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【LA LA LAND】 感想

かなり面白かった

前作セッションがテンポが良すぎて全体的に軽い印象で好きになれなかったが。今回はとても良かった。
まずオープニングから LA LA LANDのタイトルが出るまでの高速道路でのミュージカルシーンが最高。映画史に残ってもおかしくないくらい。
他の映画でもミュージカルシーンが始まると、どうやってストーリーに戻るのかばかりが気になってしまうがこの映画はオープニングからあんなに盛り上げておいて一斉に車に乗り込み全員ドアを閉めるそしてLA LA LAND のタイトル これだけで鳥肌。

序盤はセッションでも感じた 短いカットと軽いノリでテンポ良く行くんだなと思いちょっと残念にも思ったが、中盤からの 2人のすれ違いが起こるところから グッと引き込まれていった。中盤からはミュージカルシーンも少なかったように感じたが実際はどうだったろう?

迷えるピアニストのセブと女優志望のミアのラブストーリー 2人とも不遇の時を過ごすが
徐々に歯車が回り出し セブは自分のやりたい音楽ではないが成功を勝ち取る。
ミアはまったくオーディションにも受からず2人の心はすれ違うようになって行く ミアはセブと喧嘩し実家に帰っているが セブの元にミアのオーディションの話が舞い込む。(エージェントがミアの連絡先がわからずにセブに電話して来た)

ミアはもう戻りたくないというがセブは何がなんでも受けろと言いミアも受けることにする。
結局ミアもその映画のオーディションに受かりそうでとても嬉しそう しかし2人の付き合いはどうなるのかとセブに尋ねると君はこれから死にものぐるいで頑張らなければいけない、それは君の夢だから これからのことはわからない 様子を見ようと言い 2人は愛しあっていることを確認して 5年後のシーンへ。

そしてこのラストの5年後からのシーンが最高だった。
ミアが昔働いていた撮影所のカフェに1人の女優らしき人物がやって来る。レジに来るとコーヒーを頼むのだが店側は女優さんなのでサービスですと言うがその女優はそれを断りお金を払う振り返るとそれは女優として成功したミアだった。(このシーンはそのまんまミアがカフェでレジをしていた時にあったシチュエーション)

ミアは嬉しそうに仕事から家に帰えるとそこにはセブではない男がミアを出迎え
奥の部屋にはミアの子供がおりとても幸せそう ミアはパリでの仕事が成功し人気女優になったようだ。

子供を預け 夫とパーティーに出掛ける パーティーが終わった後、ある店からジャズの演奏が流れているのを夫が気になって ミアを連れて地下のジャズバーに入って行く。

そこにはバンドのメンバーを紹介するセブの姿が、ミアはふと見ると店の名前はセブズだった(ミアが提案した店名、セブはチキンスティックにしようとしていた。)セブはミアに気付くと切ないバラード(2人の思い出の曲)を弾き出す。
そこで初めて会った時セブがミアに素っ気なくしたシーンに回想で戻るとそこではセブはミアにキスをするところから始まり2人の人生がそこでは変わり結婚して子供が出来るまでの幸せな物語がミュージカルで語られるそして最後に2人が地下のジャズバーに入って演奏を聴いていると セブは現実に戻り またピアノを弾いているシーン(現実)に戻る。

ミアは夫と店を出て行き振り返ってセブを見て笑顔を見せる セブも笑顔を返し カウントを取り演奏を始めようとするところで the end。

タイトルの出方と the end の出方がとても良かった。

このラストの展開がこの映画がミュージカルである事の良い部分を最高の形で引き出していると思う。
セッションとLA LA LAND 夢を追うというテーマと音楽の要素 そして一度ストーリーが一段落した後に一気に盛り上げて行くところが
同じようなプロットでつくられていると思う 次回作どう来るかは楽しみであり デミアン チャゼルの勝負所と見た。
(次回作は「first man」という史上初の月面着陸をした ニール アームストロングの伝記を映画にするらしい 2018 10月中旬 アメリカで公開 主演はライアン・ゴズリング
噂ではラ ラ ランドより前にこの映画の主演をゴズリングにオファーしていたところ スケジュールなどにより撮影には入れなかったが ゴズリングとチャゼルが好きなジャズの話などで盛り上がり ラ ラ ランドの主演もゴズリングになったとかどうとか…)

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【騎士団長殺し】村上春樹 感想

面白かった。

ねじまき鳥クロニクルがよりシンプルにスリムになった印象。
何かを失ってしまった画家の男(幼い頃妹を病気で無くしていて最近妻に離婚を突きつけられた)が「騎士団長殺し」という不思議な絵を見つけたことから始まる。夜中に鈴の音が聞こえる祠を掘り返し深い穴を見つけ、不思議な白髪の紳士、無愛想な13歳の少女との出会い、イデアの登場からメタファーと“顔なが”の存在 、過去に起こったウィーンでのナチス高官暗殺事件。
そして暗闇の中に引き込まれていきながらも、本来の自分を取り戻していくという 村上春樹おなじみのテーマながらも最後まで面白く読めた。
もともとねじまき鳥が村上作品の中でも好きだったのでアップデート版のようなこの作品はとても面白く読め、あっという間に読み終えた。

ラストの方で、主人公はこの一連の不思議な出来事をついこの間のように思っているが、少女は成長が早くその事をかなり前にあった出来事のように思っており、もうあまり気にしてはいないという対比が面白かった。

村上春樹の2000年以降の作品では短編含め現作品が一番面白かった。村上春樹は好きな作家だったが少し丸くなって来て楽しめなくなって来たなと思って来ていた所で、良い意味でこちらの予想を裏切られた。「女のいない男たち」からこの作品の流れは村上春樹健在を力強く感じさせられた。

しかし村上作品に限ったことではないが デビューして3、4作目辺りの力加減っていうのが面白い作品が多いと思う。
ある意味でねじまき鳥(ねじまきは5作目だが)の少し読みづらいような部分も今思えばそれが魅力だったなぁと思う。



⭕️イデアのありがたいお言葉



「歴史の中には、そのまま暗闇の中に置いておった方がよろしいこともうんとある。正しい知識が人を豊かにするとは限らんぜ。客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ」

「絵に語らせておけばよろしいじゃないか」と騎士団長は静かな声で言った。「もしその絵が何かを語りたがっておるのであれば、 絵にそのまま語らせておけばよろしい。隠喩は隠喩のままに、暗号は暗号のままに、ザルはザルのままにしておけばよろしい。 それで何の不都合があるだろうか?」

【南部高速道路】 フリオ コルタサル 感想

⭕️登場人物

プジョー404の技師
ドーフィヌの若い娘
タウナスの2人の男と金髪の男の子
シムカの2人の若者
シトロエンIDの老夫婦
DKWのセールスマン
ラヴェルの青白い顔の男
プジョー203の夫婦と娘
ワーゲンの兵隊とその妻(新婚)
2HPの2人の尼僧
アリアーヌの百姓夫婦



フォンテーヌブローを出た途端にノロノロ運転が始まり車が渋滞し始めた。片側6車線、計12車線の道路を車がびっしり埋め尽くした。3メートル進んでは停車するという状態を繰り返した。

技師は近くの2hpの尼僧やドーフィヌの若い娘とおしゃべりしたりした、車からあまり離れないようにして周りの様子を調べた。
特に変わったことは無かったので警察がこの渋滞を解消してくれるまで車の中で待つことにした。8月のうだるような暑さの中車はほとんど動かなかった。

そのせいで誰もがイライラし始めていた、いずれにしろここまでの渋滞は大きな事故でもあったに違いない、政府は一体何をしているのだろうか。

いつまでたっても日が暮れず日差しのせいで頭がぼやけ吐き気さえおぼえた。
Dkwからセールスマンが降りてきて先ほど耳にした話では小型の飛行機が墜落して数人の死者が出たらしいと言った。
日が暮れて車はかなり進んだ40メートルは進んだだろう、日が暮れるとよそ者がやって来ていろいろなニュースを伝えて行った。墜落したのはグライダーだったとか道路が陥没しそこに5台の車が突っ込んだなどいろんな噂があった。
再び車は動かなくなり暑くなってきたのでみんな喉が渇いていたが飲み物は無かった。明け方3時ごろになると誰が言い出した訳でもなくひと眠りして体を休めておこうということになった。しばらくすると外が騒がしく人影が車の間をすり抜けて行くのが見えた、みんな道路脇へ行き用をたしていた。

戻る途中ドーフィヌの若い娘がハンドルにもたれて眠っているのが見え眺めていると反対側のdkwのセールスマンもドーフィヌの娘を眺めていた。
朝方車の列が少し進んだのでこの分では今日の午後にも渋滞が解けてパリに戻れるかもしれないと期待が生まれた。
9時によそ者がやって来て良いニュースを伝えてくれた、道路の陥没した場所が修復されて間も無く平常通り車が流れる様になるだろうと言った。技師はこのニュースを聞いても信じなかった。

技師はアリアーヌの百姓夫婦なら食料を持っているに違いないと考えて相談を持ちかけた夫婦は思いのほか親切で理解があった。誰かグループのリーダーになってくれれば苦労せずにパリにたどり着けるのではないかと言った。
技師はタウナスの男としゃべっていてこの男なら信頼できる気がしたのでグループのリーダーになってみんなを引っ張ってくれと頼んだ。

今の所食料は問題なかったが問題は水だったリーダーは早速技師と兵隊それと若者の1人に向かって高速道路の近くを調べさせ食料と水を交換してきてほしいと切り出した、リーダーを引き受けるだけあって万事テキパキと処置したが計算によると悲観的に見て最悪の事態を予測すると1日半分の食料と水が必要だった食料はあったので必要なのは水だけだった。
3人は探検に出かけたが水を持ち帰ったのは1人だけだった、しかも相手はしかも相手は引き換えに食料を要求してきた。

技師はあちこち歩き回ったが水は手に入らなかった。けれども足を棒にして歩き回ったおかげで他にも似た様な状況に直面した人達がそれぞれにグループを組織し始めている事に気付いた。
技師がドーフィヌの若い娘に周りの状況を話していると娘は急に話を遮り若い男2人のシムカを指差した。若い男は上着の中に隠した水を飲もうと体を弓なりにそらしたところだった。
技師は車から飛び出し男の1人の肘を掴みそれに気づいたタウナスのリーダーも近づいてきて若者に往復ビンタを食らわせた技師は水筒を取り上げタウナスに渡した。
そのうち車が100メートル近く進みみんなは飛び上がらんばかりに喜んだ。

技師は常々タウナスの鋭い直感に感心していた、みんなに疲労がたまって不満が爆発してはいけないと夜までゆっくり休ませたり、自分が直接出向いて食料と交換に水とぶどう酒をもらってきたりした。技師は眠れなかったのでタウナスとその友人を相手にダイスをしながら今後の事を話し合った。

明け方になってようやく眠気がおそい眠ろうとした所、遠くの方で人の叫び声が聞こえた様な気がして目が覚めた。薄目を開けると明るい光の様なものがぼんやり見えた。
別のグループのリーダーがやってきて30台くらい前の車両でボヤ騒ぎがあったらしい誰かがこっそり野菜を茹でていて火を出したらしいと教えてくれた。
その事をタウナスは冗談めかしてみんなに伝えたが誰1人として笑うものはいなかった。
ドーフィヌの若い娘を見ると頰を伝って涙がニ筋流れていた。

Idの老婦人の具合が悪いので3グループ後ろのグループに医者がいると聞いていたのを思い出して兵隊と若い2人組みは自分達の失態を取り戻そうと躍起になって呼びに行った、技師はそんな彼らの態度を微笑ましく思った。
技師の404の窓に布をかけて中を薄暗くして老婦人を中で寝かせた。
技師は車を明け渡したので他の車に乗せてもらったりタウナスの車で過ごした。

夜になりタウナスと技師はアリアーヌの百姓や兵隊と話し合った。事態は当初タウナスが予想していたよりも深刻だった。何としても食料と水を確保しなければならないが夜が明けたらそのための手を打つ事にしようと言った。
他のグループのリーダーにも聞いてみたが状況はどこも同じだった。この辺りに詳しい百姓が各グループから2,3人ずつを出して近くの農場へ買い出しに行き空の車には適当に人を割り振って運転する様にしたらどうだろうと提案した、思いのほか簡単に資金は集まり百姓と兵隊タウナスの友人の3人が買い出しに行く事に決まった。

