【夜のみだらな鳥】ホセ ドノソ 感想 1

【夜のみだらな鳥】ホセドノソ 感想 1


エピグラフ

“分別のつく十代に達した者ならば誰でも疑い始めるものだ。人生は道化芝居ではないし、お上品な喜劇でもない。それどころか人生は、それを生きる者が根を下ろしている本質的な空虚という、いと深い悲劇の地の底で花を開き、実を結ぶのではないかと。精神生活の可能なすべての人間が生まれながらに受け継いでいるのは、狼が吠え、夜のみだらな鳥が啼、騒然たる森なのだ。”

その子息ヘンリーとウィリアムに宛てた父ヘンリー・ジェイムズの書簡より。


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女中のブリヒダが死んでしまい ラケル夫人がすべて面倒を見た。葬式はブリヒダが晩年を過ごした エンカルナシオン修道院で行われた
修道院は持ち主のドン ヘロニモによって処分されてしまうという。
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修道院 6人の老婆が孤児のイリス マテルーナに 話す昔話、地主の主人に9人の息子と1人の末娘がいた、村に魔女の噂が立つ 末娘を育てた乳母が魔女だということで追い詰められる 末娘は乳母をかばうが 修道院に隔離され乳母は殺される
そしてむらに平和が訪れた。
この話はアスコティア家の領土で生まれ国全体が知っている有名な話 アスコティア家の一族であるイネスも乳母のペータ ポンセに聞かされてもちろんこの話を知っているだろう。

