を教えてくれと言った、ウェンセンスラオはこの地域について我々よりよく知っている人々に教われと言った。ファンペレスはウェンセンスラオの顔に鞭を打ち馬車から子供達を下ろし馬車を走らせた。悪党ファンペレスを乗せて進んだ馬車はすぐに綿毛に飲まれて姿を消した。
2
ファンペレスとベントゥーラ一族は荒野で窒息死した。(作者登場)登場人物達がこの後どうなったかはもう一冊書かなければ書き切れない現実と芸術を混同しないと決めていたが登場人物との別れが辛い。原住民が引き連れる一行はダンスホールに辿り着いた事で横たわり綿毛の襲来をしのいだが、セレステはテラスでずっと綿毛を浴びていた。オレガリオを待っていたのだ、オレガリオはテラスに出てセレステと共に嵐の中に消えた。

終わり

感想
あとがき含め500ページ超 読みづらくはなくスラスラと読める。が、しかし【夜のみだらな鳥】に衝撃を受けてしまった後では物足りなく感じてしまう。しかしこれは他の作家でも同じ事なのでしょうがない。

面白い所

作者が語る部分を最初の所からちょくちょく出しておいて、後半に作者がまさにこの物語を執筆終えて編集社に持って行く途中街中でベントゥーラ一族の者と偶然出会い作品の感想を聞いたりする所は印象に残った。

実は親達がハイキングに行っていた数日の話のはずが1年以上経っていなければありえないような展開に知らず知らずのうちに巻き込まれるような展開。

読みやすくはあったが、ものすごく衝撃を受けるような作品でもなかった。

80点