ドーフィヌの若い娘が老婦人は具合が良くなったので自分の車に戻りたいと言っている事を伝えた。医師に確認した所大丈夫という事で自分の車に戻った。その時タウナスは404はこれからも救急車として使わせてもらいたいと技師に言った。シムカの若者たちはそれを聞いて大喜びし早速赤十字の旗を作り車のアンテナに取り付けた。
少し前から人々はつとめて車から出ない様にしていた。気温が下がりにわか雨が降り稲妻が光った。

技師はハンドルの上に本を置いて読んでいたが頭に入らなかった、買い出しに行った連中はどうしたんだろうと考えていた。しばらくするとタウナスが人目につかない様にこっそりやって来て車の方に来てくれないかと言ってきた。
実はあの買い出し作戦は失敗してねと言ってきた。農作物を勝手に売ることは法律違反とのことで売ってもらえなかった、渋滞はいつまでも続かないだろうがそれにしても手持ちの食料では2人の子供と老人に食べさせるには酷いものだった。夕方診察に来た医師が腹立たしげにこのグループだけじゃないどこも似た様なものですと疲れ切った口ぶりで言った。

突然ラジオから目下高速道路の渋滞を解消させるために緊急処置が取られているというニュースが流れて来た。けれども夕方にヘリコプターが一機チラッと姿を見せただけで何一つ変わった事はなかった。
気温も下がり毛布にくるまって眠れば数時間でも無為の時間を過ごすことが出来るというので誰もが夜を待ち焦がれる様になった。
タウナスの友人がさりげなく近づいて来て技師と兵隊と203の男に自分の車の方に来てくれないかと声をかけた。
3人が向こうに行くとタウナスが実は、と切り出した彼の話ではフロリードに、誰も乗っていないのに気付き探してみたが運転手の姿は何処にも見当たらないという、フロリードの太った男は誰とも口をきかずに貝の様に口を閉ざし黙りこくっていたらしい、ワイシャツと下着の入ったカバンを残しもう一つの手提げカバンを持って姿をくらませたと分かった時はすでに朝の5時を回っていた。あの男が夜の闇に紛れて姿を隠したのが気にかかった。

あの夜は他にも重大な決意が迫られる事件が持ち上がった技師が404のクッションにもたれかかっていると何処からかうめき声の様なものが聞こえて来た。
後部座席を覆っている布を持ち上げてみると、渋滞が始まって以来ずっと後ろについていたカラヴェルのフロントガラスが目の先1メートル半程の所に見えその向こうに首を少し傾ける様にしてガラスにぴったり張り付いている男の引きつった様な顔が見えた。タウナスのところに行って事情を話すと兵隊が医者を呼びにすっ飛んで行った。

タウナスは直ちに戦術会議を開いて自分の考えを述べ医師も彼の意見に賛成した。
死体を道路脇に捨てれば後から来た連中がなんてひどい事をと思うだろうし、畑に捨てたりすれば土地の連中の激しい反感を買う事は目に見えている。昨夜も別のグループの若者が食べ物を探しに行って土地の者に捕まり袋だたきにされたばかりだった。幸いアリアーヌの百姓とdkwのセールスマンが必要な道具を持っていたので死体はカラヴェルのトランクの中に密封する事にした。その作業をしている所にドーフィヌの若い娘がやって来たが彼女は技師の腕に捕まって身体を震わせていた。技師は事情を説明し彼女を車まで送って行った。

日中でも上着が手放せないほど寒くなったがこんな事は渋滞が始まって以来初めてだった。
再び水が底をつき始め土地の人間と交渉するべく技師を含む3人の男が向かったがどういうわけか土地の人間は外の世界の人間を受け入れようとしなかった、高速道路から一歩外に踏み出すと石ころが雨の様にバラバラと降って来た。
その頃になると1日にあるいは数日の間に車がどれ位進んだか計算しているものはいなかった、ドーフィヌの若い娘は80メートルから200メートルの間と言ったがそんなに進んでいないはずだった。

Dkwのサラリーマンがドーフィヌの若い娘に言い寄っているのが癇に障ったのであの男と話が出来ないようにのこちらの話を長引かせた。
フロリードを運転していた若者がタウナスの元へ来てフォードマーキュリーが水なら手持ちがあると言っているがふっかけてくると報告してきた、タウナスはその申し出をはねつけた。しかし夜になって尼僧の1人がidの老婦人は看護をうけながら愚痴ひとつこぼさず苦しみと闘っておられますあの方に水を一口飲ませてあげてくださいと懇願した。水は半リットルばかり残っていたが女性たちはそれを老婦人に回してくださいと頼んだ。

その夜タウナスはポケットマネーを出して水を2リットル買った、フォードマーキュリーは倍額出してくれるなら水をもっと都合して来てもいいと言った。

寒さが厳しくなり人々は余程のことがない限り車から出て来なくなった。そのせいでみんなで集まって話す機会がめっきり少なくなった。
バッテリーが下がり始め一日中暖房をつけているわけにはいかないので、タウナスは病人が出た時に備え装備のいい二台の車を救急車として使う事にした。誰もが車内の熱が逃げないようにドアを閉めきり毛布にくるまって閉じこもったきり外に出なくなった。凍てつくような寒いある夜技師はドーフィヌの若い娘の押し殺したような泣き声を耳にした。そっとドアを開けて手探りで暗闇の中を進んでいくと涙に濡れた頰が手に触れた。404の方に連れて行ったが彼女はおとなしく付いて来た。
車のクッションに彼女を横たえ毛布とコートをかけてやった、技師は車のサンバイザーを下ろしワイシャツとセーターを吊るしたがそのせいで車の中は外の世界から完全に遮断された。
明け方になってドーフィヌの若い娘が技師の耳もとでずっと向こうの方に街の明かりが見えたような気がして途端に涙が出てきたと打ち明けた。

夜が明けると濃い朝靄が立ち込めて20メートル先も見えなかった、その日は奇妙な事に車がスムーズに動き二、三百メートル前進したそして申し合わせたようにラジオから新しいニュースが流れてきた、パトロールと警察が昼夜を分かたず復旧作業にあたっていると報じた。

二、三日の間雪が休みなく降り続いた、おかげで車を数百メートル進めるにも雪かきをしなければならなかった。

食料と水は何とか補給できた、その方法はあまり褒められたものではなかったが、そうと分かっても誰も驚かなかっただろう。タウナスにできる事は共有の資産を管理し出資を抑えて水と食料を補給する事だった。フォードマーキュリーとポルシェが毎晩食料品を抱えてやってきた。タウナスと技師は健康状態に応じて水と食料を配分した。

Idの老婦人は昏睡状態だが奇跡的にまだ生きていた、尼僧の1人は渋滞の疲れで頭が少しおかしくなっていた、兵隊の妻と203の奥さんは子供達の世話をしていた、dkwのセールスマンは技師にドーフィヌの若い娘を取られたので子供達にいろいろなコントを聞かせて遊んであげていた。夜になるとそれぞれ秘めやかな自分達の生活に戻っていった。

シムカの若者はある日技師とドーフィヌの若い娘が口づけを交わした後だろうか技師の首のあたりを愛撫しているのを見た、シムカの若者はやりきれなくなって他のグループの子でいいから車に引っ張り込めないか考えたが空腹のうえ寒さが厳しかったのでとても行動を起こす気にはなれなかった。

寒さが緩み、雨と風の季節が訪れたおかげで食料の調達も難しくなり気分まで滅入ってきた、けれどもしばらくすると明るく爽やかな日が続いて人々はようやく車から降りて互いに行き来するようになった。

再び近くのグループと交渉するようになりかねてから反目していた前方のグループとも和解することができた、どういうわけかフォードマーキュリーが突然姿を見せなくなりそのことがひとしきり話題になった。ポルシェは巧みにブラックマーケットを操っているらしく相変わらず食料品を持ってやってきた。水と食料は何とか補給できたがポルシェに払う金がなくなった時どうするかタウナスと技師は話し合った。いっその事殴り倒してどこで食料と水を手に入れているのか聞き出してみようと話したがその頃になると車の列が思いのほかスムーズに進むようになっていたのでここで台無しにしてしまうのはまずいので様子をみようという事になった。技師は何があっても驚かないと心に決めていたがドーフィヌの若い娘から秘密を打ち明けられた時は流石に動転した、けれどもその後こうなったのも無理はない2人の間に子供が出来たというのは、道路脇で用を足すのと一緒で自然の成り行きなのだと考えた。idの老婦人がなくなったが誰も驚かなかった。前の方のグループでいさかいがあったがタウナスがその場を収めた。

いつ何時何が起こるか全く予想がつかなかった皮肉な事に最も無責任な人間がそれを発見する事になった。

シムカの屋根に登っていた若者が地平線の様子がいつもと違う事に気付いた、若者はその事を404に伝え404はドーフィヌに何か言うと慌てて車に戻った。
シムカの若者は屋根の上から何度も同じ事を繰り返し叫んでいた、その時鈍い地鳴りのような音が聞こえてきた、タウナスはグループの者に車に戻れと命令した車が動き出した、ただこれがいつまで続くかが問題だった。404はドーフィヌに微笑みかけたが心の中ではいつものようにすぐに渋滞するのではないかと考えていた。しばらくファーストで走った後セカンドに入れた、これまでのようにニュートラルに戻す必要はなくサードに入れる機会をうかがった、404は左手を伸ばしドーフィヌの手に触ろうとしたが指先が触れた程度だった彼女は期待と不安の入り混じったような微笑みを浮かべていた

車を走らせながら404は考えたパリに着いたらまずシャワーだその後食事をとって酒を飲もうそして彼女と愛し合ってこれからの事を話し合おう。

ギアはサードに入り車はスピードを増していく、404はドーフィヌと目を合わせようと左側を見る、車が速度を上げ始めたので車の列が乱れドーフィヌは1メートル前方を走っている、彼女が振り返り404と離れていき不安そうな表情を浮かべたので速度を上げようとしたが次々と見たことのない車が間に入ってきて以前のグループはもうバラバラになっていた。

それぞれの列の速度に合わせて抜きつ抜かれつしていたやがて日が暮れてどの車もライトをつけた、スピードメーターの針がぐんぐん上がり始めた、初めのうち404はドーフィヌに追いつけるだろうと気軽に構えていたが少しずつ不安がつのりはじめた。

あのグループはもう解体してしまい、みんなと挨拶したりタウナスと戦術会議を開いたり、明け方にドーフィヌの愛撫を受けたり、子供達の笑い声を聞いたり、数珠を、くっている尼僧の姿を見ることも出来ないと考えた。

シムカがブレーキを踏んだのでひょっとするとまたみんなに会えるかもしれないと慌てて車から飛び降り、前の方に駆け出した。フロントガラス越しに覗き込むと、見知らぬ人がびっくりしたような(多分怒っていたのだろう)顔で技師を睨みつけた。

クラクションが鳴り始めたので404は仕方なく車に戻ったそれを見たシムカの若者は気持ちはわかりますよと親しみのこもったジェスチャーをし、彼を励ますように前方を指差した。
再び車は動き始め、渋滞が完全に解消したかのように車がスムーズに流れ始めた404の左側を一台のタウナスが走って行った404は一瞬以前のグループが再び集まってこのまま走っていけると考えた、しかし横を走っているのは緑色のタウナスで女性のドライバーだった。