イリス マテルーナは妊娠している6人の老婆はそれを隠して自分たちで育てようとしていた。
〈ムディート〉はそれに気付きシスター ベニータに知らせようとするが 老婆達に止められ 出産の為に誰にも気づかれない部屋を探してくるように頼まれる それに見合った地下室を見つけてくると 7人目の魔女として迎えられた。
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アスコティア家には跡継ぎがいない。
イネスがローマにいる間、ヘロニモは突然修道院を大司教に贈与するサインをした。〈ムディート〉の住んでいるエンカルナシオン修道院は昔は賑わっていたが今は3人の尼僧と老婆達と一年前に来た孤児達しかいない。
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イリスはまだ生理が来ていないのに妊娠していることがわかる(まだ未成年)それに気づいた6人の老婆達はそれを奇跡の子と喜ぶ。6人の老婆達はこの話を誰にも知らせず出産させる計画を練る、生まれた子供には何も教えず自分たちを頼るしかない子供に育て大きくなっても外に出さずいつまでも世話をするつもり。そして自分たちを天国に連れて行ってくれるだろうと思っている。〈ムディート〉は修道院を手放すのをやめさせるためにイリスの子供をヘロニモの子供として引き渡し修道院を継いで欲しいと思っている。〈ムディート〉はその為にまず6人の老婆達に協力することにする 〈ムディート〉は昔ヘロニモの召使いだった。
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〈ムディート〉はイリスにそそのかされ修道院の出口の鍵を開けてしまう。イリスは外で〈ヒガンテ〉というあだ名の男(ロムアルド)の手伝いをしたりして彼に夢中になった2人は幸福なカップルだった、その日からときおり鍵を開けイリスを外に出すようになった。〈ヒガンテ〉とはトルコ人に借りたお面をかぶりチラシを配るバイトをしている名前はロムアルド ムディートはそのヒガンテのお面を金を払うから貸してくれと頼む、ムディートはヒガンテのお面をかぶりチラシを配るするとイリスはいつものヒガンテと思い一緒にチラシを配る 夜になると2人は空き地の車のなかでセックスをする イリスは〈ヒガンテ〉のお面をかぶっているので〈ムディート〉とは気づいていない。
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〈ムディート〉がイリスの父親なのである。ヘロニモにも成し得なかった女を妊娠させるという単純な能力が自分にはあるということに喜びを覚える。イリスが妊娠したとわかった時から〈ヒガンテ〉のお面は必要なくなった、〈ムディート〉はロムアルドにお面をつけずにイリスと寝れたら金を払うと賭けをする、ロムアルドは拒否されその後お面をつけた〈ムディート〉が現れるとイリスは落ち着いた。そこでロムアルドはお金を稼ぐ為に、イリスと寝れることを教えてお面を様々な人に貸す。すると議員や映画スターなども来るくらい評判になる、そしてある日 ヘロニモが現れる。ヘロニモがイリスと関係を持ったことで〈ムディート〉の計画は完璧になった、イリスの子をヘロニモの子供と信じさせ 修道院の後継となってもらうそうすれば修道院はなくならず、〈ムディート〉は永久に修道院に留まることができる。〈ムディート〉はとても貧しい家庭で育った、子供の時初めてヘロニモを見かけたことがあった背が高く高価なスーツを着て友人達と会話をするヘロニモを見て埋めるすべのない渇望の穴が空いた、その男の影でもいいから一体になりたいと思った、その日から消えることのない羨望と悲哀が耐え難い苦痛となり始めた。
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金を払ってお面を借りたのにイリスと寝ることができなかった連中が暴れてロムアルドとイリスは痛めつけられる、お面もバラバラになり壊れてしまう。
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イリスはずぶ濡れで中庭に倒れていた、老婆達は看病する 小人の老婆(ダミアナ)を赤ん坊と見立てオムツを替えたり世話をするようになるするとイリスは〈ヒガンテ〉のことはいっさい忘れてしまった。〈ムディート〉はある夜、影に隠れてイリスを見張っているとダミアナが新聞の読み方 文字の読み方を教えすべて自分でできるように教育していた。ダミアナはある日修道院から抜け出した。すべてを知ったイリスもムディートに外に出さないと〈ムディート〉の悪事をバラすと脅す、イリスは本当の父親を探したいだけ
〈ムディート〉は自分が探してくるから待っていろという 外に出ると 内側から鍵をかけられ締め出される。
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外で泥棒と言われ警官にいためつけられ署に連れて行かれる〈ムディート〉、聾唖ということで釈放される。修道院に行って中に入れてもらう為に向かう。
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ヘロニモはヨーロッパから戻ってきた、叔父にこっちで代議士になれと薦められるがきっぱりことわる。
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議員候補として活動するヘロニモ、パーティでイネスに出会う、一瞬で恋に落ちる。先祖の聖女と同じ名前になれて嬉しいというイネス そんな話は知らないヘロニモ 、ペータ・ポンセに聞いたという。ペータはイネスが具合の悪い時に看病してくれた命の恩人でイネスの大のお気に入り。ヘロニモはペータに会いハンカチをプレゼントされる、それが見事すぎてみすぼらしい老婆が美しいハンカチを生み出すことに恐怖し金だけ渡しすぐその場を去る、イネスは悲しむ、昔原因不明の腹痛の時にペータがお腹を吸ってくれて治ったことがあるとヘロニモに話す、ペータは魔女だから会うなと言うとイネスは怒りヘロニモの顔に傷をつける。結婚式は行われる、ヘロニモはイネスの体を求めるが拒否される、イネスはペータを引き離す事はしないと約束させる。
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ヘロニモは屋敷にいる黄色い犬をなぜそのままにしているのか小作人に尋ねるとイネスの命令という。