こうなればもう車の流れに身をまかせ何も考えずにまわりの車の速度に合わせて機械的に走るより仕方がない。兵隊のフォルクスワーゲンに皮の上着を置き忘れてきた。渋滞がはじまったばかりの頃に読んだ小説はたしかタウナスが持っているはずだし、 尼僧の 2HPにはほとんど空になったラヴェンダーの香水瓶があるはずだ。 シートの黄には、マスコットにすればいいわと言ってドーフィヌがくれた熊のぬいぐるみが置いてあったので、彼は時々それを右手で撫でた。ばかばかしい話だが、九時半になればまた食糧の配給がはじまり、病人たちを見舞ってからタウナスやアリアーヌの百姓と現状について話し合う、そのあと夜がふけると、星空、あるいは曇空の下をドーフィヌがこっそり自分の車にやってくる、そんな毎日の生活がくり返されるような気がしてならなかった。そうだ、きっとそうなるはずだ。これまでの生活が一瞬のうちに崩壊するなんて考えられない。水が底をつきはじめていたが、兵隊がなんとかしてくれるだろう。いずれにしても、ポルシェがいる。言い値どおりに金を払ってやりさえすれば、必ずどこかで水を都合してくるはずだ。ラジオのアンテナでは、赤十字のマークが入った旗が狂ったようにはためいていた。車はいま時速八十キロで、少しずつ明るさを増して行く光に向かってひた走っている。なぜこんなに飛ばさなければならないのか、なぜこんな夜ふけに他人のことにまったく無関心な、見知らぬ車に取り囲まれて走らなければならないか、その理由は誰にも分からなかったが、人々は前方を、ひたすら前方を見つめて走り続けた。

コルタサル 石蹴り遊びがトリッキーすぎて馴染めなかったが短編はなかなか面白かった。

【ペドロ パラモ】 ファン ルルフォ 感想その2

⭕️あとがきから

ファン ルルフォは【燃える平原】と【ペドロ パラモ】しか書いていない。

批評家が1980年に100人あまりのスペイン語圏の作家や批評家達におこなったアンケートでラテンアメリカ最良の作品としてトップの座を分かちあったのは ガルシア マルケスの【百年の孤独】とルルフォの【ペドロ パラモ】だった。

ペドロ パラモは70の断片から出来ている。断片化のおかげでこの小さな作品が途方も無いダイナミズムを得ていることに気づくのである。

とくに小説の末尾を冒頭につなげて、作品をひとつの円環の中に閉じておくためのさまざまな工夫が、みごとに功を奏している。その中のいちばん小さなディテールは、イネス・ビヤルパンドの店だろう。この店は二回しか出てこないが、冒頭で は祖母に頼まれてペドロ・パラモがつかいにいく店だし、末尾ではアプンディオが酒を飲みに立ち寄るところだ。
るところだ。
またいちばん最後の断片で血だらけのペドロパラモを抱えおこすダミアナは、作品のはじめのほうでコマラにやってきたファン・プレシアドを出迎える女性のひとりである。むろん、ロバ追いアブンディオの役割がいちばん大きく、一一回しか登場しないが、 冒頭では父親をさがすファン・プレシアドをコマラに案内し、末尾ではその代理として父親(自分の父親でもある)ペドロ・パラモを殺すのだ。 そして時間的には、最後の断片のあとに、最初の断片がつづくという仕組みになる。
青々とした畑や、緑の丘や、蜜や、露(水)は生命のシンボルである。しかしその緑豊かな大地も、やがて荒涼とした荒れ地に変貌を遂げる運命だ。不毛と崩壊の宿命は、ペドロ パラモの名前の中にすでに刻み込まれているのだ。ペドロは「石」、パラモ荒れ地を意味する。彼の死の場面を描いた末尾の一文も、 その名前と響きあう。
「乾いた音を立てて地面にぶつかると、石ころの山のように崩れていった」

ガブリエル・ガルシア=マルケスは、最初の4冊の本を書いた後、小説家として八方ふさがりになったように感じ、1961年に『ペドロ・パラモ』を見つけ、人生が変わったと述べている。ガルシア マルケスは、「(ルルフォの公刊されたすべては全部合わせても)合計300ページしかない。だが、それはソポクレスが我々に残したものとほぼ同じページ数で、やはりソポクレス同様に永遠に残るものと信じている」と語っている。






【ペドロ パラモ】ファン ルルフォ 感想その1

コマラにやってきたのは、ペドロパラモとかいうおれの親父がここに住んでいると聞いたからだ。おふくろがそれを教えてくれた。おふくろが死んだらきっと会いにいくと約束して、 そのしるしに両手を握りしめた。おふくろは息をひきとろうとしていた。
だから何でも約束してやりたい気持ちだった。「きっと会いに行っておくれよ」とおふくろはおれにすがるように言った。「父さんはこういう名前だよ。おまえに会えばきっと喜ぶよ」 するとおれは、 ああそうするよ、と言うよりほかはなかった。

だがその約束を果たす気は無かったがほんのついこの間、気が変わりペドロパラモという人間が期待となり会いに行くことに決めたコマラに来たのはその為なのだ。
八月の暑い中途中で会ったロバ追いにコマラの場所を聞き一緒に向かった、コマラには誰も来ないからお祭り騒ぎになるだろうとロバ追いは言った。何故コマラに来たか聞かれ親父に会いに来たと「親父さんの名前は?」「ペドロ パラモという名前しか知らないんだ」「なるほど」
しばらくしてロバ追いは言った、「俺もペドロ パラモの息子なんだ」
「ペドロ パラモはどんな人間だい?」「ありゃ憎しみそのものだ」と男は答えた。
ロバ追いは立ち止まって言った「ここから見える広大な土地は全てあの男のものだ俺たちはペドロ パラモの息子に違いないが産んでくれた母親連中はゴザの上っていう始末だ」
町に近づくと誰もいない聞いてみると本当に誰も住んでいないという、「じゃあペドロ パラモはどこにいるんだ?」「ペドロ パラモはとっくの昔に死んでいるのさ」
どの家もからの街を歩いているとショールをかぶった女を見かけた。幽霊かと思ったがちゃんと人間だった。「エドゥビヘスの奥さんの家はどこだい?」「あそこの橋のたもとの家だよ」

俺はコマラに残った。ロバ追いはそのまま行ってしまったがこう教えてくれた。「この先に俺の家がある、来るんなら歓迎するよ。ま 旦那がここに残るっていうならそれもいいだろうひょっとしたら誰か生きてる人間に会うかもしれないしな」「どこか泊まれる所はないかな?」「エドゥビヘスを探しな、まだ生きてたらの話だがね俺の紹介だって言えばいい」「それであんたの名前は?」「アブンディオ」姓の方は離れていて聞き取れなかった。

「エドゥビヘス ティアダだよ お入り」
俺が来るのを待っているようだった。「それであんたあの人の息子ってわけだね」「誰のだって?」「ドロリータスさ」「そうだが何で知っているんだい?」「あんたが来るってあの人が知らせてくれたのさ、それも今日来るってね」誰が知らせたんだって?俺のお袋だって?」「そうさ」「おふくろはとっくに死んじまったよ」「一人で寂しかっただろうよ、私達は大の仲良しだった私の事言ってなかったのかい?」「一度も」「私は何度も言ったわドロレスの子は私の子供になるはずだったんだって」
俺はこの女は気が狂ってるんじゃないかと思った。

便所の中でスサナの事を考えていた、母親がいつまでトイレに入ってるんだと注意する、おばあちゃんの所へ行ってトウモロコシ粒もぎの手伝いをしてこいと言われる。
手伝いに行くともう終わったからココア挽きをやってくれと言われたがココア挽きの機械が壊れていたから買いに行くことに、家から出る間際「ペドロ」と呼び止められるが彼には声は届かなかった、もうだいぶ遠くへ歩いていたのだ。

「そうなのさ私はもう少しであなたの母親になる所だったんだよ」「何も聞いてないよ、あんたの事を知ったのはアブンディオというロバ追いに教えてもらったからだ」「まだ私を覚えていたんだ客をうちに連れて来たらお金をあげていたんだ。でもいつの日か顔の近くで爆竹が爆発して耳が聞こえなくなりそれ以来あまり話もしなくなってしまったんだよ」「俺の言ってる男はちゃんと聞こえていたけどな」「じゃあ別人さアブンディオはもう死んでいるしね」「そうだろうな」
話に耳を傾けながら前の女を見た。顔は血の気がなく手はしなびていた、目は隠れて見えず首から聖母マリアのメダルがぶら下がり、罪人の避難所と書いた札がついていた。

「あんたに話そうとしてた話だけど ドロレスはペドロ パラモに夜家に来るように誘われていた日
有名な占い師に今日は月が荒れているから男には指一本触れさせてはならないと言われ 代わりにわたしにペドロ パラモの所へ行ってくれと頼んだんだ もちろん断ったが ドロレスはどうしてもというので渋々引き受けた でも本当はわたしもペドロ パラモのことを好きだったから本当は嬉しくて行ったんだ でもその日彼は前の日のどんちゃん騒ぎで疲れて一晩中いびきをかいて寝ていたよ 結局は何もなかった」「その次の年にドロレスとの子供ができたんだけど もしその日にわたしがしていたらあなたはわたしの子供だったのかもしれなかったんだよ」「きっとあなたの母さんは恥ずかしくてこの話をしたくなかったのかもしれないね」

あの人は結婚してペドロ パラモに受けたひどい扱いを恨んでいた。飲み物が冷めていれば怒鳴りつけたり夜明け前から食事の用意をさせられたりした。ある日耐えられなくなり姉さんの所に帰りたいと言うと遠慮しないでさっさと出て行けと言われ出て行きそれ以来戻ることはなかった。
いろんな目にあったよと俺は言った、ヘルトゥディスおばさんの所に厄介になったが何で亭主の元に戻らないのかとおふくろによく言っていたよ。その女は俺の話に耳を傾けていると思ったがふと見るとふと見ると遠くを見ていた。やがて口を開き「もう休んだら」

「どうかしたのか?エドゥビヘス」女は眠りから目を覚ましたように首を振った。「メディアルナを走るミゲルパラモの馬だよ」「メディアルナには誰か住んでいるのかい」「誰も住んじゃいないよ」「というと?」「馬が主人を探して行ったり来たりいつも走り回っているだけさ」「馬の走る音なんか聞こえない」「事の起こりはミゲルパラモだった、恋人に会いにコントラの街に行ったきり死んで戻ってこなかった、その時の馬が今も走っている、今も聞こえるだろう?」「何も聞こえないよ」
「さっきミゲルパラモが帰らなかったって言ったけどあの晩馬が通り過ぎたと思ったら部屋のドアを叩く音がして見に行くとミゲルパラモのだった、どうしたのと聞くとあの子に会いに行くと霧や煙が立ち込めてコントラの街がなかった、コマラの連中に話すと頭がおかしいと言われるからあんたに言いに来たと言った」「頭がおかしいんじゃなくて死んじまったんだよミゲル、あの馬はいつかあんたを殺すって言われてただろう」「俺はただ親父が作った石塀を飛び越えただけさ、どこまで行っても煙っててきりがないんだ」「あんたのお父さんは苦しむだろうねかわいそうだよ。さ ミゲルもうお行き安らかに眠っておくれお別れに来てくれてありがとうよ」
夜明け前にメディアルナから召使が来てこう言った「ペドロ様からのお願いでミゲルの若旦那が亡くなったので来て欲しいそうだ」ミゲルをかつぎ込んでだいぶたってるのかい?」30分とたってないこの事がわかったのはミゲル様の馬が一人で帰って来てそわそわしていたからだ」
メディアルナの使いは帰っていった
「あんた死のうめき声聞いたことあるかい?」
「いいや」「その方がいいのさ」

レンテリア神父はくるりと向き直りミサを終いにした「神父様あの人を祝福してやって下さい」「ダメだ あの男は悪人だった」ペドロパラモが近づいて来てそばにひざまずいた。
「せがれを憎んでいるのは承知していますあなたの弟殺しや姪ごさんに乱暴し神父さんにも何度も無礼をし憎まれても仕方のないことかもしれないだけどいまは忘れてもらえませんか、せがれを見捨てないで下さい」彼は一握りの金貨を置いて立ち去った「教会へのお布施です」
神父は祭壇に金貨を備えミゲルを地獄に落としてくれと祈った、それからうずくまり泣き続け終いにこう言った「わかりました主よあなたの勝ちだ」
家に帰り姪ごのアナに今日はミゲルの葬式だったと言うと「今はもう地獄のどん底にいるわね」神父はついわたしは許しを与えてやったのだと言う所だったが言わなかったこれ以上彼女を傷つけることはできなかったから、彼女の腕をとってこう言った「たくさんの悪さをしたあいつを連れて行ってくれた神様に感謝しよう、今天国にいるかもしれないがそれは問題じゃない」
レンテリア神父は眠れなかった、妹のエドゥビヘスを救ってくれと泣きついてきたマリアティアダの顔が頭から離れなかったのだ
「妹はいつも親切だった持ってるものは全部人にやった子供まで産んでやった優しい子だったからそれをいいことに男たちはそれを利用したんだ」「だが自分で命を絶ってしまった、神のみこころに背いたのだ、グレゴリオミサでもやればあるいはな、しかし金がかかる、このままにしておこう神のみこころにすがるしかない」「はい神父さま」どうして許してやらないのか天国や地獄について自分は何を知っているというのだ」

目がさめるとあたりはしんとしていた、扉が左右に開いた「エドゥビヘスかい?」「ちがうわダミアナよ、うちに泊まりにきなよ寝るところがあるから」「ダミアナ シスネロス?メディアルナに住んでいた?赤ん坊の時めんどうを見てくれたダミアナっていう人のことをおふくろに聞いた事がある」「そう私だよ、生まれた時からあんたを知ってるよ」「一緒に行くようるさくて寝れやしない」「ずいぶん昔トリビオ アドルテがここで縛り首にされたからさ、しかしここの扉を開ける鍵なんて無いのによく入れたね」「エドゥビヘスが開けたんだ」「エドゥビヘス ティアダ?」「ああ」「かわいそうなエドゥビヘスまだこの世をさまよっているんだね」

フルゴル セダノはトリビオ アドルテに対して訴訟を起こした「所有地の無断使用のかどで告訴します」二人はエドゥビヘスの酒場にいた、エドゥビヘスに奥の部屋を貸してくれと頼んだ「なあフルゴルさんよあんたの主人の大バカ野郎にはヘドが出るぜ」今でも覚えているがそれがあいつが口にした最後の言葉だった。

ペドロパラモの家のドアを叩いた、あまりにも
待たされたので帰ろうとした時ペドロパラモが現れた「入れよ、フルゴル」二人が会うのは2回目だった1回目はペドロパラモが生まれたばかりの時だったから知っているのはフルゴルだけだった。だから初めて会うのと同じだった。ところがどうだろう対等みたいな口をきくではないか。「座れよフルゴル」「立ってる方がいいのさペドロ」「好きなようにしろだけど〈さん〉をつけるのを忘れるな」奴の親父でさえ俺にそんな口は聞かなかった。
「あの事はうまくいっているのか」「ダメですな何も残っていない家畜も最後の一頭まで打っちまいましたからね」借金がどれくらいあるのか書類を見せてやろうと出し始めた時ペドロパラモの声にさえぎられた「額なんてどうでもいい知りたいのは誰に借金があるかって事だ」
「払う金なんぞありゃしないそれが問題です、あんたの家族が使い果たしたから」
「明日から一つずつ片付けていこうプレシアドの所から始めるぞ借りが一番多いといっていたな」「今は妹のドロレスが持ち主になってるあのエメディオって牧場だからそのドロレスに金を返さなきゃならない」「お前俺の代わりに明日ドロレスに結婚を申し込むんだ俺が首ったけで愛してると伝えてついでにレンテリア神父に式の用意を頼んでくれ」「座らねえか」「座りましょうペドロさんあんたが好きになってきましたよ」

あの小僧どこであんな抜け目のない手を覚えやがったんだろう亡くなったルカスの親父は使い物にならんといっていたのに。

ドロレスを口説き落とすのはわけなかった、目が輝き顔がほころんだ。急すぎるから八日間待ってくれと言われたが強引に明後日に約束して帰った。

ダミアナ シスネロスは俺にいった「ここへ来る途中お葬式の参列者の中から姉のシクスティーナが出てきた姉はあたしが12の時に死んだ一番上の姉だった、だから新しいこだまを聞いても驚いちゃいけないよファン プレシアド」「俺が来るのはおふくろから聞いたのかい」「ちがうよ、そういえば母さんは元気かい」「死んだよあんたにもわかってると思ってたけど」「どうしてわかるのさ」「じゃあどうして俺を探し当てたんだ」「……」「ダミアナあんたは生きてるのかい教えてくれダミアナ」突然自分だけがひっそりとした通りにたたずんでいた「ダミアナ」と俺は叫んだ。

男が横切った「すまないが」と声をかけた「すまないが」と自分の声が帰ってきた。
俺は引き返そうと思ったその時誰かが俺の肩に手をかけた「ここで何をしているんだい」父親を探しているんだ」「ま 入れよ」中に入る天井が半分落ちた家に1組の人男女がいた。
「あんたがた死んでるんじゃないだろうね」
女は微笑み男はじっと俺を見た。二人とも素っ裸だった、「呻きながら戸に頭を打ち付けているのが聞こえたから外に出たらあんたがいたんだ」「今は寝たいだけなんだ、ここで寝させてくれないか」

夜明けが少しずつ俺の記憶を消していった、それまで耳にしていた声には音がなかったことに気づいた夢で聞く言葉のように。
目が覚めた時真昼の太陽が輝いていた。「旦那はどこに行ったんだい」「兄さんなんだ、野生の子牛を探しに行ったよ」「ドロレス プレシアドを知らないか」「ドニスが知っているかもしれない」ドニスが帰ってきた「もといた所に帰りたいんだ、明るいうちに出かけるよ」「明日まで待ちなどの道も荒れてる明日俺が道を教えてやるよ」

夜になり男と女が出て行くと歳をとった女が部屋に入ってきて皮の箱を引っ張り出し探った後忍び足で出て行った男と女が帰ってきてそのことを話すとそうやって人の気を引こうとしている呪い師だと言われた。

男は子牛を狩りに出て行った「きっともう帰ってこないかもしれないみんなそうやって帰ってこなくなった、食べと物があるから食べなあんたのために都合してきたのさ姉さんがシーツと引き換えに持ってきてくれたんだよあんたを驚かしたのは姉さんだったんだよ」

聞こえるかいと小さな声で聞いてみた、するとおふくろの声が帰ってきた「どこにいるんだい」「母さんの町で母さんの知ってる連中と一緒だよ」「見えないね」

「ドニスは戻らないよ 誰か代わりの人が来たら出て行く機会をうかがっていたからね」

真夜中に息苦しくて目が覚めた女の体はぬかるみのなかに溶けるように崩れていくのだった、そのうち空気がなくなり苦しくなってきた、空気が欲しくて外に出たが暑苦しさは依然として体にまといついて離れなかった、というのも空気がどこにも無かったからだ気だるい淀んだ闇しかなかった。

吐いたり吸ったりしているうちに空気がだんだん薄れていった、とうとうかすかになった息まで指の間から漏れて永久になくなってしまった。泡立つ雲のようなものが頭上で渦巻くのを見た、やがてその泡に包まれてもやもやした物の中に溶け込んでいった、最後に見たのはそれだった。

「そんならファン プレシアドさんよ、お前さんは息が詰まって死んじまったっていうのかね、このわしがお前さんを見つけたのさそばにドニスがいて二人で引っ張ってきて埋めてやったのさ」「そういうことになるなドロテア、溶けていく女の家から出ると広場からざわめきが聞こえるから行ってみるとあたしたちのために神に祈ってくれよという声が聞こえた、それを聞いた時魂が凍ったそしてあんたたちは俺を見つけたのさ」「自分の土地を離れなきゃよかったのさ、なんでここに来たんだ」「ペドロパラモを探しに来たのさ」「もう怖がらなくていいよ楽しいことを考えるようにした方がいいずっとこの土の中にいなくちゃならんのだからね」

誰かが戸を叩いた フルゴル セダノだった ミゲルが殺されたと報告を受けた ペドロパラモは唖然としたが、明日馬を殺せ、それから泣いている女たちに俺のせがれくらいで大騒ぎするなと言ってくれとフルゴルに伝えた。

レンテリア神父はミゲルの死はペドロが親分風を吹かせ始めた時から始まっていたと思っていたミゲルの母がお産の時に亡くなり引き取るようにペドロの元に連れて行ったのは神父だったのだ。

墓の中で独り言を言う女の声が聞こえるのでドロテアに聞くとスサナという女でペドロパラモの最期の女房でペドロはスサナの事がとても好きだったらしい。

ペドロはスサナを手に入れたくていつも手紙を書いていたがスサナの父にいつも断られていたしかし世の中が物騒になるに連れてスサナの父はついに娘を連れてペドロの元に来ることになったペドロはこれを三十年も待っていて泣いて喜んだ。
スサナの父はペドロの家から鉱山まで働きに行きたいと行ったので鉱山に行っている時に始末する命令をフルゴルに伝えるスサナの父は殺され、スサナの元に幽霊として現れた。

どもりと呼ばれた男がメデイアルナにペドロパラモに会いたいとやって来た。
フルゴルが殺された、ペドロの土地をもらいに来たという革命家達に殺された

フルゴルの事はそんなに気にはならなかったいずれにしても棺桶に片足を突っ込んでいるのと変わりは無かったからだ、それよりスサナの事が気になった部屋に閉じこもり寝たきりで眠っているのか起きているのかすら分からなかった彼女がこの家に来てからずっとこうだった彼女を苦しめているのが何なのか知りたかった。

日が陰る頃革命家の男達が現れた、ペドロパラモは夕食を振る舞った後ろにはティルクアテが隠れて様子を伺っていた、金と三百人の人手を渡して協力しようとペドロは言うと約束を破ったらただじゃおかないと言い革命家達は喜んで帰って行った。
ティルクアテに金と人を預け奴らに合流しろと命令した「後はどうすればいいかお前にはわかってるだろう?」

墓の中のファン プレシアドは女の声を聞いた。
女はある日男の帰りが遅かった晩誰かが足を温めてくれていると思ったら朝足に新聞紙が巻かれていた。起きると人が来て男が死んだと知らせた。女の入っている棺が壊れる音が聞こえた。

ティルクアテはビヤ派の人間と渡り合ってやられたとの噂が、詳しい事は分からなかった。

ダマシオが戻って来るとビヤ派と揉めたが今は組んでいると言うしかし金がなくなったのでペドロパラモに借りに来たもう貸す金はないからコントラの街を襲えと言って返すと男達が一人残らずいなくなっているのに気がついた、後に残ったのは彼だけだった。

スサナは暗いのが怖いために三年間部屋の明かりを点けっぱなしにしていたが、明かりが消えていて死んだんじゃないかと町で噂になった。

レンテリア神父はスサナが死を迎え入れる準備が出来るようにスサナの元へ来ていた、自分のいう祈りをくり返させた。周りには臨終を見届ける者達がいた。

「わしはスサナの死ぬのを見たんだよ」
「今なんて行った?ドロテア」
「スサナが死ぬのを見たって言ったんだ」

明け方になって教会の大鐘がなった、三日間なり続きみんなの耳がおかしくなった。「スサナが死んだんだとさ」鐘に誘われて方々から人が集まり祭日と変わらない賑わいだった。

ティルクアテは相変わらずいろんな連中と手を組んで争いをしていた。

ロバ追いのアブンディオ マルティネスは妻が死にお金が必要なので酒場で酒をあおりふらふらの状態でペドロパラモの元へ向かった。死んだ女房を埋めたいから恵んでくれと言い ペドロパラモを刺し殺した。ペドロパラモは「これが俺の死だ」と呟いた「とにかく新たな夜が来なければいいと思った」

肩を叩かれたので、体を起こして、身構えた。
「あたしですよ、旦那さん」とダミアナが言った。「昼ごはんを持って来ましょうか?」
ペドロパラモは答えた。
「あっちへ行くさ。いま 行くよ」
ダミアナ・シスネロスの腕につかまって歩こうとしたが、 二、三歩進んだところで倒れた。心の中で何かを哀願するようだったが、ひと言もその口からは洩れてこなかった。乾いた音をたてて地面にぶつかると、石ころの山のように崩れていった。