ある日投票所から投票箱が盗まれた、民衆が怒り出す、民衆はヘロニモを打ってしまい、騒動は終結するが本当に打たれたのはウンベルト(ムディート)だった。ヘロニモはその血を自分の腕になすりつけ名誉の負傷を自分のものにした。この事件を機に度胸のある男だとイメージアップにつながる。
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ヘロニモがいない時は必ずペータのところに行くイネス。傷を負ったウンベルトは修道院に戻るとイネスが手当をしてくれた、困ったらペータのところに行けと言われよく通ったそのうちペータはヘロニモをこの部屋に連れて来れば子供を授けることができるというがそれは無理な話、しかし教会で傷を分けあってからウンベルトもヘロニモである。ペータの力により隠れ家に吸い寄せられるように向かうウンベルト、部屋にはイネスがいた、イネスはウンベルトをヘロニモと呼んだ、セックスをする2人、ペニス以外には触れようとしないイネス、自分の存在を認めてくれと願うウンベルト、その時から彼は啞となった。
家に帰るヘロニモ、ウンベルトは頭も良いし何でも任せられるという、明日は首府で大切な演説があるのでどうしても眠りたいが黄色い雌犬が窓の下で吠えて眠れない。イネスは「そっとしておいたら」という。この数時間彼女が口を聞いたのはこれが初めて。ヘロニモは黄色い雌犬を殺そうと4匹の飼い犬を連れて行く、止めるイネスを振り切り飼い犬はあっという間に息の根を止めた。しかし後日庭師にウンベルトが確認するが誰も知らず本当に黄色い犬が死んだのかは誰にもわからない。
イネスの懐妊が知らされる、実際はイネスではなくペータと寝たのだろうと考えるウンベルト、それから性を取り戻したペータはウンベルトを追い回す。それが嫌なウンベルト、ヘロニモはイネスが妊娠したのでセックスできずウンベルトを連れて娼館に行く、自分のセックスを見ててくれと頼む、ヘロニモはウンベルトの羨望と軽蔑の眼差しがないとセックス出来ない。ウンベルトの存在が深く中に入ってしまっている、見捨てないでくれと願うヘロニモ。
ペータが修道院の周りをうろついている、しかしわかるはずがないアスーラ博士によって顔がすっかり変わっているから、その目を除いて。
ヘロニモはイネスを連れ出すことが出来た、子ども〈ボーイ〉を産む事ができたがそれは、いっそ殺した方がいいというような奇形だった。
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ヘロニモはリンコナーダの屋敷を改造し完全に外と遮断した。〈ボーイ〉に与えるものは下品であってはならず怪異とは美と対等だと考える。ウンベルトに奇形を集めさせその中でボーイを育てようと考える〈ボーイ〉に外の世界があるとわからせないようにウンベルトはいっさいを任されるそして作家なのでそれを記録するように頼まれる。奇形たちはヘロニモにたっぷりの報酬をもらっておりみんな着飾って屋敷に集合したそして部屋を決めそれぞれの生活が始まる。
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ヨーロッパで優秀な医師で自身が奇形のアスーラ博士を見つける。生まれた時すぐ死ぬだろうと言われていた〈ボーイ〉にアスーラ博士が生命を危うくする異常をすべて取り除いた。しかし奇形ではなくさないで欲しいと頼まれていた。ウンベルトは書斎を作りものを書く準備を始めるが書こうとすると胃が痛む、リンコナーダに閉じ込められてる気がする。〈ボーイ〉がげりをしているという、中庭を歩いていると住人のミス ドーリーが自分の乳をあげているのを見つけるウンベルトはすぐ首にし外に追い出す。
ボーイは1人だけ健常者のウンベルトを見て怖がる、それを見たエンペラトリスのかっこうの餌食になった。みんなが自分を笑っているような気がする、書こうとするがなにもかけず具合の悪さにタイプライターの上に崩れ落ちる。
アスーラ博士が診察する、奇形たちの血をウンベルトに輸血する奇形たちは自分の血を欲しがっている。
自分は奇形たちの寄せ集めなのだ。
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ヘロニモは手術に全力を尽くせという体の80%は切除され残ったそれは20%しかない。非常に重体で命を落とす寸前だった。ヘロニモは長い間かけた計画がまもなく完了すると言っている。
ウンベルトは若い頃家出してバーエルクレスで働くロシータと同棲していたそこにヘロニモが訪れカウンターのロシータに手紙を渡して帰る、そこにはウンベルトに明日の10時に屋敷に来てくれと書いてあった。
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最初からすべてがヘロニモの計画だった、イネスは針にくらいつかせるための罠、異形の者たちを支配し彼に代わってその嫡子の父となる事、これが最後の誘惑。ウンベルトはそれに食いついた。ベッドに縛り付けられ死ぬ事も許されずどうするつもりなのだろう。大手術が行われるという、ウンベルトの器官をヘロニモに移植する。ウンベルトにたぶらかされ下の腐った老婆とセックスさせられてからヘロニモの性器は役に立たなくなってしまった一方ウンベルトは従順を装いイネスと寝た、妻の体に触れたこの下衆な男の性器を自分に移植しようとしていた。それを聞いたウンベルトは美しいイネスに触れるという禁じられた壁を超えた事がわかった今自分の性器などどうでもよく平安と愉悦を覚えた。6人の老婆たちがムディートを迎えに来る、すべてが自分のために仕組まれていると気付いてウンベルトはリンコナーダから逃げ出す。実際交換手術がどこまで行われたかはわからない、まだされていないようにも思える。修道院に戻りたい。イネス夫人の帰国の噂が聞こえた来た。
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ラケル夫人は亡くなったブリヒダの残した莫大な遺産の処分に困っていた、シスターベニータに新しい病院を建てるのでそこにいって欲しいと頼むがシスターは断る。
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競売人達が来て、ものをすべて運び出していた。イリスの妊娠は長く続いていた、秘密の計画を知るものは7人ではなくなっており噂が噂を呼びたくさんに増えていた。