【子犬たち】マリオ バルガス リョサ 感想

1


その年はまだ、みんな半ズボンをはいていて、ぼくたちはタバコも吸わず、サッカーが何より好きで、波乗りの練習も始めたばかり、やっと〈テラサス・ クラブ〉 の飛込み台の二番目の板から飛び込めるようになり、腕白で、つるつるした肌をし、好奇心が強くて、ひどくすばしっこく、がつがつしていた。 クエリャルはその年、 シャンパニャ校に入学したのだった。

ある朝父親の手に引かれ彼(クエリャル)があらわれた。教室の間の僕らの間の席になった。
僕らとはチョート、チンゴロ、マニューコ、ラロの友達四人組。
クエリャルはガリ勉で最初クラスで5番目の成績をとった次の週は3番で次の週からあの事故までずっと首席を通した勉強を怠け成績が落ちたのはあの事があってからだった。
クエリャルは仲間としていい奴だった、テストの時は答えをそっと教えてくれるし、飴やキャラメルをおごってくれた、僕ら四人を合わせたよりたくさんの小遣いをもらっていた。
僕らはクエリャルをサッカーに誘うが父親に止められているからと先に帰ってしまう。しかし僕らは彼をチームに入れてあげたいと思っている。しかし物事を諦めないクエリャルはチームに入りたい一心でその夏、猛練習し翌年にはチームのセンターフォワードのポジションを獲得した。
ある日の練習後クエリャルがシャワーを浴びていると学校の檻で飼っているデーン種の犬のユダがシャワー室に現れ吠えていた。クエリャルの泣き声、悲鳴、咆哮、飛びかかる、音ぶつかる音、すべる音、そしてその後には犬の吠え声だけになり先生たちが駆けつけ、こいつは酷いと絶望の声を上げた。素っ裸のクエリャルは血まみれでトラックに乗せられ猛スピードで病院に運ばれた。その後先生はユダを追い詰め殺すかのように鞭を振るっていた。
学校では毎日クエリャルの回復が祈られた、しかし生徒同士でその話をしていると先生に殴られた。
授業を終えてお見舞いに行くと、顔も両手もどうもなっていなかった。クエリャルにどこを噛まれたのか聞く、ちんこかい?と聞くとそうだよと顔を赤らめていった、するとクエリャルのお母さんたちが部屋に入ってきてこの事は秘密にしてほしいらしく僕らは早々に帰された。
明日から始まるサッカーの試合に出れなくて可哀想にと僕らは思った。
2
ようやくクエリャルは学校に出てきてこれまで以上にスポーツに熱中した。それに引きかえ勉強にはちっとも身を入れなくなってしまった。
それもそのはずあの事件以来、クエリャルについてはどんなに低い点数を取ってもどんなに酷い宿題を提出しても全てパスという具合だった。その理由はクエリャルの父親が学校にうちの息子になんという事をしてくれたんだと怒鳴り込んだかららしい。それ以降デーン犬のユダがいなくなり白ウサギが4匹檻の中に入れられていた。
クエリャルを甘やかすようになったのは先生たちだけではなく彼の両親も同じだったサッカーをやっても怒らずむしろどっちが勝ったんだと聞いてくるようになり、欲しいものはなんでも買ってくれるし好きなようにさせてくれていた。
彼が〈ちんこ〉と呼ばれ始めたのは、事故後間もない頃だった。最初の頃クエリャルは泣いて先生に言いつけた、そして父親に言われた通り黙って言われるな、相手の鼻面をへし折れとの教え通り、言われた者には所構わず殴りかかった、しかし彼が嫌がるほどみんな面白がってちょっかいを出した。次第に街でも知られるようになりいたるところで〈ちんこ〉と呼ばれた。
たまに僕らも間違って〈ちんこ〉と言ってしまう事があると、クエリャルは僕がいないときにはみんなで行っているんだろうと、ものすごく怒った。
6年生の頃には彼も諦めあだ名にも馴染んでいき呼ばれても知らんぷりをするか時には冗談を言ったりするようになった。中等部の一年になると、クエリャルと呼ばれるとかえってからかわれているんじゃないかと思った。新しい友達には、初めまして僕〈ちんこ〉のクエリャルよろしく、と言って手を差し出すようにさえなった。
もちろんこれは男同士の事で女の子相手では話がまた違った。というのもその頃になるとみんなスポーツの他に女の子にも関心が出てきたから誰と誰がキスをしていたとかそのような事が話題の中心になるようになった。みんなで女の子を見てどの子がいいとかで騒ぎあったりしたそして僕らは前ほどサッカーをやらなくなっていた。
みんなで女の子とのパーティの為にダンスを練習し、タバコを吸う事を覚えた。
以前は世界で一番好きな事はスポーツと映画でサッカーの試合のためならどんな犠牲もいとわなかったものだが今やいちばんの感心事は、女の子とダンスに変わり何を差し置いても逃さない事は、土曜日に行われるパーティだった。パーティに行く前には酒場により一杯飲んでからだった。男なら一気に飲みほさなくちゃな僕みたいになと、〈ちんこ〉は言った。
みんな長ズボンを履くようになり髪の毛はポマードで梳かしつけ体もぐんと大きくなった。特にクエリャルは五人の中で一番チビてひ弱だったのが一番のっぽで力も強くなっていた〈ちんこ〉くんターザンになったな、1日1日いい体になっていくみたいだぜと僕らは言った。
3最初にガールフレンドが出来たラロは喜んでみんなに報告するとクエリャルはイライラし、酒を飲みへべれけになりラロに絡んだ。もう自分達とは付き合わず彼女とだけになるんだろうと怒っていた、酔いすぎているのでみんなでクエリャルの家に送って行った。クエリャルは翌日ラロに酔っ払って絡んでごめんよと謝り、ラロもそれを許した。
しかし何かあったのは事実だった。クエリャルがみんなの注意を引こうと突飛な行動に出るようになったのだ。僕らは彼に逆らわないように盛んに機嫌をとった。
車で無茶な運転をしたり喰い逃げをして見せたり散弾銃で家の窓ガラスを吹き飛ばした。ラロに当てつけているんだ彼女が出来た件を忘れずによほど憎んでいるんだなと僕たちは言い合った。
四年生の時、チョートとマニューコにも彼女が出来た。クエリャルは一ヶ月間家に閉じこもり学校でも挨拶しなかった。
けれどだんだんと諦めグループに戻ってくると嫉妬と苛立った感じで、彼女とは楽しんだのか?口でか?手か?スカートに手は入れたか?指は入れたのか?と嫌がらせの様にずっと聞いてきた。怒ったラロが喧嘩をした。みんなで仲直りさせたが日曜日事に同じ事の繰り返しが続いた。たっぷり楽しんだかい?さあ話せよ。
5年生の時チンゴロにも彼女が出来た。クエリャルは黙って隅の椅子に座り寂しげに酒をあおっていた。突然立ち上がり疲れたからと帰ってしまった。僕たちは協力してクエリャルに彼女を作ってやろうと考えた、あいつがいなけりゃ寂しいしあいつの事が好きだからとクエリャルの為に乾杯した。
それからクエリャルは日曜日や祝日は一人で出かけ夜の間だけみんなで合流した。日曜日はどうだった?僕は楽しかったぜでも君たちは最高に楽しかったんだろう?
しかし夏には怒りも収まり両親からプレゼントにもらった車で海に出かけた、僕らのガールフレンドとも仲良くなると女の子達はクエリャルはなんで好きな子に告白しないのかと聞き彼をおおいに悩ませたが結構仲良くやっていた。
女の子達はクエリャルの事を好きな子を知っているから告白しろと話すが自由な方がいいとはぐらかす。私たちのパーティにもなんで来ないの前はどのパーティにも顔を出して派手に騒いでダンスだってあんなに上手だったのに一体どうしたの?と問い詰める。ちゃんとした家の子は苦手ですれっからしの子じゃないとダメなのかと言うと突然クエリャルは口ごもり試験があって時間が無いと言い出す。そこで僕たちが助け舟を出し、彼には彼の計画や秘密があるんだ放っておけよいくら説得しても無駄だと言った。さあ急げ 海岸までフォードを飛ばしてくれよ。4組のカップルが砂の上で甲羅干しをしている間、クエリャルは波乗りが達者な事を披露した。女の子達はあんなに波乗りも上手で感じもいいしハンサムなのにどうしてガールフレンドがいないのかと不思議がった。みんなは目配せしラロがニヤリと笑うと、女の子は何かあるなら教えてくれというが何も無いと僕らは言った。
今は女の子達も知らないけどそのうちわかってしまうとチンゴロは言った。他人の目をそらすためにも彼女でも作れば良いのに作らないのだからばれた時も自分のせいだと言った。
日が経つにつれてクエリャルは女の子達に無愛想になり避ける様になった。
クエリャルはマニューコの彼女の誕生日パーティに一連のねずみ花火を窓から投げ込んでぶち壊しマニューコと殴り合いの喧嘩をした〈ちんこ〉がマニューコをノックアウトした。
一週間かかって二人を仲直りさせた。クリスマスのミサにへべれけになって現れ、ラロとチョートが外へ連れ出すと離せとわめきリボルバーで人を撃つと言い出す、ある日曜日には競馬場の芝地に車を乗り入れ逃げ回る人々を車で追い回した。
カーニバルでは女の子は彼から逃げ回った。嫌な匂いのするものを投げつけたり、泥やインクくつずみなどを塗りつけたりするからで野蛮人人でなし、けだものと毛嫌いされた。あるいは杖を片手にアベックの足をすくって床に転ばせたりもした、殴り合いになり彼は殴られ僕たちも加勢する事もあったがちっとも懲りなかった。こんなとをしているといつかは殺されてしまうぜ。
正気の沙汰とは思えない行いで悪い評判が立ってしまい女の子達はもうクエリャルと一緒は嫌だと言っていた、僕たちが忠告しても時には寂しそうに反省するが険しい表情で、お高くとまっている連中に言われても構わないと言った。

卒業パーティ
礼服着用オーケストラが2組入ってカントリークラブで行われた。クエリャルはただ一人欠席した。僕たちがクエリャルに女の子はを探すからどうしても来いというがクエリャルは断った。その代わりその後に仲間で集まろうと言った女の子を家に送り届けその後飲みに行く約束をした。
4
翌年、チンゴロとマニューコが工学部の一年、ラロが医進課程に入りチョートがワイズ商会で働き始めラロのガールフレンドがチンゴロのガールフレンドになり、チンゴロのガールフレンドがラロのガールフレンドになった頃、街にテレシータ・アラルテがやって来た。クエリャルは彼女にあって少なくとも一時は変わった。乱暴したり皺くちゃの洋服で出歩くのもやめた。スーツを着てネクタイを締めてプレスリー風に仕上げた髪の毛にピカピカの靴を履いた。テレシータが好きなのか?と尋ねると、そうかもしれない。
子供の頃と同じくらいに付き合いが良くなり日曜日のミサにも訪れる様になった。ミサが終わるとテレシータに声をかけデートをしたスケートしたりボウリングしたりと楽しそうだった。
好きな子もできたのでクエリャルは手術を受けにニューヨークに行くかもと言ったが手術は難しくて出来ないと手紙が届いた。僕たちは、クエリャルはもう諦めていたのに好きな子が出来て焦っているクエリャルがかわいそうだと思った。クエリャルは諦めきれずドイツやパリでは無理なのか父親に何回も確認した。
そうこうしている間にもまたパーティにも出席する様になり、悪い評判を綺麗に洗い流すかの様に模範青年として振舞った。テレシータが近くに現れると秀才の振りをして彼女を攻めおとそうとしていた。外交官に将来なるんだとテレシータに言うとまあ素敵と彼女は喜んだ。
しかし周りの女の子達は不思議に思った、二ヶ月経っても何の進展も無いのだ、女の子達はテレシータがOKなのを知っていたし彼女はいつ言ってくれるのかと待っていた。
ある日ラロが何とかしてやろうと動いた。テレシータに気持ちがあるかどうか確かめに行った。しかし彼女の方が一枚上でそんな話は知らないと言う、クエリャルはテレシータに好きだと言っているだろうと聞くと、彼は何も言わないと言う、追いかけ回してるとしても友達としてだろうとテレシータは言った。僕らは告白されたらOKするだろうと聞くと、わからない彼のことは好きだけど友達として
でも何であんなアダ名が付いているの?と不思議がった。
クエリャルは決心がつかず相変わらずだったある日クエリャルを誘って車で海岸まで行ってバーに入った。
ラロはテレシータに熱くなっているんだろうと聞く、彼は体を震わせ寂しげに笑い聞き取れない様な声で、う、うん どうしたらいいかわからない、と言った。愛していると気持ちを打ち明ければいいとラロ、そうじゃないんだ イエスというかもしれないさでもそしたらそのあとはどうしたらいいんだい?後のことは後のことさ今は言ってしまえばそれでいいのさ、とラロ。もしかしたらそのうち治せるかもしれないじゃないかとチョート。もしテレシータがあの話を知っていたらとクエリャル。僕達がもう白状させたんだけどテレシータも君に熱くなっているのさ。僕に熱くなっているのかい?
打ち明ける決心をしたクエリャル。でもそうなったらどうしたらいいんだい?手を握って、キスをして、撫でてあげればいいんだ。それから?とクエリャルみんなは大きくなったら彼女と結婚するのかとクエリャル。そんなこと今から考えられないいつか追っ払ってしまえば良いのさ、とラロ。クエリャルは彼女を愛しているからそれは出来ないと言った。しかしビールが10本目になった頃、君たちの言うことはもっともだ彼女に打ち明けてしばらく付き合って追い払うことにする。それが一番いい方法さ。
しかし、一週間、二週間と過ぎていき、決心がつかず見たことも無いほど苦しんでいた。こうしているうちに危機症状が始まった。難癖をつけて誰かれ構わず喧嘩を売り、涙をこぼして明日告白するか、しなければ自殺すると言ったり、ぐでんぐでんになるまで飲み、誰でもいいから殺してやりたいと言った。僕たちは彼に付き合い家まで送り届けしっかりしろいい加減に彼女に言えよと励ました。あんな風では気が変になってしまうのが落ちだ。
冬が終わり再び夏がやって来ると、街に建築を勉強していて高級車を乗り回す若者が現れ僕らのグループに近づいて来た。カチートという若い男だった。最初はみんな嫌がったがテレシータは私の隣に座ってと誘った。僕たちはクエリャルに早くしないと取られるぞと言った、クエリャルは構わない好きなんてことは無いと言った。
1月末にカチートはテレシータにガールフレンドになってくれる様に申し込み彼女はOK。かわいそうな〈ちんこ〉何ということだろう僕たちは同情した。あの女よくも裏切ったなと僕らは言い合ったところが女の子達はこれでいいのよ悪いのはクエリャルの方だと言った。こんなに待たせてテレシータがかわいそう、カチートはハンサムで感じも良いそれに比べてクエリャルは臆病もので意気地なしだと言った。
5
クエリャルはそれからまた無頼の生活が始まった。海に入ろうとする者なんて誰もいない日に10メートルもある波にのったのを見た。テレシータの彼に恥をかかせようとしてやったに違いない。

海が大荒れの日クエリャルが抜けてカチートが加わったメンバーで海にいると、クエリャルが車で現れた。こちらに近づいて来てこれから波にのるというがみんなはびっくりした。何てこと無いとクエリャルは海に向かいみんながハラハラと見守る中、大波にのった。こんな風にまた始まったのだ。
その年の半ばクエリャルはおじさんの工場で働き始めた、これでちゃんとした青年に戻るだろうと人々は噂したが結果は反対だった、夜は飲みあるき博打をしいかがわしい安飲み屋に通った。しかし土曜日はいつもみんなと一緒に過ごした。小話では〈ちんこ〉がいつもチャンピオンだった。食事が終わるとみんなで売春宿で楽しんだ。
そんな土曜日のある晩、僕らがホールに戻るとクエリャルがいなくなっていた、通りに出てみると車にもたれて泣いていた。


何があったんだい?何でもないよ、いやちょっと淋しい気持ちになっただけさ、と彼。人生いうことなしの坊主の頭だっていうのに、なんでまた?いろんなことでさ、とクエリャル。 たとえば、どんなことだい? とマニューコ、たとえば人間がこんなに神の怒りを買うってこととか、何だって? 何のことだい? とラロ、とても罪深いってことかい、とチョート、うん、 そうさ。 それに、ほんとにおかしいけど、たとえば、人生がこんなにつまらないものだということとか、と彼。 つまらないなんてことないじゃないか、いうことなしなのに、とチンゴロ、働いたり、酒を飲んだり、ばか騒ぎをしたり、毎日毎日、同じことの繰り返しで、気が付いたら年を取っていて、死んでしまう、ばかげているじゃないか、なあ、とクエリャル。 ナネットの所でそんなことを考えていたのか? 女たちの前でそんなことを? そうさ、それで泣いたりしたのか? うん、それに貧乏人や、盲人や、足の悪い人や、ウ二オン大通りで物乞いをして歩く乞食たちや、クロ二力紙を売り歩く新聞売り子だとか、ばかげてるだろ、な? サン・マルティン広場の靴磨きの連中なんかが気の毒になってさ、おかしいだろ? ばかげてるよ、ほんとに、でももう済んだんだろう? とぼくたち、そうとも。もう忘れたろう? もちろん。よし、その言葉を信じるために笑って見せろよ、ハハハ。飛ばそうぜ、〈ちんこ〉、 アクセルを一杯に踏んでさ、今、何時だい? ショウは何時に始まる? 知らないなあ、まだあのキューバ人の混血女が出ているかなあ? 名前は何ていったっけ? アナさ、仇名は? 雌わにさ、おい、〈ちんこ〉、もう大丈夫ってところを見せてくれよ、もう一度笑ってさ。ハハハ。
6
マニューコとチンゴロが工学士になったその年ラロが恋人と結婚したときには、クエリャルは何度か事故を起こしていて車はボロボロだった。今に命を落とすと両親も心配していた。僕達ももうジャリと遊びまわる年じゃないと言った。というのもヤクザと賭け事をしたり飲み歩いたりする様になっていたから。
仕事もしているかわからず昼間から派手な格好で歩きジャリの一団をひきつれていろいろな所に出没した。みんながあいつと一緒にいるところを見られたくないと思いだした。
ある日公道を物凄いスピードでレースをして警察に捕まった。これで懲りるかと思ったが、二、三週間後には、手をハンドルに縛り付け、目隠しをしたまま死の横断をして最初の大きな事故を起こした。二回目はその三ヶ月後、ラロの独身送別会の晩のことだった。みんなを車に乗せてクエリャルはカーブで滑りたいと言って聞かなかった。僕らは付き合ってられないから降ろしてくれといったが聞かず、タクシーにぶつかり、ラロは無事だったがマニューコとチョートは顔を腫らしクエリャルは肋骨を3本折った。僕らは喧嘩別れしたがしばらくするとクエリャルから電話をかけてきて仲直りして一緒に食事にいったが、この時ばかりは僕達と彼の間に気まずいしこりが残って二度ともとの様にはなれなかった。
それ以降会うことも稀になってマニューコが結婚式の時には、通知は出したが招待状は送らずパーティにも姿を見せなかった。チンゴロが二人の子供を連れて合衆国から帰ってきた時にはクエリャルはもう山岳地帯に行ってしまっていた。山岳地帯でコーヒー栽培をするという話だった。たまたま通りで会っても挨拶もそこそこに、元気かい?まあまあさ、それじゃあな。

ミラフローレスに帰って来たって話だぞ、すっかりイカレちゃってさ、死んだそうだぜ、北部へ行くところだったって。何で? 衝突さ。どこで? ピサマヨの危険なカーブ続きの個所だってさ。かわいそうになあ、埋葬の席で僕らは話した、ずいぶん苦しんだ、つらい人生だったろうな、でも、この最期だけは自業自得だ。

その頃にはみんなすっかり一人前の大人になっていて女房も車もあり、 子供たちはシャンパニャ校やインマクラーダ学院、サンタ・ マリア学院などに通っており、アンコンやサンタ・ローサ、 スールの海岸などに別荘を建築中で、ようやく太り始め、白髪もちらほら、腹もせり出して、筋肉はたるみ、字を読むときには眼鏡を使い、食べたり飲んだりした後はどうも気分が悪く、肌にはそばかすや小皺も目につくようになっていた。



◉感想
あとがきから
クエリャルを語る声が多声的(ポリフォニック)になっていてクエリャルを複眼的に語ることができ物語に奥行きを感じる。
例えば四人いる仲間の“誰が”、とは言わず“僕達は”と引いた視点で語られる
個人感想
段落の終わりがセリフ調で終わることが多い。

物語の内容だけでは無く会話の書き方や文章の締め方などが単調ではなくテンポが良いのでとても読みやすい

序文と終わり方が素晴らしいのに外れなし

一人一人の心象を深く掘っているわけではないのだが思春期の悩みや葛藤が痛いほどに伝わってくるのはなかなかだと思う。すべての物事を書ききらなくてもとても深い物語に感じることができる所がとても面白いと思った。

リョサの小説観
〈内容と形式(あるいは、テーマと文体、物語の配列)を分けて考えるのは不自然であり、何かを説明したり、分析する場合をのぞいて、やるべきではありません。というのも、小説の中で語られている内容は、それが語られている語り口と分かちがたく結びついているからです〉