ムディートはアスーラ博士の手術で20%の体になっていたので小さく縮み病弱な目だけの様な人間になってしまった。〈ムディート〉はイリスの赤ん坊の人形になっておしめを変えられている。イリスはずっと父親を探してきてくれと〈ムディート〉に頼んでいる夜になると〈ムディート〉は外に出て探しに行くが毎回戻ってきてはでっち上げの話をイリスに話す。
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イネスが戻ってくるという、そうすれば修道院も壊されないだろうという
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イネスは福者であるイネス・デ・アスコティアの遺体が修道院に埋葬されていると聞いてそれを見つけたい
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イネスは子宮摘出のためにヨーロッパに行っていた ヘロニモに60を過ぎても体を求められるのが嫌だった。そしてそれをつげたとき修道院の売却が決まった。アスーラとエンペラトリスは結婚して病院を営んでいた、ウンベルトがいなくなりボーイは自由に暮らしていた。ボーイは青年期になるにつれ押し込めておくのは不可能になってきた。
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イネスは屋敷から自分の服やアクセサリーを持ってこさせてドッグレースの賭けを老婆達とする自分はみすぼらしい服をもらい豪華な服などを老婆達と交換する。
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イネスが手術をしにヨーロッパへいったのはペータになるためだペータはイネスになりイネスはペータになりたかった、アスーラの病院ではペータの器官が保存してありそれを移植したヘロニモとイネスが電話で話すイネスを養子にして修道院を継がせるというイネス、ヘロニモは反対する。イネス、イリス、ウンベルトは一体と確信した願望はヘロニモを消す事。
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ある朝イリスのベッドで目覚める〈ムディート〉イリスの赤ん坊が生まれた。奇跡の子と望まれ続けた〈ボーイ〉とは〈ムディート〉だった。
イネスとイリスはかけをやり続けるイリスは賭けるものがなくなり赤ちゃんをかけるという、イネスは賭けに勝ち子供はイネスの物に、イネスこそ福者イネス・デ・アスコティアなのだとみんなが崇めた。イネスは赤ん坊を連れて寝室に行くが寝るときに犯されそうになり修道院から出て行くという。気がおかしくなり救急車で病院に連れて行かれた。
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アスーラ博士は青年期の〈ボーイ〉が逃げ出した事によりヘロニモが復讐してくると考えエンペラトリスと逃亡しようと考える2人は街を歩いていると乞食に呼び止められる、ウンベルトだった
ヘロニモを抹殺する事を約束して欲しいという。
〈ボーイ〉が屋敷に帰っていた、五日間の外出で自分の父親が何者で何を企んだか、死んだら財産が入る事エンペラトリスとアスーラに虐待され続けてきた事などいろいろと知って帰ってきた
〈ボーイ〉は計画を建てた、ヘロニモがここに来る、ヘロニモの滞在をできるだけ長くする。外の世界を抹殺するつもり、外に出た時、娼館で娼婦に触らせてもらえなかった、五日間外に出てみて生きる事への興味を失ったのでアスーラ博士に手術を頼む、五日間の記憶を消して昔の何も知らない自分に戻して欲しい。手術も終わり父親もいなくなったらいっさいをアスーラとエンペラトリスに譲るという。アスーラは犯罪に手を貸すのはごめんだという。
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ヘロニモは〈ボーイ〉に会いに来たがボーイは警戒して近づいてこない(演技)何日かかけて慣れてくると近づいてくるようになるが小突かれたり 奇形とセックスを強要させられたりする。
〈ボーイ〉は悩んでいた父の記憶も消して欲しかったそれをすると植物人間になってしまう。ヘロニモはここからは中に入って暮らす事が必要と言われるがその夜、犬の格好をさせられたり奇形に罵られたりした事でその晩そこを出る事に決めた。しかし外に出ることはできず、裸で逃げ回っていると奇形達はみんな綺麗な格好をしてヘロニモを笑い者にした。そこでヘロニモは奇形は自分なのだと精神的に追い詰められ池で溺れて死んでしまう。
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〈ボーイ〉=(ムディート)が生まれ老婆達はこれで神の子に天国に連れてってもらえると喜んでいる。イリスの事はもうどうでも良いと言う。イリスは〈ムディート〉が夜鍵を開けて外出させてくれていた事などすべて老婆達に話すがイリスが嘘つき呼ばわりされ老婆達に仕打ちを受ける。娼婦の格好をさせられ無理やり外に出され 男に連れて行かれてしまった。
老婆達は食いぶちがなく外に出るようになる。万引きやたかりをして生活するようになる。老婆達はムディートの面倒を見なくなっていた理由は奇跡といった受動的なイメージを投影する物質に過ぎなくなってしまったため。イリスを外で見かけたものがいた。ここに来たがっているように見えたそう、子供は絶対に渡さないと誓う老婆達、奇跡を早くと願う老婆達 ムディートはくる日もくる日も何重にも袋を縫い重ねられもう何も見えない。かすかに老婆達の祈りが聞こえる。
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神父が、37人の老婆達を迎えに来た。新しい修道院に向かうという。ブリヒダの遺産でラケル夫人がシスター・ベニータと協力して建てたものだ
一週間後に取り壊しが始まりそこには図書館や体育館、その他いろいろな施設ができるという。点呼を取るとイリスがいない事に気づく神父、老婆達に聞くと 誰も知らないと言う。
出発しようとすると人夫が次から次へと大きなカボチャを持って現れた、1年前にラケル夫人が送った五百個の大きなカボチャだった。
老婆達は新しい修道院に向かう