〈物語とは語られている言葉そのものなので
す〉

まさにその通りの作品でありリョサの面白さはこの説明で全てが納得できる。

深い傷を負い大人になりきれず悩める思春期の話なので何となくサリンジャーを思い出す。

ラテンアメリカ中編の中ではベストに入る。

かなり良い。






【別荘】第二部 ホセ ドノソ 感想

【別荘】 第二部 ホセ ドノソ 感想

第二部 帰還
第八章 騎馬行進
1
大人達のハイキングは期待を遥かに上回る夢のような体験だった、しかし日が暮れると皆子供達が心配で不安になったテレシオは召使いが歌を口ずさんでいるのがこの不安の原因と決めつけ庭師の助手と言うファンペレスという男を馬車から降ろす。金を与え彼をおいていった。
2
いつも小休止する礼拝堂の廃墟にたどり着き夕食をとる事にする。一家の領地のため人はいないはずが気配を感じるので、テレシオは様子を見に行くが数分経っても戻ってこない。馬車で礼拝堂の中に入っていくとテレシオの怒り狂った声が聞こえた。中にいたのはカシルダだった子供の人形を抱いていて自分の子供だという。
エルモへネスは人形を取り上げ井戸の中に捨てる。「私の息子をどうしたの?」と尋ねるカシルダ、今やカシルダの気が狂っていることは誰の目にも明らかだった。
ファビオがカシルダと自分はここで一年も飢えをしのいできたという。大人達は今朝出発したばかりなのにおかしなことを言うなと思う。ベレニセ(大人)は「侯爵夫人は5時に出発した」の遊びでは一時間を一年と計算することがよくあるという。大人達はこれもたわいのない遊びの一部だと笑い飛ばす。カシルダはこれ以上自分達に作り話を吹き込もうとしても無駄だと告げる、エルモへネスはなにも変わっていない、変わったのだとしたらそれは人食い人種の仕業
だという、カシルダは「人食い人種なんていない自分達の悪徳を正当化するためあんた達がでっちあげた話だ」と言ったエルモへネスとリディアがカシルダ達をとらえ押さえつけた。
ファビオは12時間前に金を盗んだことを話した、原住民と一緒に金を運んでいたがカシルダとファビオが疲れて寝ている間に金とイヒニオとマルビナが原住民とともにいなくなっていた。ファビオとカシルダを問い詰め人食い人種が攻撃の準備を始めていること、別荘の子供達も人肉を食べている事、無知な大衆が無計画な反乱を起こしている事を突き止めると2人を箱馬車に入れてカーテンを閉めた、その後の2人の消息を知るものはいない。
ファビオとカシルダが語った話が本当かどうか、エルモへネスは別荘にはすぐに戻らずに仲介者を立てようと考える。問題は原住民が銀山の仕事を放棄して武装を始めベントゥーラ一族の領地を再征服しようと試みる事。金の生産が終われば一族のこれまでの生活も全て終わりになってしまう。まず召使い達に別荘に向かわせ自分達は首都へ向かいマルビナとイヒニオに金の売却をさせない事と考える。
ファンペレスが提案する、ご主人達には手を汚させない自分達使用人が別荘へ戻り子供達を守り人喰い人種を一網打尽にするので武器を渡してくれという。お前の役割は?とエルモへネスが聞くとファンペレスはエルモへネスに何か耳打ちした。エルモへネスはペレスの言う通り全ての元凶はアドリアノだと思ったしかしなぜペレスがアドリアノに恨みがあるのか疑問に思った。ペレスはアドリアノに認めてもらいたく毎年召使いとして働きに来ていたが無視され一向に気づいてもらえないため人格を否定された気分になっていた。しかしアドリアノは塔に幽閉され手の届かない所に行ってしまった、あの男を排除しない限り自分が自分になる事はできないと考えていた。
ファンペレスは戦いを始めるにはたしょうのぎせいもやむなしと言う。何かあったとしても今の別荘を引き払いハイキングで行った楽園に新しく建てればいいと言うと一族の賛同を得た、そう言えば午後に誰かが同じ事を言っていた事を思い出す。
あそこに別荘を建てれば悪い噂は全て根も葉もないデマとして片付けられるだろう。
3
執事達の部隊は最高級の馬、武器、食料を持ち出発した。今や全ては執事達の手中にあった。エルモへネスは身分の低い庭師を引き連れ礼拝堂から現れた。テレンシオ オレガリオ アンセルモ シルベストレは先頭の馬車に乗り込むエルモへネスを助けていた庭師の男の顔に重要な意味があった事に気付いた。
第9章 襲撃
1
ベントゥーラ一族が、結婚したばかりのアドリアノ ゴマラを始めて別荘に招待した時石段の横にいつも立ち続けている男を不思議におもい家族にたずねた「コローの風景画のようにあそこに赤い点があると緑の庭が引き立つから」だという、人間を飾り物のひとつに変えるこの一族を軽蔑したものか称賛したものかアドリアノにはわからなかった。
この事を理解できないアドリアノは一族から危険人物とみられていた。
ファンペレスは馬車の中でエルモへネスが井戸に捨てた子供は人形ではなく本当の子供だったと言った。1年たっているが1日と嘘をつきそうする事で使用人に払う給料も少なくできるからだという。一年たてば子供達も堕落しており収拾のつかない無法地帯と化しているだろう人喰い人種もデマではなく実際に存在する危険な存在である、今まで日の目を見なかった使用人だが今こそ武器をとって戦う時だと言い士気を上げた。
執事達は別荘の前の集落に近づき彼らを観察した。子供は皆原住民と同じ格好をしていた。子供はいまは原住民の言う事を聞くしかないと思っていた。ファンペレスは全ての子供達を区別して名前を覚えており性格まで全て分析していた。ファン ボスコは危険人物、原住民は普通に言葉を話せるが普段はわからないふりをしている。フベナルの持つ食料庫の鍵についてメラニアとファン ボスコは鍵を取り合って喧嘩していた。ウェンセンスラオは沈黙を貫き、マウロはアドリアノに熱を上げおかしくなっていた。
子供達が喧嘩をしている最中、ファンペレスは銃を発砲した、その瞬間隠れていた執事達は集落に突進した、驚くほど簡単に原住民を拘束した。子供達はメラニアとフベナルを覗いて使用人達の腕に飛び込みキスの嵐を浴びせた。メラニアとフベナルは救世主となった使用人達はこの後どんな要求をしたくるのか不安になっていた。
使用人達はここから急いで別荘の奪還に向かうと説明した。するとメラニアは使用人が先頭の車両に乗るのは許されない自分達を先頭に乗せろと言った。彼らを先頭に乗せ銃を持たせ別荘に向かった。
2
別荘は今や全く違う様相を呈していた。
原住民と子供達が農作業をしていたが執事達の一団に気付きみな武器をとっていた。アドリアノが彼らに叩き込んだのは、遅かれ早かれ一族の大人達がやってくるので体を張って戦わなければならない事を教え込んでいた。使用人達は別荘に踏み込んだ原住民達を次々となぎ倒しながら前進した、マウロとウェンセンスラオも原住民側で戦っていた。原住民の部隊は貧弱で敵ではなかった、ウェンセンスラオもとらえられた、父が危険人物とあげるファンペレスの事は知っていた。ファンペレスは弟のアガピートにどこかに閉じ込め見はれと命令した。ファンペレスは30名の兵士を従えアドリアノの塔に向かった。実際に現れたアドリアノは人間的なものへの信頼と平和を求める心に貫かれたものが持つ凄まじい神秘が浮き上がっていた。しかし部下達の銃弾で一瞬で蜂の巣になった。マウロと原住民達にも止めを刺した。
3
アドリアノ ゴマラの死は一瞬にして別荘全体に広まり銃声もほとんど聞こえなくなった。
ウェンセンスラオはどこかに逃げ出しており姿をくらませた。執事はメラニアの部屋をノックし何点か確認したい事があると言う。
第10章 執事
1
上の階に閉じこもった集団は下へ降りていく事をせず、いつもの高慢な態度に磨きをかけていた。この一団を構成していたのはメラニアとフベナルだった。使用人達に騒動の後始末をさっさと終わらせ快適に過ごす空間を確保しろと命令した。
柵を元どおりに戻すが銃弾も底をつきそうな今槍を全て戻すと身を守るぶきがなくなるとファンペレスは考え、こっそり槍を何本か隠しておいた。部下達に屋敷をくまなく捜索させたが危険の兆候は一切見つからなかった。外を見ると2人組が逃げていくように見えたが妄想なのか現実なのかわからなかった。
いつまでたってもウェンセンスラオとアガピートの居どころがつかめず原住民が2人の逃亡を助けているとみられファンペレスに痛めつけられた。ベントゥーラ一族が新しい使用人を連れてそろそろ帰ってくると噂された。1年分の給料を1日分でごまかしているのだから一戦交えないわけにはいかなかった。
ウェンセンスラオが別荘に不穏な噂を流しているとファンペレスは読んでいた。これを突き止め2人を捕まえたいと思っていた、そうすればウェンセンスラオの伝説に対して下級使用人の自分が黒い伝説として恐怖の的になれると思った。
2
執事はベントゥーラ一族がハイキングに出発してからこの別荘には時間の経過は存在しないのだと言う。これ以降時の経過について話す事は反逆罪とされ、屋敷の窓を全て閉め光も影もなく昼と夜の区別もなくしご主人様達が帰るまで歴史を止めろと命令した。
そしてテーブルには常に食事を用意しておき子供達に時間という概念をもてないようにしようと考えた。しかし料理長はそんな事より料理が底をつきそうな今いざという時のために人肉料理のレシピを人喰い人種に聞いておきたいと告げると執事は猛烈に怒りツボを投げまくって怒った。
3
全て閉め切った暗闇の中で子供達を生活させ四六時中監視した。子供達も原住民の話を持ち出すのは危険と判断しその話題には一切触れずやがて記憶から消し去った。
侯爵夫人(メラニア)は5度目の再婚を望んでいてコスメ(15)♂に目をつけた。コスメを呼んで料理をご馳走しその話を持ちかけるとコスメは自由が欲しいからと断るすると自分につれなくした仕返しにこの料理は人肉でそれを食べさせたとコスメに告げる。上の階に住んでいないものはこれまでも毎日人肉を食べさせていたと言ったコスメは嘔吐し図書館に逃げるとアラベラが中に入れてくれた。「侯爵夫人は5時に出発した」に参加してないものはみんな人肉を食べさせられていたとアラベラに伝えた、震え上がったアラベラは他の子供達にも伝えた。それ以降子供達は絶えず吐き気に悩まされ痩せ細り精神を病んでいった。数日後コスメは姿を消した。
その夜4人の男がアラベラの手足を縛り何処かへ連れ去った少なくともそれがアラベラがいなくなった事のいとこ達の憶測だった。
この後変わり果てた姿で集落の小屋の丸太に縛られた状態で目を覚ました。拷問され他人の力を借りなければ歩けなくなっていた視覚も完全に失い二度と本も読めない事に気付いた。
この事実をまえにアラベラの怨念はむっくりと起き上がり激しい憎悪に包まれた彼女は自分がこのまま生き続けられると確信した。
第11章 荒野
1
使用人達の住んでいた暗闇の地下は寝とまりのためだけに作られたのではなくこの別荘の地下には主人達にも想像しえない時間と空間の限界をはるかに凌駕する歴史と広がりがあった。
先祖がこの地に屋敷を建てたのは塩山の上に居を立て当時通貨の代わりになった塩の流通を一手に握ろうとしたためである。その後通貨は金に代わり塩山の価値が無くなると地下のトンネルや洞窟の事は次第に忘れられ年数が経ちその後のもの達はなぜこんなところに別荘が建っているのかも知らないようになった。
地下は使用人のすみかとして利用されるようになるがその陰鬱な場所に住むことを皆が拒んだ、指揮官達は働きぶりによって地上で生活できることを約束し小部屋の奥につながる地下通路を全て塞いだ。トンネルを塞ぐのに問題になったのは、打ち捨てられた隠花植物園を残すか塞いでしまうかだった。料理人は食べることも可能なこの植物園を塞ぐ事に反対した。隠花植物は人肉の味の様に偽装することができそれを子供達に人肉だと吹き込んで食べさせ吐き気を催させ子供達の罰に使えるからだった。
アガピートとウェンセンスラオは地下の暗闇で生活していた。傷を負ったアガピートは動く事が出来ない。アマデオが毎日パンを差し入れてくれていた。地下の封鎖は今日始まる。
コスメは顔の半分と片目を硫酸で焼かれていた、ウェンセンスラオはアガピートの看病を続けていた、親達が帰って来れば使用人達に仕返ししてやる事ができるだろう。上に向かうとまさに通路を塞いでいる最中だった。
昔、アドリアノ ゴマラは原住民の為に犠牲を払う覚悟があるのなら自分の息子を捧げろと言われる。息子の首にナイフを刺そうとしたが原住民が一斉に唸り声をあげてそれをやめさせたそれ以来ウェンセンスラオとアドリアノの絆は完全に絶たれていた。
今や通路は塞がれたがそこは昔、父や妹達ときた洞窟であり、集落に抜ける道があると考える。途中に差し入れのパンがあり 集落で待っていると書いてあった。
2
ファンペレスはウェンセンスラオと同じく 主人達が帰ってくると予想し、それが一番厄介な事と考えていた。しかし今は亡きアドリアノ ゴマラに全てを押し付け、彼が年の功を盾に子供達とマルランダを支配下に置きすべてを混沌とさせたと言えばそれで済むだろうと考えた。
だが屋敷内の動揺を感じていた子供達は使用人達が何を恐れていたのかよくわかっていた。
原住民達は子供達に綿毛の襲来による窒息を避ける方法を伝授していた。子供達は、1年前綿毛の被害を経験しておりその恐怖をよくわかっていた。ウェンセンスラオ、アガピート、アラベラ、アマデオは合流し集落へ向かった。
アマデオとアラベラがいなくなった事に気付いた使用人達が捜索を始めた。
執事にばれてはまずい使用人達は隠れている4人のそばを荒々しく駆け抜けた。4人はグラミネアの間を這うように進み見つからずに開けたところまでたどり着いた、だが何処へ向かっていいのか全く見当もつかず、自分達が生きていくのに必要な力すら残っていなかった。
3
朝起きると近くに塩水が湧いていた、ウェンセンスラオ、アガピート アラベラは体を洗い水を飲んで生き返った。アマデオがいないのでアガピートは辺りを捜索した、すると血だらけのアマデオが見つかった、心臓はまだ動いていた。アマデオはこの先食料は見つからないだろうから自分を食べてくれと言って息を引き取った。

3人はアマデオを順番に食べた。

(作者)この小説の草稿ではこの後3人は荒野に姿を消して二度と物語には戻ってこない予定だった。しかしウェンセンスラオの存在感によってこれは不可能だと決めた。

3人は遠くにプラチナ色の雲が見えた段々近づいてくるとそれはベントゥーラ家の一団だった、3人は「お母さん、お母さん」と近づいて叫んだ。
第十二章 外国人達
1
(作者)ある朝私は、小説【別荘】の決定稿を抱えてエージェントに向かっていた、すると顔見知りの紳士に声をかけられる。シルベストレ ベントゥーラだった。エルモへネスの所にこれから行く途中だという。久しぶりなんだから祝杯をあげようとバーに誘われる、2人の関係は創造する側と、される側という仕事上の付き合いである。
今持っている原稿は彼等一族の物語だと告げるとシルベストレは、マルランダを鉱山も含めて買いたいと言う外国人がいるので一週間後エルモへネスとマルランダに行くという、売ってはいけないと作者は言う。
自分の小説を読んで聞かせ、感想を聞くと「さっぱりわからなかった」と言われた。
マルランダはそんなに大きく無いしそんなに大量の使用人を雇ったことも無い、屋敷だってありきたりの建物で俺たちはそんな罪人でも無いし悪人でも無いし愚か者でも無いとシルベストレは言った。
作者は君達に認められるために書いているのでは無いし自分の文学理念を曲げてまで書こうと思っていないと言った。
シルベストレはエルモへネスの事務所に向かった、エルモへネスは妻のリディアもシルベストレも誰も信用していない。偽装と隠蔽と詐欺で
この難局を乗り切ろうとしていた。
2
原住民は使用人達に見張られ金の採掘の仕事をしていた。荒野の片隅に追いやられた別荘は、崩れて威厳を失った贅沢品のようになっていた。
ファンペレスは古き良き時代はまだ終わっていないとでも言うようにバルコニーを囲む手すりをいつまでも磨き続けていた。ファンペレスは地平線の遠くに主人達の一団を見つけた、敗北という名の自由を感じた、ベントゥーラ一族は新しい使用人達と外国人を乗せていた。
シルベストレは外国人を庭に案内すると「人里離れた場所にしては悪くないが残念ながら少し狭い」と言われる。シルベストレは我が国で最も広い庭園だと憤慨する。外国人の女が「あなた達の領地がこんなに狭いとわかっていればこんな廃墟同然の家にわざわざ長旅をしてこなかった」と言った。
目の前にある集落には人喰い人種がいるのだろうと外国人そうならば根絶するとベントゥーラ家に告げる。
外国人は鉱山が我々が考えるほど豊かなものであればそれを買い取り人喰い人種と綿毛は全て排除すると告げた。
テラスの下でウェンセンスラオが「お母さん」とバルビナを呼んでいた。それに気づいたファンペレスはすぐに駆け下りた。
3
ファンペレスと使用人達はウェンセンスラオを捕まえて巻き毛のかつらと女の服を無理やりに着せていた。ウェンセンスラオは抵抗した。
先頭にファンペレスそして召使いを従えその後ろにウェンセンスラオがついて歩いた。
親戚のいる部屋に近づいたウェンセンスラオは踊りながら真ん中に躍り出た。「公爵夫人は5時に出発した」の遊びにふけっていた子供達が仮装したままダンスホールになだれ込み踊り出しフベナルがチェンバロを演奏した。
ウェンセンスラオとコスメはバルビナの眼の前まで近づいた、バルビナはコスメの潰れた顔を見てバルビナは仮面を取れと言った。
屋敷は廃墟同然だし服もボロボロでみんな痩せこけてしまい一体どうしたのとバルビナが余計な事をしゃべりすぎてしまいそれについて他の者は外国人に釈明した。これは「公爵夫人は5時に出発した」の遊びに夢中になるあまり時々妄想が行き過ぎてしまうと説明した。エルモヘネスは狭窄機を持ってこさせアドリアノを幽閉していたあの塔に2人を連れて行った。
第十三章 訪問
1
男達の計画としては鉱山を見せて売買契約を結び綿毛の嵐が来る前に帰路につく。綿毛の嵐が外国人を襲うような事があれば彼らは契約書をその場で破り捨てるであろう。
エルモヘネスは外国人達にこの地域の歴史と地理を説明させようとアラベラをさがすがなかなか見つからない。執事がアラベラを連れて来たがボロボロの服に熱に震える体のまともにも立っていられないアラベラだった。外国人は心配してアラベラを支えた、執事は説明した心配ありません「公爵夫人は5時に出発した」の遊びをしていただけですと説明した。外国人の女はアラベラを連れて隣の部屋に姿を消しその一時間後にアラベラは息を引き取った。
ルドミラが外を見るとプラチナ色の雲がこちらに押し寄せてきた、それはマルビナの馬車の行列だった。彼女は最早少女ではなくとても贅沢な衣装を着ていた。マルビナは親達との話を軽く切り上げ外国人との話に集中した。
ベントゥーラ一族はその会話には入れなかった、マルビナはメラニアを見つけると懐かしいと言っていつも仲良しだったかのように抱き合った、他の子供達には目もくれずメラニアの手を取って離さなかった。
2
ファビオ、カシルダ、マルビナ、イヒニオで金を持って馬車で逃げた時に話を戻す。
ファビオとカシルダを置き去りにしてイヒニオとペドロ、クリソロゴ原住民7名で憔悴し痩せこけた姿で首都にたどり着いた。イヒニオは次第に病んでいった。彼に打撃を与えたのは行程を重ねるうちに鉄の女と化していったマルビナだった。首都に着くと彼女は原住民に報奨金を与え何処へでも消え失せるように命じた。
外国人のたむろするバーに行き金の取り引きを持ちかけた、外国人の用意した家に向かい入れられ奇抜な現代風な成り金として頭角を現し始めた。外国人達には片付けておかなければならない事があと一つあった、イヒニオの始末だった。ベントゥーラ一族の人間を殺すことはリスクがあるので、外国への旅を提案し彼を送り出した、マルビナはこれで自らの脱皮を心おきなく出来ることになった。出身、階級、名前、年齢までを跡形もなく消し去った。いつも横にいたのはペドロ クリソロゴだった。売春宿や賭博場を買いあさり外国人から受け取った代金以上の代金を手にして2人の原住民をマルランダへ派遣して別荘の様子を調べに行かせていた。
ベントゥーラ家の大人達が出発して少したった頃アドリアノ ゴマラは南側のテラスに何本もの槍に貫かれた自分の顔の落書きに気づく、マウロの仕業に違いないと考えた、そしてベントゥーラ一族逃亡の知らせを受けて山から下りてきた。原住民集団を受け入れないとアドリアノが主張したためマウロはそれに反対し姿をくらませた。ウェンセンスラオは父は自分の招いたことですっかり頭が混乱しているように見えた、上の階のメラニア達に食料庫の鍵を渡せと言いに行くが拒否される。翌日上の者達を幽閉し食料庫に向かい鍵を破壊し中の食料を必要な者で分けた、食料庫は開けっ放しの為原住民や子供達が殺到し食料を食い漁った。
これに気づいたアドリアノは入り口に兵士を置き配給制を取ったが食料は減り続けた。コロンバはこうなった以上食料管理に長けた自分に管理を任せてくれとアドリアノに直訴し再び台所は機能を始めた。
上の階の者の幽閉を解いたことにマウロは怒り、別荘へ踏み込み部屋に居座った。その間大半の従兄弟達はいつも通り原住民と一緒に過ごした。ある時商品満載の馬車に乗って帰ってきた原住民達に話を聞くとマルビナの名前が出てきた、アドリアノはウェンセンスラオとフランシスコ デ アシスと三人でマルビナと連絡を取り世界市場を相手に商売しようと考える。
先ほどの原住民に手紙を託しマルビナのもとに送る、しばらく時が経つとアドリアノの注文した品を乗せ原住民達が帰ってきた、そしてまた金を積み首都へ向かった。自分達の知らない事に不穏な空気を感じ取った上の階の者はマルビナとアドリアノとの取引を絶つためにメラニアとアグラエーに悲劇的一日のヒロインを演じろと命令する。メラニアとアグラエーがウェンセンスラオを引きつけている間、馬を野に逃がし馬車を見つからない所に隠し取引を続けられないようにしてその後行商人2人を捕まえて幽閉した。これでマルビナへの伝言を持って旅立ったと思わせることが出来た。行商人2人が首都へ向かっていると思われていた間マルランダでは再び取り引きが始まると金の生産を増大させた。アドリアノはせわしなく動き回り果樹園の整備など取り行った。例外は上の階の者達だけで次第に忘れ去られていった。父の命令に心から従うことが出来なくなっていたウェンセンスラオはする事もなく事の成り行きを見守っていた。行商人が戻ってくる時間が長引くにつれ、父は足元から崩れていき信頼感も薄れていった。結局ベントゥーラ一族が巨大な力を入れ見せつけ戻ってきた時、アドリアノの計画には何の解決方法もなかった。ある時マウロが縛られた2人の行商人を見つけアドリアノに報告した。結局は自分達で首都に行かないといけないとマウロは提案した、しかしお尋ね者である自分は行くことは出来ないとアドリアノはいった。マウロは上の階の者達をみすぼらしい部屋へ幽閉し朝から晩まで強制労働させた。別荘に次々と助けを求めてくる原住民達にも対応できなくなっていき食料も底をつきアドリアノには、なす術もなかった。マルビナはその後使者を送らなかった、望むのはベントゥーラ一族の帰還であり帰ったら一族の権力を他人の手に委ねプライドをずたずたにする計画があった。
3
ベントゥーラ一族と外国人は湖岸へのピクニックに妻達を下ろし男達は鉱山へ向かい帰りに妻達を拾って帰る計画の旅に出発した。執事の横に座っていたのはファンペレスではなく見知らぬ御者だった。その頃ファンペレスはアガピートに押さえつけられていた。数分経つまで何者かに裏切られたと気付かなかった主人達は服はずたずたにされ馬車から叩き落とされた。彼らの権威は完全に失墜した。
しばらくして敷地に戻った者達の前に埃の仮面を付けたような一団が近づいて来た。彼らは敵ではなく自分達と同じくらい憔悴しきっていた。それはマルランダの子供達だった、子供達は大人達に手を差し伸べ助け起こした。
第十四章 綿毛
1
綿毛の襲来に湖まで逃げようとしたが馬車もなく馬もなく逃げられない、全てはマルビナと外国人と執事が計画的に仕組んだ罠だった、しかしティオ アドリアノの馬車が残っていて全員その中に避難した。ウェンセンスラオは湖は存在しないしぼやぼやしてると綿毛の突風で命を落とす事になると言った。ファンペレスは助かる方法を教えてくれと言った、ウェンセンスラオはこの地域について我々よりよく知っている人々に教われと言った。ファンペレスはウェンセンスラオの顔に鞭を打ち馬車から子供達を下ろし馬車を走らせた。悪党ファンペレスを乗せて進んだ馬車はすぐに綿毛に飲まれて姿を消した。
2
ファンペレスとベントゥーラ一族は荒野で窒息死した。(作者登場)登場人物達がこの後どうなったかはもう一冊書かなければ書き切れない現実と芸術を混同しないと決めていたが登場人物との別れが辛い。原住民が引き連れる一行はダンスホールに辿り着いた事で横たわり綿毛の襲来をしのいだが、セレステはテラスでずっと綿毛を浴びていた。オレガリオを待っていたのだ、オレガリオはテラスに出てセレステと共に嵐の中に消えた。

終わり

感想
あとがき含め500ページ超 読みづらくはなくスラスラと読める。が、しかし【夜のみだらな鳥】に衝撃を受けてしまった後では物足りなく感じてしまう。しかしこれは他の作家でも同じ事なのでしょうがない。

面白い所

作者が語る部分を最初の所からちょくちょく出しておいて、後半に作者がまさにこの物語を執筆終えて編集社に持って行く途中街中でベントゥーラ一族の者と偶然出会い作品の感想を聞いたりする所は印象に残った。

実は親達がハイキングに行っていた数日の話のはずが1年以上経っていなければありえないような展開に知らず知らずのうちに巻き込まれるような展開。

読みやすくはあったが、ものすごく衝撃を受けるような作品でもなかった。

80点