〈ムディート〉は袋に包まれたままだが、近くに気配を感じる、咳が聞こえる。その気配を見たいと袋をかじり懸命に剥いでいくと皺だらけの手がまた縫い付けてくる。【新しい包み】ができる。老婆は大きな袋の中にマテ茶やいろいろな物やゴミと一緒に【新しい包み】も入れ外に出る
外で焚き火をしている。牝犬が近くに寄ってくる、火が消えそうになり袋のものを全部開けて火の中に放り込む。

“老婆は立ちあがり、袋をつかむ。 口を開いて激しく振り、なかのものを火の上にあける。木つば、ポール紙、靴下、ぼろ切れ、新聞、紙切れ。がらくた。 なんでもいいのだ、火が少しでも強くなって、寒さをしのげれば。 燃えにくい布や紙などの、きなくさい
臭いも気にならない。風が煙や臭いを吹き飛ばしてしまう。老婆は石の上にうずくまって眠ろうとする。もうひとつのぼろ包みのように見捨てられた人間のそばで、しばらく火が燃えているが、やがて火勢が衰え始める。残り火も弱まり、ひどく軽い灰に蔽われて消える。風が灰をさらっていく。あっという間に橋の下には何も無くなる。火が石の上に残したまっ黒な跡と、針金の把っ手のついた黒ずんだ空缶だけになる。風が空缶を引っくり返す。空缶は石の上をころがり、河のなかに落ちる。”


感想は次に